第23話 織田家との婚姻とある人物との出会い

「さて、どうしたものか」


 永禄六年の冬、美濃を併合した織田信長は迷っていた。

 何を迷っているのかといえば、自分が気まぐれで侍にしてしまった新地光輝の事である。

 数多の商売を手掛けていて、金持ちで、領地は西尾張の一部と伊勢八郡を有している。

 

 今まで自分に公然と反旗を翻していた服部左京進から領地を奪い、北伊勢に割拠していた四十八家と中伊勢の豪族は軒並み没落、長島は天罰騒動でその力を大幅に落としている。

 人間に雷は落とせないので新地光輝が関わっているとは思えないが、それにしても恐ろしい業運の持ち主である。


 既に、残りの南伊勢五郡を有する国司北畠家よりも力は上で、このままいけば伊勢志摩は新地家の物となるであろう。

 

 大領を持つ家臣となってしまった。

 危険な兆候であり、これを討つというのが正しい選択肢かもしれない。


 だが、彼は織田家に多大な利益をもたらしている。

 織田家家臣でも、彼と仲がいい者が多い。


 第一新地家には、厳しく訓練された常備軍と、大量の種子島に大筒、玉薬の備蓄も多い。

 ここで戦をしかけても、織田家が敗北して伊勢が厄介な敵になってしまう可能性が高い。


 それに自分は、光輝とその弟と妻が嫌いではない。

 彼も、自分を主君と認めて忠実に仕えてくれている。

 

 織田家の当主たる自分が新地光輝を危険だと思っても、織田信長自身はそうは思いたくないのだ。

 いや、多分自分が心変りしなければ、彼らは裏切らないであろう。

 それは何となくわかる。


「となるとだ……」


 これから、どうするかである。

 美濃を併合したので、これから二か国の開発を進めて国力を増やし織田家の力を増す。

 あとは、奇妙丸に継がせて織田家の統治が続く事を祈るのみか。


 新地家は、伊勢志摩を有して織田家の服属大名という立場が無難かもしれない。

 北畠家であるが、元々新地家は商人の出、名族だから滅ぼさないなどという選択肢などないはず。

 今までに、光輝が滅ぼしたり領地を奪った豪族にも名門は多数いたのだから。

 織田家とて、守護である斯波家を追い出して尾張を乗っ取った。

 自分の家など、守護代をしていた主家の更にその分家にしか過ぎないのだ。


 義父であった斎藤道三を見れば一目瞭然、今の世は弱ければ滅ぼされる。

 ただそれだけの事なのだから。


「殿、何か考え事でも?」


 悩んでいると、そこに村井貞勝が姿を見せる。

 行政手腕に優れているので重用している男だ。


「どう思う?」


「ありきたりな手ですが、婚姻でしょうな」


 さすが、貞勝は頭が回ると信長は感心した。

 その一言だけで、自分の悩みを察してくれたのだから。


「しかし、浅井家との同盟もある」


 北近江を拠点とする浅井家は、越前を有する朝倉家と同盟関係にある。

 もし両者が組んで美濃に攻めてきたら。

 越前は加賀一向衆を防ぐので精一杯であろうが、世の中に絶対などない。

 警戒はしておくべきであろう。


「浅井家は、六角家との争いで精一杯かと。向こうも北近江に侵攻されるのは嫌だと思います。通常の同盟で十分です」


 ここで組んでおけば、越前朝倉家への防波堤になるかと信長は思った。


「新地家は、婚姻で取り込んで準一門扱いすべきです」


「しかし、あそこには今日子がおるぞ」


 あの優れた美しい女は、新地光輝自慢の正妻だ。

 そこに、主君とはいえ織田家の娘を正妻に押し込むのはどうかと思ってしまう。

 光輝がヘソを曲げて裏切る可能性もあるのだから。


 かといって、主君が婚姻させた妻を側室扱いでは織田家の沽券に係わる。

 それがわかるから、婚姻にも難しい問題があるのだ。


「弟の清輝に嫁がせるのも難しい」


 なぜなら、清輝は新地家の当主ではないからだ。

 もし織田家が、清輝とお市の間に産ませた子供を新地家の次期当主にしようと画策していると思われたら。

 これも、新地家との関係が悪化する可能性があった。

 

