KENDYS物語

HR

第1話 なぁバンドしないか?

これは超ド田舎で産まれた小さな小さなオハナシ。

中学生活も残り僅かになってきた頃、俺の家にケンジが泊まりに来た。

その時にケンジはこう言った。


「なぁバンドしないか?」


実際興味は無かった。

バンドというものの存在は知っていたものの、ドコかに偏見を抱いていたのかも知れない。

その時に流行っていたバンドなんか聞きもしなかった。

でも、音楽は好きだった。

それに何より相手がケンジだという気楽さも手伝って、俺はこう答えた。


「イイよ。」


我ながら、よく何も考えずに言葉が出てくると想う。

当時も本気でヤルつもりなんて無かった。

少し時間がたてばケンジの熱もさめるだろう…。

そう思っていたからだ。

ケンジは、既にギターを買っていた。

だから練習していくうちにバンドが組みたくなったのだ。

俺とケンジは腐れ縁みたいなものなので、多分そういう理由で俺を誘ってくれたんだと想う。

当時の俺達の心情は当時の俺達にしか分からない。

もし、昔へ戻れるのなら、その会話をしている時間にまで戻って俺に言ってやりたい事がある。


「よく面倒だと言わずにOKしたな。」


と。

何回も言うようだが多分本気じゃなかったからだ。

俺達にバンドなんて出来るハズがない。

あんな風に演奏なんて出来るハズもない。

たぶん、あの頃から俺は世の中を冷めた目で見ていたんだと想う。

それ以前に絶望だとか恐怖だとか。

痛みだとか涙だとか。

そういうもの一通りは味わっていたからだと想う。


「どうせ世の中こんなモンだ。くだらねぇ。」


別にそんな自分に酔ってたワケじゃない。

たぶんそのまま行ってたらロクデモナイ大人になるとこだった。


アイツが変えてくれたんだと想う。


そして俺達は高校生になった。

案の定アレ以来バンドのハナシをしていない。

俺も忘れていた。

しかし、高校生活も半ばにさしかかった頃、急展開を向かえる。

バンドを組む事になったのだ。

幻のバンド「POTENTIAL」の結成。

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