第71話クラブ・アマンダ②

「あ、クラウチさぁんすいませ〜ん。

 お酒溢しちゃいましたぁ」


 キュリオが客である冒険者の股付近に酒を溢してしまい、おしぼりでトントンと拭いていた。

 側から見れば怪しく見える事甚だしい。


「ちょちょっ!

 キュリオ、ここは男の大事な部分なんだ。

 無闇に触れちゃ駄目だぞ?」


「そうなんですかぁ?

 すいませ〜ん」


 かなり強面なクラウチがデレデレしながら、キュリオのおっちょこちょいなミスをフォローしてくれている。

 どうやら、この子は放って置けない系愛されキャラで通っているんだろう。


「まだまだだな。

 俺が客で良かった。

 色々教えてやらねばな」


「ご指導よろしくお願いします〜」


 キュリオがクラウチの手を両手で握り締める。

 戸惑うクラウチ。


「おっ、おっふぅ……」


 ……完全に落ちたな。


 冒険者はお願いされるままに高い酒やおつまみを注文し続ける。

 テーブルにこれ以上置き場が無いくらいいっぱいだ。

 一度格好付けたが最後ユーキャントストップ。

 キュリオのお願いに応え続けなければならない。


「キュリオ、やるねぇ。

 おっと静かに。

 気付かれない様にな」


 キュリオの横に座り、その濃いピンク色のボブに顔を近づけ、シルビアの時と同じ説明をする。

 突然の俺の来訪に戸惑いながらもキュリオは頷いた。


 小柄で痩せ型、身長百五十あるかないかくらい。

 肩の開いた可愛らしいデザインの白いドレス。

 髪型の効果で首周りがより細く見える。

 肩が小さく、腰も足も細い。

 鎖骨なんてちょっと力入れたら折れそうなくらいほっそい。


 横顔を間近で眺める。

 パッチリした少し垂れ目がちな瞳は男の緊張を解し優しい印象を与えるだろう。


 今からこの子をマッサージだ。


「俺もキュリオに色々教えてやるからな」


 一人一人ちゃんと対応してやりたいが、なんせアミーズは今夜四人もいる。

 少し巻き気味で行かせていただきますよぉ。

 接客中にもお構いなくキュリオにマッサージを開始する。

 見えない事をいい事にやりたい放題だ。


「おや?キュリオどうした?

 口を開けて」


 冒険者が心配しているが、俺が二人の間に立ち、キュリオの小さな口内にマッサージ器を突っ込んでいた。

 もし視認できたとしたら冒険者の眼前には俺の尻しかない。


「ふぅ、続きはVIPルームで」


 冒険者を【睡眠】で寝かせ、キュリオを連れ出す。


 VIPルームを客が使用する場合は扉が常時開放され中が見える状態にしてあるが、俺が使用する時はもちろん密室だ。

 今日は魔力を温存したいので、近場で間に合わせよう。


 中にはお馴染みの、客に一時の夢を見せる一際大きなソファ、が備えてある。


「ご主人様、私もうっ!」


 キュリオは二人っきりになるとすぐに飛びついてきた。

 散々焦らしたせいだろう。

 さぁ、治療開始だ。


「わたし、子供っぽいですか?」


 背丈はナティアラと同じくらいだが、向こうは幼児体型に近い。

 キュリオは細いが、出るとこはしっかりと出ていて綺麗な脚線美をしていた。


「そこが可愛いんだよ」


「そ、そんなぁ、嬉しいです〜」


 もじもじして喜ぶキュリオの仕草に堪らなくなり、ソファへと押し倒した。

 ピンクの髪がふわりと跳ね、上げた両手から力が抜ける。

 今からの展開を想像し、不安と緊張の入り混じった顔が実に唆るな。


「えっ?

 あの、その部分が私に入るんですか?」


 患部をグッとマッサージ器に押し込もうとするアクションに驚き尋ねてくる。


「マッサージを知らないのか?」


「……はいぃ」


 おいおい、なんだよ?