 それに、あくまでも織田家の方が上だと世間に思わせないといけない。

 織田家当主の妹は、あくまでも新地家当主かその嫡男に嫁がせないと意味がないのだ。


「私も迷いましたが、試しに交渉してみてはいかがですか?」


「試しにか……」


「詭弁ですが、共に正妻で先に生まれた男子を嫡男とする」


「ミツには、太郎がおる」


 つい先日、今日子が産んだ男子だ。

 つまり、彼が嫡男だと織田家が認めてしまう。

 そうすれば、新地家側の不満もかわせるかもしれないというわけか。


「これまでの新地殿を見るに、相談した方がいい結果を得られると思いますが」


 貞勝は武断派ではないので自分に似た光輝を嫌いではなく、かなり評価していた。


「そうよな、試しに聞いてみるか」


 貞勝の献策に従い、信長は新地家との婚姻を目指して奔走する事になる。





「(新地光輝です。空気が最悪です……一部だけど……)」


 この前、光輝は信長に呼ばれて自分の妹であるお市と結婚するように言われた。

 今日子がいるので微妙な顔をしていると、織田家は彼女の産んだ太郎を嫡男と認めるという。


『その代わりに、我の娘冬姫と太郎を婚約させる』


 二年前に産まれた信長の娘冬姫と、新地家嫡男の太郎を婚約させると言う。

 二重の婚姻で、織田家は新地家を取り込もうとしていた。


『断れないよねぇ……』


 その辺はドライな今日子は反対しなかった。

 かくして光輝は、側室というものをもらう事になる。 

 前にいた時代にはなかったものだ。

 まあ、金持ちには普通に愛人とかがいたけれど。

 

 しかも新しい嫁は信長の妹なので、これからは彼が義兄というわけだ。


 そんな事情で婚姻が決まると、すぐにその準備が始まる。

 武家の婚姻は色々と準備が面倒だが、それは村井貞勝と不破光治が担当となって話が進んだ。

 仕官して間もないのに、不破光治は重要な仕事に抜擢されて喜んでいた。


『これ以上仕事を抱えると、私は死にます』


 推薦したのは、常に忙しい男堀尾泰晴であったが。

 

 婚姻は吉日が選ばれ、会場はなぜか本拠を移した岐阜ではなくて清須であった。

 

『婚礼の儀には、三河の元康殿も招待しているのでな』


 信長は、三河松平家の当主元康も今回の婚礼に招待していた。

 一向一揆との戦いは収束に向かいつつあるが、まだ完全には終わっていない。

 それでも、新しい義弟の紹介と、信長の娘徳姫と元康の嫡男竹千代との婚約も話を詰めたいそうだ。


『松平家かよ……』


 その一向一揆に参加して三河を出た旧松平家家臣達を雇っているので、光輝は元康に会いたくなかった。

 何か文句でも言われるかもと思ったのだ。


 婚姻の日が訪れ、光輝は茂助や日根野弘就の息子四人が指揮する警備隊の護衛を受け、前日に清須入りしている。

 

