第4話 部室

そして暫く時は過ぎた。

俺達は三年になった。

海沿いの道をケンジと二人歩きながら、GLAYというバンドについて話していた。

バンド云々のハナシが出る前は俺は全く違うタイプの曲を聞いていた。

どうしてそのバンドにハマッたのか分からない。

だが、俺達のバンドの原点は、そのGLAYにあった。

俺達の話題は発売されたばかり(当時)の「SOUL LOVE」についてだった。


ヒロキ 「SOUL LOVEってイイ曲だよな。」

ケンジ 「そうだな。」

ヒロキ 「バンドでやりたいな。」

ケンジ 「あぁ。」

ヒロキ 「でも出来るワケないけどな。俺はまだ楽器に触ってすらいないんだからな。」

ケンジ 「それも早く何とかしないとな。」

ヒロキ 「あと練習する場所か。」

ケンジ 「それからメンバーな。」

ヒロキ 「だな。」

ケンジ 「時間だけが無駄に過ぎていってる気がする。」

ヒロキ 「焦る事ないさ。」

ケンジ 「俺はバンドがしたいんだよ!」

ヒロキ 「だから?」

ケンジ 「オマエにも同じ気持ちで居て欲しいんだ。」

ヒロキ 「そりゃ無理だろ。俺には楽器がない。」

ケンジ 「何とかする。」

ヒロキ 「よろしく。」


そんなこんなで夏がやってきた。

高校の校門付近でオレとケンジは話していた。


ヒロキ 「で?ハナシって?」

ケンジ 「練習する場所みつけた。」

ヒロキ 「マジで?」

ケンジ 「あぁ。小さな小屋みたいなのを借りる事にしたよ。」

ヒロキ 「小屋?」

ケンジ 「百聞は一見に如かずだ。見にいくか?」

ヒロキ 「イイね。行こう。」


そして高校から歩く事15分…。


ヒロキ 「まだ着かないのか?」

ケンジ 「見えてきたぜ。」

ヒロキ 「どれ?」

ケンジ 「(前方の小屋を指差して)アレ。」

ヒロキ 「…………。」

ケンジ 「あの小屋は所有者のマツモトさんの息子さんがもともと使っててね。」

ヒロキ 「へぇ…。」

ケンジ 「バンド用に使ってたらしいんだ。」

ヒロキ 「今は?」

ケンジ 「今も使ってんなら俺が借りれるかよ。」

ヒロキ 「違いない。」

ケンジ 「ちなみに電気は通ってないから。」

ヒロキ 「………………はぁ?」

ケンジ 「…。」

ヒロキ 「どうすんだよ?見たトコ窓もないし…。電気ないと何にも出来ないじゃんか。」

ケンジ 「小屋の隣に民家があるだろ?マツモトさんの知り合いが住んでてね。」

ヒロキ (その民家を見る)

ケンジ 「そこの家から延長コード引っ張ってきて、電気を借りる。」

ヒロキ 「…。」

ケンジ 「心配すんなって。」

ヒロキ 「呆れてんだよ。」

ケンジ 「とにかくココが俺達の練習場だ。」

ヒロキ 「先行き不安だな。」

ケンジ 「中も見るか?」

ヒロキ 「勿論。」

ケンジ 「(南京錠を開けてドアを開ける)……………!!」

ヒロキ 「クサッ!!」

ケンジ 「まずは掃除だな…。長い事使ってないみたいだな。」

ヒロキ 「息子が使ってたんじゃないんかよ。」

ケンジ 「だいぶ前なんだろ。」


電気も窓もないタメ、ドアを開けっぱなしにしてヒカリを入れている。


ヒロキ 「!!…ドラムあるじゃん!」

ケンジ 「あぁ。ドラムも掃除してやんないと。」

ヒロキ 「兎に角掃除か…。」

ケンジ 「だな…。」

ヒロキ 「ここの名前何にする?」

ケンジ 「あ?」

ヒロキ 「この練習場の呼び名だよ♪」

ケンジ 「オマエそういうの考えるの好きだしな。」

ヒロキ 「部室は?」

ケンジ 「ぶしつ?」

ヒロキ 「仲間集めてさ。部活やってるようなモンじゃん。だから部室。」

ケンジ 「あぁ。イイんじゃねーの?」

ヒロキ 「決まりだな。」


これが俺達と、数々の思い出が残る「部室」との出逢いだった。

最初は、こんなトコで練習できるのか?と不安だったが、まぁ住めば都で、やってみるとナカナカいい場所だった。

カビまみれの絨毯、何か黒くなってる壁、風通しも悪いから当然か等と想いつつ掃除をした。

最初からドラムとアンプ一台あったのはラッキーだった。

そして…。

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