第2話 幻のバンド
ある晴れた日、俺は友達のヨシノリの家へと遊びに行った。
そう…バンドを組む事になったのだ。
メンバーとしては、ケンジは勿論、ヨシノリ、オレ、そしてヤスだ。
ヤスはケンジの部活仲間で、ヨシノリは俺のクラスメートだった。
そういう繋がりで、バンドを組む事になったのだ。
集まった四人。
まずは誰がどのパートを担当するかという話になった。
勿論ケンジはギター。
で、どういうワケかヨシノリがヴォーカル、ヤスはベース、俺がキーボードとなってしまった。
そう…最初から俺がベースを担当していたワケではなかった。
この人選の理由はヨシノリだけはハッキリしていた。
以前、ケンジとヤスとヨシノリの三人でカラオケに行った時に採点ゲームしていたらたまたまヨシノリの点数が一番だったのだそうだ。
俺とヤスに至っては理由などない。
そしてマズ手始めにバンド名を決めようという事になった。
ヨシノリは雑誌をペラペラとめくり、それらしい単語(名前は英語がカッコイイという安直な発想だった。)を探している。
ケンジはギターを練習している。
ヤスはゲームをしている。
何ともマトマリの無いバンドである。
そして、ヨシノリがある単語に反応した。
「POTENTIAL」
俺が辞書をひくと、意味の一つに「潜在能力」とあった。即決定である。
こうして幻のバンド「POTENTIAL」は結成された。
俺もやると言った以上は、キーボードをやるしかない。
慣れない手つきで触っていると、ヒマそうにしていたヨシノリが口を開いた。
「ちょっと歌ってみようかな。」
この一言が「POTENTIAL」を僅か一日で解散(?)に導くとは、この場に居た四人は全く想像していなかった。
そう…想像できるハズもなかった…。
まぁヴォーカルであるからには当然歌わなければならない。
ヨシノリの「歌ってみようかなぁ」という発言も別にオカシクはない。
そして俺達は聞こうと、それぞれの作業をヤメた。
ヨシノリが選曲したのはGLAYの口唇である。
「じゃぁいくよ?」
その合図とともに口唇が流れ始めた。
当然ヨシノリも歌いはじめた。
とたんに他の三人は爆笑しはじめた…。
失礼なハナシである。
理由は説明する必要は無いだろう…。
後にメンバーの一人はこう語る。
「いやぁ…あの後一週間はマトモに口唇聞けなかったっスよ」
こうして…一日限りの「POTENTIAL」の活動は終わった。
その頃の俺自身、実際バンドどうこうよりも、そうやって四人で騒げたのが嬉しかったから、別に活動に関してドウコウ言うつもりは無かった。
「やっぱりな…」
そんな風に感じていただけだ。
それで終わりだと想っていた。
もうケンジもバンド組もうなんて言い出さないと。
まだその時は知らなかった。
暫くしてケンジに呼ばれた。
ハナシがあると。
どうやらアイツは本気だったらしい。
「二人からでイイ。BAND始めよう。」
断る理由は無かった。
羨ましかったんだ。
アイツはイツモ俺の一歩先を行ってる。
何か輝いてる。
そして再度バンドはスタートした。
二人から。
バンド名は後に俺が勝手につけた。
リーダーがケンジなので…
ケンジーズ→ケンディーズ→KENDYSという具合に。
まぁ遊び半分でそう呼んでいたらイツの間にか定着したと。
だが正式な名前は無かった。
だからKENDYSと呼ぶ事にしよう。
しかし、そこで問題なのが、俺が何を担当するかだった。
ヴォーカルはガラじゃない。
前面に出るなんて俺には似合わない。
キーボードは俺的にシックリこなかった。
ドラムも、それ自体が無いし、用意する事も出来なかった。
ってワケでベースになった。
当時は俺から一番遠い楽器だった。
何故なら俺はベースという楽器の存在を知らなかったから。
他のギター、キーボード、ドラムの存在は知っていたが、ベースは知らなかった。
だが、とにかくバンドがスタートした。
後に俺の中であれほど大きな存在になろうとは想いもよらなかった。
だが…俺とベースの出逢いはマダマダ先のハナシだった…。
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