「どんなお嫁さんだろうね」


 今日子もそれに付いて来ていて、彼女は光輝の妻になるお市に興味津々のようだ。


「美少女かな?」


 織田家の人間は美形が多いので、いきなり物凄いのは出て来ないはずだと光輝は思った。

 信長も光輝の認識では元ヤンキーであったが、貴公子然とした風貌をしている。


 だが、彼は疑問に思うのだ。

 いくら政略結婚とはいえ、いきなり嫁ぐ事になってお市はどう思っているのと。


 あとこれは口に出せないが、政略結婚で物凄いブスが来たら、みんなどうするのだろうかとくだらない事も考えていた。


「武家って、大変だなぁ……」


「今のみっちゃんは、その武家なんだよ」


「そういえばそうだった!」


 まあ、これも生き残るためだ。

 仕方がないと、光輝も今日子も割り切る事にする。

 力を持ちすぎたので誅殺されたという最期も嫌であったし。


「今日子殿、色々と思うところはあると思うが、甘受してくれるとありがたい」


 式が始まる前、信長はわずかなお供と共に今日子の元を訪ね、彼女に謝った。

 今回の婚姻の件で、心から悪いと思っているようだ。

 非公式にではあるが、素直に謝っている。


「私は楽しみにしていますよ。お市ちゃんってどんな娘かなって」


「そう言ってもらえると安心する。お市を頼む」


 普段は結構無茶な命令を出す信長であったが、家族や女性には意外と優しいところもある。

 何しろ、妹の事を今日子に頼むほどなのだから。


 ヤンキーが猫を可愛がっていると、実はいい人だと思われる現象である可能性も高いと、光輝が密かに思っているのは秘密だ。


「お互いに事情はあると思いますが、お市ちゃんには何の罪も有りません。私は仲良くしたいと思っています」


「で、あるか」


 信長は安堵の表情を浮かべた。

 今日子が、お市を『ちゃん』付けで呼んだだから。

 つまり、家族として受け入れると悟ったのだ。


「ミツ、お市を頼むぞ」


「お任せください」


 それから婚礼の儀式が始まる。

 慣れない婚礼衣装に、長い儀式、そして周囲に視線を送ると、上座にいる柴田勝家の目が血走っていた。

 今にも、刃物でも持って暴れまわりそうな表情である。


「(気持ちはわかるけどね……)」


 新参者の光輝が、主君信長が可愛がっている妹の婿になる。

 面白くないのは確実であったからだ。

 他の家臣にもそういう連中がいた。

 勝家ほど、露骨にそういう表情はしていなかったが。


「(そして、美少女発見!)」


 今日初めて会った信長の妹お市は、信長に似て色白で綺麗な顔をしていた。

 年齢は十六歳で、光輝がいた時代でも通用する美少女である。


 婚礼の儀式中なので静かに俯いているが、美少女は何をしても美少女だなと光輝は感心した。


 当たり前だが、武家の婚姻は長い。

 二日ほどかけてようやく終わり、これから初夜となる。

 無粋な話だが、ちゃんと夫婦になって子供が産まれるのが両家にとってはありがたい。

 政略結婚だから、『少し普通に付き合ってから』とかいう作戦は通用しなかった。


『みっちゃん、ガンバ』


 二児の母である今日子は、お気楽に初夜に向かう光輝に声をかけた。


『今日子がもし男なら、当代無双の武将になっていたであろうな……』


 そんな今日子を見た信長ですら、彼女の態度に驚いたほどなのだから。


「お市と申します」


「新地光輝です」


 光輝は女性との交際経験が今日子だけで、しかも彼女の方が先に彼に惚れたので女性の扱いに関しては素人に近い。

 弟の清輝に至っては、いまだに好みの女性のタイプがアニメのヒロインなので言うまでもなかった。


 お市の挨拶に、光輝はついいつもの癖で一緒に頭を下げて挨拶をしてしまう。


「安心いたしました」


「えっ? 安心? 頼りないという自覚はあるんだけど……」


「家中には権六のような猛々しい方が多いのですが、私は少し苦手でして……」


 武士なのでそういう人達ばかりなのは仕方がないが、彼女の兄信長はそればかりでなく身嗜みにも気を使い、普段は清潔感溢れる恰好をしている。

 

 光輝は未来の人間なので普通に清潔にしているし、信長に似ている部分があるとお市は思っていた。

 もし光輝本人が知れば、彼は必死に否定したであろう。

 自分は元ヤンキーじゃないと。


「うちには少し変わり者の妻と弟がいるけど、嫌な奴はいないから。これからよろしくお願いします」


「私こそ、よろしくお願いします」


 こうして初夜は無事に終わり、光輝は信長の義弟になった。

 式が終わり、参加した家臣達はそれぞれの領地や任地に戻っていく。

 美濃を併合したので、今は支配体制の強化と領地の開発等の仕事がいくらでもあったからだ。


 その前に光輝は、一益、藤吉郎、利家、長秀らと会って話をする。


「お市様を奥方にするとは、新地殿は羨ましいですな」


 藤吉郎のみならず、美貌で知られたお市は家中で羨望の的であった。

 憧れの姫様を娶る光輝を、彼は素直に羨ましいと思ったのだ。


「今日子殿もお美しい方だし、両手に花ですか」


 利家も、藤吉郎の発言に同心した。

 しかし、今日子は綺麗だが背が高い。

 光輝は今日子よりも背が高いので気にしていないが、彼女を嫁に欲しいと思うこの時代の人間は少なかった。

 

 利家は光輝とほとんど身長が変わらないので今日子でも釣り合いは取れているが、利家の妻お松と今日子はまるで違うタイプの女性だ。 

 残念ながら今日子は、利家の好みには合っていなかった。

 

「親父殿は、怒っておりましたな」


 利家は勝家を親父殿と呼んで慕っているが、さすがにあの表情はないだろうとも思っていた。


「新地家は新参ですからね」


 譜代の重臣である勝家からすれば、嫉妬して当然だと光輝は思った。


「いやいや、それもあるのですが、実は権六殿はお市様に懸想しておるのですよ」


「ええと……権六殿は四十を超えていましたよね?」


 勝家の子供がとかではなく、彼自身がお市を好きなのだと一益は言う。

 親子ほどの年齢差があるので、これは意外だと光輝は感じた。

 あのおっさんは、実はロリコンであったのかと。


「そんなわけでして、権六殿は面白くないでしょうな」


「すれ違いざまに殴り殺されないように気をつけます」


「さすがに、権六殿もそれはしないでしょう」


 一益はそうは言うが、光輝は勝家の見た目の怖さもあって、ますます彼とは合わないなと感じてしまった。


「ところで、みなさんはお忙しそうですね」


「木下家は墨俣周辺で加増されましたし、暫くは領地の整備に全力を傾けろとの大殿からの仰せですから。幸いにして、半兵衛殿が寄騎となってくれまして、彼はその分野でも優秀ですから手伝ってもらっています」


 半兵衛とは、竹中重治という西美濃に領地を持つ豪族の事である。

 西美濃三人衆の一人安藤守就の娘婿で、織田家の美濃攻略中にしばしば策を立てて局地的な勝利を掴んだ人物らしい。

 

 半兵衛は織田家の美濃掌握後に降伏し、本領を安堵されて藤吉郎の寄騎となったそうだ。


「滝川家は東美濃に所領をもらいましたが、かの地には遠山家がおりますからな」


 この地に関しては、信長にも誤算があった。

 東美濃を勢力とする遠山氏は、実は織田家とも血縁がある。

 信長は斎藤家の勢力が衰えていく中で簡単に降伏すると思ったのだが、彼らは武田氏とも連絡を取って独立独歩の姿勢を打ち出したのだ。


 仕方なく、一益は丹羽長秀の軍勢と共にこれを撃破。

 岩村城を落とし、一部残った遠山一族を家臣とする。

 だが、東美濃ではいまだ遠山家の残党が蠢動しているらしい。


「武田家への備えも必要です。色々と大変ですよ。そういえば、利家殿も」


「急遽、前田家を継ぐ事になりましたので」


 美濃攻略時の功績も加えて、利家は赤母衣衆筆頭の地位と加増を賜った。

 ところがそれからすぐに、兄の利久に代わり前田家の家督を継げと信長から命令される。

 

 表向きの原因は、利久が病弱のために当主の仕事をこなすのが困難だと信長に判断されたため。

 実際には、自分の子飼いで忠誠心が高い利家に前田家を継がせたいという優しさからかもしれなかった。


「いきなりそんな事を言われて、利久殿は……」


「はい、家族を連れて逐電しました」

 

