第69話事務官②
酔って饒舌になったキャミィはこの国の裏事情や不平不満を聞いてもいないのに語りまくった。
どの領地か名前まで言わないところをみると、まだある程度理性が残っているのか。
しかし、政治家をしていると色々な物が見えてくるものなのかな。
若いのに結構苦労してそうだ。
そもそも領主は、領地を自分の器量裁量でまとめ上げるもの。
自領地で、不祥事や事件などがあっても、他の領主を頼るというのはなかなか難しいだろう。
それが手に負えない悪魔もしくは魔人の仕業だったとしても。
キャミィの話では、各地でいくつか起こっている奇妙な事件は、悪魔の所業だとすれば全て納得のいくものばかりだった。
「あ、私、喋り過ぎちゃってますよね。
皆さん今の話、ぜっーたい秘密ですよー?」
「ご安心下さい。
ここで交わされた会話は決して表には出ませんから」
アマンダが店の秘密厳守を説明すると、キャミィは続いて俺の顔を見る。
俺は慌てて、うんうん、と頷いた。
ふぅ、あっぶねぇ〜。
【
秘密にして欲しいなら、最初から話すんじゃねぇっての。
…………ちょっ待てよ。
もし本当に悪魔討伐だとすると、エルメスの依頼を
もう少しちゃんと話が聞きたいな。
キャミィの酔いが最終段階に入りそうなので、会計をして店を出た。
計二万ゴールド也。
マジか、白金貨二枚があっさり消えたぞ?
実はここって、ジョンテで一番金を生み出してるんでは?
アマンダの実力に恐ろしいものを感じながら、ホテル最上階のスイートルームへとキャミィを案内する。
「この部屋はどうかな?」
「これは素晴らしいですねぇ。
王も絶賛すると思いますよぉ」
そう言いながらボフッとソファに頭から突っ込んでしまった。
「窓からの景色もちゃんと見て欲しいな」
脇に手を差し込んで無理矢理立たせる。
フラついたキャミィは俺に手を回し抱き着く体勢になった。
「あら、領主様ぁ。
王都の使者に何するつもりれすかぁ?」
「いやいや、何もしないって!
それよりさ、各地で起こっている事象、事件について実名も付けてもうちょっと詳しく教えてくれない?
もし、教えてくれるなら、この最高級の
「あっ!
飲みたいれーす」
限界は近い。
酔った状態だが餌をちらつかせながら、何とかいくつか聞き出す事に成功した。
「ありがとう」
ポンっと景気良く栓を抜く。
五千ゴールドもする酒だ。
わあい、と喜ぶキャミィ。
普段どれだけストレスが溜まっているんだろうか。
こんなに酔っちゃって。
「じゃあ、この部屋は自由に使っていいんで。
では、ごゆっくりと」
ソファから立とうとすると、手首をパシッと掴まれ引っ張られた。
「女の子一人放っていくつもりれすかぁ?
一人酒は寂しいですよぅ」
垂れた前髪から覗く赤く火照った顔。
太もも半ばまで捲れ上がったスカート。
されど王都の使者は丁重に扱わなければいけない。
ここは紳士的に!
「じゃあ一杯だけ」
——————
気が付けば俺はベッドの上で、うつ伏せ状態のキャミィを一心不乱にマッサージしていた。
あれ?いつの間にこうなった?
そうだ、思い出した……
三杯目を飲んだ辺りでキャミィのその綺麗な深緑の長い髪を褒めてみたんだよね。
ふと、気になって聞いてみたんだ。
そのお尻まである長い髪の毛なら裸になっても、大事な部分が全部隠れるんじゃないかって。
もちろん、冗談だよ?
でも、完全なセクハラだ。
それは認めよう。
だが、彼女はノリノリで服を脱ぎ出したんだ。
場末の安いホステスの様にね。
ほら、俺は悪くないだろ?