 そんな知識も無いのにクラブで働いてるのか?

 アマンダ……

 お前、どんな選考基準しているんだ?


「やめておくか?」


 患部をマッサージ器に押し当てたまま確認する。


「……これでご主人様のモノになれるんですよね?

 わたし、頑張ります〜」


 頑張るって何をだよ。

 まぁ、どんな返事をしてもマッサージするのに変更は無い。

 どちらかと言うと、断られた状態で入れたかったなぁと考えるのは俺が変態だからだろうか?

 そんなもしもを妄想しながら、患部に押し込んでいった。


「くうぅぅぅ」


「辛いか?」


「えへへ、わたし何にも知らないみたいですね。

 ちょっと、怖いです」


 涙を浮かべながら、辛そうに笑っている。

 とんでもなく純粋で天然な子だな。

 それもまた良し!


「ふん!」


「きゃあ!」


 思いっきり奥まで施術し、同時に【回復魔法】を掛ける。


「痛くないだろ?」


「あれ?」


 ふふふ。

 痛みは一瞬も感じさせない。

 衝撃がたちまち快感に切り替わり、認識がついていかないようだ。

 キュリオを堪能するように緩急つけてマッサージする。

 無意識からかキュリオは俺にしがみついてきた。

 気持ち良すぎて何も考えれないといったところか。


 フィニッシュ!


 ああ、こんな真っ白な子がいるとは。

 前世の様な情報化社会では考えられないな。

 それにしても、ここまで可愛いのによく今まで騙されたりせずに守ってこれたものだ。


 あの冒険者がこの子に目を付けるのも納得だ。

 更に上のステージに導かれ女になったキュリオを今後とも是非楽しんでいただきたい。


「こんな世界があったんですね。

 ご主人様ぁ」


 頭が真っ白になってしがみついているキュリオを、あくまで優しく引き剥がしてVIPルームから立ち去る。


 すまん!次の患者が待っているんだ!


 ————


 面倒臭いからそのまま店内を歩き回る。


 高級クラブをブラブラと徘徊する開放感は背徳的で危険だと言わざるを得ない。


 そして確か、レヴィンはこのテーブルだったな。


 おや?


 沢山の空瓶が置かれたテーブル席には、ジョンテ一の武器商人という五十代程の男が一人、ガックリと項垂れていた。


 確かマルディーニとかいう。

 何やらぶつぶつと独り言を呟いているぞ。


「なんて事だ……」


 一本単価百万ゴールドもするプレミア酒の空瓶が五本転がっていた。

 もう意味が分からない。

 伝説級の鉱石で作られた武具よりも、飲めば無くなる酒の方が高いだなんて。


 入れたボトルの金額によってキャストの指名時間を増やせるが、酒が無くなってしまえばキャストの気分次第で席を外す事が出来る。

 恐らくこの客についていたレヴィンなるキャストは、これだけの酒を一気に飲み干し去っていったのだろう。


 こんな太客を放ったらかしにするとは勿体無い。

 治療どころか指導も必要だな。


 マルディーニの席にアマンダがフォローしに来たのを見届け、俺は控え室に急いだ。


 ————


 彼女は控え室のソファで露出した細長い脚を組み、雑誌を読んでいた。


 赤いキツめの瞳が俺を捉えた瞬間、反射的にピンと背筋を伸ばして立ち上がるレヴィン。

 サラッサラのストレートな銀髪が揺れる。


「テツオ様だっ!

 えっ?何でここに!

 えっ?裸?」


 元気だな。

 酔ってるのかな?


「レヴィン、あれだけ高い酒を入れてくれる客なんだから」


 ん?何て言えばいいのだろうか?


「うーん、何だ、もうちょっとサービスしてやってもいいんじゃないか?」


「あー、いいんですいいんです。

 あのおっさん、もうお金無いみたいなんでー。

 それにあのおっさん気持ち悪いんですもーん」


 レヴィンは視線を逸らし、胸まである綺麗な銀髪を指で梳かしながら唇を尖らせた。

 こいつ、口が悪いな。

 しかし、三十五人の中からあのアマンダが選んだ八人の内の一人だ。

 俺に見えない資質があるのだろうか?


「仕事が嫌なら辞めてもいいんだぞ?」


「仕事もお酒も好きですよー。

 でも、あのおっさんみたいに触ろうとする客だけは苦手ですねー」


 レヴィンはそう言って困った顔をしてあっけらかんと笑った。

 救出直後に話した時はぐったりしてて分からなかったが、サバサバとした性格で明るいんだな。


「そうか。

 ちなみに、全裸とずっと話しているが、これは気持ち悪くないのか?

 どう見ても変態だろ?」


「あはは、そーですね。

 変態ですね。

 でも、ご主人様が何をしようと、私のヒーローである事には違いありませんから」


 黙っていたらクールな印象があったが、話してみるとノリも良い。

 なるほど、こういうタイプもクラブには必要なのか。


「じゃあ、しようか」


「あ、そーいう……」


 考える暇を与えず、一気に距離を詰めキスをする。

 うおっ、凄い酒の匂いだ。


「んはぁん」


 感度も良い。

 ツルツルのドレス越しに触る身体は無性に唆るな。


「ぷはぁ、ご主人様ってゴーインなんですね」


 赤い瞳がセクシーに潤んでいる。

 嫌がってる訳じゃ無さそうだ。


 初めてマッサージする相手の服をゆっくりと脱がすのは毎度ながら興奮する。

 俺も未知を開拓する点に於いては冒険者として板についてきたといったところか。

 レヴィンはアマンダに匹敵するくらいスレンダーだが胸はCほどか。

 巨◯も好きだがこれくらいの胸も良きかな。

 この後も仕事を頑張ってもらわなきゃいけないので優しくマッサージを終え大量フィニッシュ。


「ああ、凄い。

 こんなにいっぱい溢れてくる」


 初体験を終え、マッサージ器から出てくるマッサージ用ローションに興味津々になっている。

 食事も情事もお腹いっぱいの方が満足するだろう。

 だから俺は【水魔法】で割増しして毎回たっぷりと出す事にしている。

 魔法量が減っているとて、そこは決してケチらない。

 これは彼女の保護者としての在り方である。

 異論は認めない。


 さて、残りは一人か。

 最後の一人は俺自ら指名してVIPルームに呼び出した。


 おどおどした感じで俺に酒を注ぐこの子の名はノア。

 165センチFカップ。

 肉感的でいやらしいムチムチボディが真っ赤なドレスに締め付けられている。

 こんな身体をしておいて性格はとても内向的でもの静かというギャップ。


「まだ緊張するか?」


「……とても……」


 結構話を交わしたんだが、ずっとこんな調子だ。


 客がこの子と会話を成立させ仲良くなっていくにはかなりの時間が必要だろう。

 それに伴い酒代がかさむ。

 それでも自分がリードしているという優位性は気持ちがいいだろうし、この身体をゲットして気持ちよくなりたいと頑張ってしまうのも分かる。

 トロそうな女だからいけるんじゃないかと。

 天然物の魔性と言えなくもない、か。


 ただガードが緩い為、客からの不意なお触りを許してしまうのが悩みの種だと言う。

 この店はお触り禁止なのだが、客は脚や腰回りなどのグレーゾーンを狙ってくるのは当たり前だ。


「よし、練習するぞ!

 俺が触ってくる客をするから、ノアは上手く躱すんだ」


「……はい」


 おっとりとした返事。

 ちゃんと理解しているのか分からない。


「じゃあ、いくぞ。

 ノアちゃん綺麗な脚してるねぇ。

 ウヒウヒ。

 スベスベだぁ」


 手始めに脚を掌で撫でてみる。

 張りがあって、手を跳ね返すくらい弾力があるいい太腿だ。


「……ぁりがとう……ございます」


「違う違う。

 なんでお礼を言うんだ。

 そんな時は手を繋ぐフリをして、脚から遠ざけるんだ」


「……はい」


 肩を抱いたり、腰に手を回りたり、胸や尻は触るフリをして、それを躱す技術を教える。


「じゃあ、次は今までの応用編だ。

 実際に触ったりくっついたりするから、接客をしながら上手く躱すんだ」


「……わかりました」


「よし、じゃあスタート」


 酒を注ぐノアの患部をいきなり触る。

 手でガードしようとする隙をついて尻を触る。

 身をよじる流れに合わせて違う箇所を触る。


「……あぁ」


「ほらほら、そんな弱い抵抗じゃもっとして欲しいのかと思っちゃうよー?」


「……そんな……困ります」


 あー、タマランチ。

 そんな可愛い声で抵抗したら、こんなん逆にエスカレートしてまうわ!

 ドレスをペロッとめくり、丸出しになった患部をマッサージする。


「あーあ、肉まんが出ちゃったねー。

 ちゅぱちゅぱされちゃうよー?」


 肉まんを頰張りながら、すかさず脚の間に手を入れ患部を弄る。

 流石にこんな客がいる訳ない。

 もしいたら死刑にしてやる。


 ノアはもはや抵抗を止め、されるがままになっている。

 それでは面白くない。

 最後まで抵抗してくれないと。


「頑張って抵抗しないと、気持ち悪いジジイにやられちゃうんだぞ!

 諦めるな!」


 心を鬼にして激しい檄を飛ばす。

 これはこの子の為なんだ!


「さぁ、続きだよぉ」


 肉まん丸出しのノアにジジイ役の俺が絡みつく。


「さぁ、ノアちゃん。

 このジジイめに大事なところを見せておくれ」


「……ほんとに困ります」


 両手を突っ張り、俺の頭を押す。

 おなごの弱い力じゃテツ爺は止まらんガネ!

 ドレスの中に手を入れられ、ノアは必死に抑える。

 貧弱貧弱ゥ!

 スルリと足元に脱げ落ちる。


「白かぁ!

 ええのぅ、ええのぅ!

 そうれっと!」


 とうとうノアは押し倒され、両脚を思いっきり広げられてしまった。

 大事な患部が丸見えだ。


「……やめて下さい」


「こんな身体で儂をたぶらかすノアちゃんが悪いんじゃ!

 これはお仕置き確定じゃいッ!」


「……そんな」


 ノアの患部へマッサージ器をぐいぐい押し込んでいく。

 最後の抵抗か、パツパツの太腿が俺の腰を挟み込む。

 これじゃ、単なるご褒美だ。


「あー、奥まで入っちゃったぁ」


 衝撃に驚いたノアが大きな目を見開き俺を見る。


「……これも……練習ですか?」


「本番じゃい!」


 今になって気付いたが、ノアはあまり感じてない様だ。

 快感に鈍いのだろう。

 丹念にマッサージをしまくり、身体を解す。


「……あぁ」


 ついに扉が開いた。

 患部をキュッと締めつけてくる。

 気がつくとノアは必死に抱き付いていた。

 それを見届けてフィニッシュ!


 ————


 酒を飲み一息入れていた。

 俺の肩には、穏やかな表情で目を閉じたノアが心を許した動物のようにぴったりと寄り添っている。


 ふぅ。

 長い戦いだった。

 それでも三十五人中のたった四人。


 そのたった四人ですら、一人一人が個性的だった。

 どんな子か知らない状態で手を出すのも興奮するが、接した事で魅力を知ることもあるんだな。

 残り三十一人。

 気が遠くなる。


 テツオの戦いは始まったばかりだ!



 ————葛葉レイ先生の次回作にご期待下さい!



「もうちょっとだけ続くぞい」

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