 それに同行する家臣も多く、前田家の領地にある荒子城では家臣奥村永福が城に立て籠もり、城の受け渡しを拒否して大騒ぎになった。 

 彼は、信長からの命令書が届くまで城を退去しなかったのだ。


「いきなり人手不足で、私は赤母衣衆筆頭としての仕事もありますので……」


 この中で、一番多忙かもしれないと利家は語る。

 確かに、体が二つ欲しい緊急事態であろう。


「永福の出奔は痛かったです……」


 武勇に優れ、内政手腕にも優れ、利家は次世代の幹部として期待していたのに、利久へ義理を果たして浪人になってしまった。

 できれば早く戻って来て欲しいと利家は言う。


「もし彼が伊勢に来たら、そのように伝えておきます」


「かたじけない」


 利家は、光輝に律儀にお礼を述べる。


「私は、郡上八幡城周辺に所領をもらいました。暫く状況が落ち着くまで時間がかかるでしょうな」


 何でも卒なくこなす男長秀は郡上郡に所領をもらい、現在領地化に腐心しているという。

 やはり、地元の豪族や地侍対策が鍵となるようだ。

 光輝は、長秀なら卒なくこなすのであろうと思っていたが。


 五人での話を終えると、光輝は今度は信長に呼び出された。

 今日子とお市を連れて向かうと、そこには一人の青年が一緒にいた。

 少し小太りであまり背は高くないが、誠実そうに見える男性だ。


「三河の松平家康殿だ。実は昔に面識があってな」


 信長は、その青年松平家康を光輝に紹介する。

 どうやら、元康から家康へと名前を変えたようだ。

 二人は、まだ吉法師と竹千代と呼ばれていた頃に一緒に遊んだ事もあると光輝に説明する。


「松平家康と申します。新地殿の噂はかねがね」


「新地光輝です」


 互いに自己紹介をしてから、信長は話を進める。

 

「織田家は尾張よりも西、松平家は三河より東という同盟を結んだのだが、それを強化するために徳姫と竹千代殿を婚約させようという話になったのだ」

 

 竹千代とは、家康の嫡男の名である。

 信長の娘と家康の息子を婚姻させるという事は、家康も実情は光輝と同じような立場なのだと気がついた。

 

 対等の同盟とはいえ、既に領地規模では織田家の方がかなり上なのだから。


「その話し合いと、信長殿の妹御と新地殿の婚姻に招待されまして」


「そうですか。ところで……」


 光輝はどうせすぐにバレるからと思い、新たに雇った本多正信達の話をする。


「新地殿の元にですか?」


「はい、長島の地に向かったものの、そこで冷たくされたそうで……」


 五人は一向宗を棄教し、今は臨済宗の寺の檀家になってしまったと光輝は説明する。


「そんなわけでして、三河に戻っても構わないと思うのですが……」


「いえ、新地殿が気に病む事ではありませんよ。確かにもうすぐ終息はするものの、一向一揆は家臣団の分裂を招き大きな損害でした」


 できれば戻って来て欲しいが、それは自分が思う事で、実は家臣達の間にはシコリが残っているという。

 

「一揆に参加していない家臣達からすれば、いくら私が赦しても一揆に参加した者達が何事もなく戻って来るのはおかしいと思うはずです。互いに戦って、知己や家族に犠牲者が出た者もいるのですから」


 もし戻るにしても、大分冷却期間を置かないと駄目であろう。

 だから、気にしないでほしいと家康は語る。


「そう言っていただけると助かります」


 光輝は、家康の度量の大きさに感心した。

 婚姻も終わりすべての用事が済むと、家康は信長や光輝に丁寧に挨拶をしてから三河へと戻っていく。

 急ぎ、一向一揆の討伐を終えるつもりなのであろう。


「どこぞ他家が攻めてこなければ、暫くは尾張と美濃の開発と整備だ。周囲から狙われぬように、力を蓄えねばな」


 光輝達が新地に戻ると、信長は稲葉山を岐阜と改名し、城下町に整備、商業の振興、農地の開発、治水事業などを積極的に始めるのであった。

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