結果は……、見事隠れた。
前に垂らした二本の髪束がうまい事全部隠せたんだよ。
二人で大笑いさ。
そしたらまた始まったんだよ、彼女のハニートラップが。
こんな状態の女を放っておくのか?とか、責任とるのが領主の務めだとか言いながら迫ってくるから、おいら参っちゃったよ。
で、こんな展開になっちゃったワケ。
なんだか、俺もムラムラきてたんだよ。
だからマッサージしちゃったワケ。
彼女は気持ちよく果て、そのままスゥスゥと寝息を立て始めた。
「寝ちゃったか」
言い訳しておくが【魅了】は一切使ってない。
シャワーを浴び、ソファに座ると
……そうだったのか。
成分を【解析】すると、微量ながら媚薬の効果がある事が分かった。
なんて怖い酒なんだ。
そして、これを涼しい顔で渡すアマンダって一体……
クラブの控え室にバスタオルのまま【転移】で赴く。
アミーズが俺に気付くや、すぐにアマンダを呼びに行った。
「あら?もうお話は終わったんですか?」
「早いな」
接客中にも関わらず、アマンダは直ぐに控え室へやってきた。
「テツオ様を待たせるわけにいきませんわ」
アマンダはそれがさも当たり前かの様に、俺の横に座り密着してくる。
まるでインファイターの様な距離の詰め方にドキッとする。
このドキドキほんと慣れないんだよなぁ。
これはもうアマンダのスキルだと認めざるを得ない。
更にあの酒のせいでよりムラムラする。
気が付けば俺は、アマンダをマッサージ器に跨らせ下から施術していた。
「こうして欲しかったんだろ?」
華奢なくびれを掴み、乱暴にマッサージする。
「激し過ぎますっ」
とか言いながら、俺が動きやすいように腰の位置を調節し、指で俺を刺激している。
そんな技どこで覚えたんだ?
娼婦の影響って凄いな。
「あんな酒用意しなくたっていつでも可愛がってやるよ」
熱く激しい吐息を漏らしながら、アマンダは蠱惑的な薄目で俺を見つめ、何も言わず微笑んだ。
ああ、グッとくるな、その表情。
その間もノンストップで激しくマッサージをした。
圧倒的フィニッシュ!
アマンダがビクビクと痙攣する。
人間には少々激し過ぎたか?
「ずっと一緒にいたい……」
もたれ掛かる耳元で微かな声が聞こえる。
「え、なんて?」
「ふふふ、またいつでもテツオ様の好きな時に呼んでくださいませ」
艶っぽい顔で俺の口を塞いだ。
意識が飛んでしまいそうなキスだ。
実は聞こえていたが、まさかアマンダがそこまで言う程、俺への気持ちを膨らませていただなんて、男冥利に尽きるな。
アマンダは毎晩のローテーションに入れたいくらいの逸材じゃわいて。
「それと、私が言うのもどうかと思ったんですけど……」
ん?
「ここで働いてる女の子達は皆、いつテツオ様からお呼びがかかるのか待ちわびておりますわ」
な、何だと……?
メルロスばかりかアマンダまでもが彼女らを早くマッサージしろと急かしてくるとは。
外出も、働くペースも、オフの過ごし方も個々の自由にしているよ?
デカスのテツオホームには、書庫や音楽室、娯楽施設など飽きさせない設備を整えたよ?
新生活を始めたばかりの彼女達は、日々充実していると思ってたよ?
ドレスを着直したアマンダがその答えを教えてくれる。
「彼女達を救出し保護した時点で、テツオ様はあの子らの心の拠り所となったのです。
それはテツオ様が思っている以上に大きく育っていますわ」
微弱とはいえ【魅了】魔法は確かに掛けた。
当初は心的外傷を抑える為のものであったが、その傷が深い者程、比例して俺を求めるということだった。
その広がった心の穴を満たしてやらねばならない。
つまり、今から俺がする事は—治療—なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます