第22話デカス山頂


「ニンゲン!何スルツモリ!」


 自由を奪われた妖精は、その種族特有の甲高い声で警戒心を露わにしていた。



 ここはデカス山頂の雪原にひっそりと創られた建造物である。


 建造物という表現をするのは、それがひたすら巨大だからだ。

 透明なガラス水晶で出来た結界型ドーム。


 野球やサッカーのスタジアムばりの広さがあるそのドームの中に、更に館を創った。


 あの後、街灯を【解析】すると、簡単な魔力を込められた魔石で創られている事が分かった。


 そこで俺は持っていた魔石を増殖させ、用途に応じた術式を組み込み、必要な魔力を込め、便利な魔法装置を創り出す事に見事成功した。


 その魔法装置により快適な光源や空調を設定可能。

 風呂、寝室も豪邸並みの贅沢な広さを実現。

 正に夢の空間だ。

 簡単に説明すると、一階がリビング。

 ホテル並のエントランス、リビング、ダイニングを創った。

 三十人くらい入ってもゆったり寛げる空間になっている。


 二階はたくさんの個室が用意されゲストやいずれここで住む女性のプライベート空間になるだろう。


 三階は寝室と俺のプライベート空間。

 いずれ複数プレイを視野に入れた巨大なベッドが置かれ一面ガラス張りになっている。

 もちろん魔石のリモコン調整で全面を開放、遮光、鏡などに各種切り替え可能となっている。


 四階が浴室。

 露天風呂、サウナもある大浴場。

 水圧の強いシャワーを作れた事が嬉しい。


 ちなみに全フロアを魔石の転移装置で移動可能になっている。


 まだまだ不具合も出そうだし、その都度改良していく事になるだろう。


 立地は金等級ゴールドでも苦戦する筈のアイアンウイング(以下鳥さん)が沢山棲息する、前人未踏の辺境地。

 そもそも入り口が無いので【転移】無しでは誰も入る事が出来ない。

 ここなら誰にも邪魔されず安心安全に過ごせるだろう。

 遂に手に入れた俺の本拠地ホームだ。


 話を戻し、現場はベッドルーム。


 目の前にいるのは、エルフの国に行く途中にいたピクシー。

 あまりの造形の見事さに一匹捕まえて【収納】しておいたのだ。


 今はまだ椅子に座り、ピクシーを膝の上に乗せた状態ですね。

 今夜はこれで遊んでいこうと思います。

 良かったらチャンネル登録宜しくお願いします。


 ピクシーとの会話は大変だった。

 膨大な魔力を放出して威圧し、ようやく冷静になってくれた。


「ニンゲン、虐メナイデ!」


「イジメよくない、お兄さんイジメしない。安心。安全よー」


「ホントニ?」


「ホントホントー。

 お兄さん強いー。

 お兄さん只者でないー。

 ピクシー強くなりたい?

 強くなれば誰も虐めないー」


「ピクシー強クナル?

 イジメラレナクナル?

 ソレナラ強クナル!」


「お兄さん、ピクシー強くする。

 ピクシー、お兄さんの言う事聞く。

 分かった?」


「ウー、ワカッタ」


 誠意を貫いた甲斐もあり、圧倒的な魔力による一方的なコミュニケーションが取れた。

 ピクシーの腰を両手で掴み、魔力を流し込む。


【解析】


 ピクシー

 年齢:0

 LV:4→19

 HP:53→250

 MP:210→850


 ま、魔力供給ストップ!

 え?どれだけでも魔力込めれるんだけど大丈夫か?

 とりあえずこれくらいにしておこう。


「スゴイ、チカラ溢レテクル」


「お兄さん凄いでしょー?

 次はお兄さんの番ねー」


 ピクシーの身体を纏う布切れを、魔力で剥ぎ取る。

 綺麗な曲線美で肌がツヤツヤしている。

 青く長い髪の毛がなびく度にキラキラ光を放つ。

 その100センチサイズの美麗な芸術品が両手にスッポリ収まっている。

 興奮するな。


「ニンゲン、ピクシースキナノ?」


「うん、好き好き。

 お兄さんの事はテツオって呼ぶんだぞー」


「テツオー?」


 指で感触を確かめる。

 身体が小さくて、手のひらで揉むことが出来ないから、指で弄るしかない。

 人差し指と親指で挟み、プニプニ揉んでみる。

 柔らかさは人間と変わりない。

 指を激しく動かし、プルプル揺らす。

 たまらず口に咥えてみると、すっぽり収まった。

 更に吸い込んで二個とも口の中に入れてみる。


「ウウー」


 ん?

 ピクシーが真っ赤な顔で涙目になっている。

身体をよじらせ、羽がプルプルしてるとこを見ると感じているのか。


 両手で腰をホールドしたまま、ピクシーの身体に魔力エキスを注射する。


 ちゃんと入った。

 愛は種族を超える事が証明できた瞬間だ。


「アアアア……」


 小さい手で俺の腕を掴んで刺激に耐えている。

 紅潮していく顔を見るに、快感に身を委ねるのを怖がっているのだろうか?


 両手で掴んだままマッサージ器を上下左右ぐりぐりぐりぐり擦りつける。

 本体が小さいからキツくてすごく気持ちいいな。


「コ、コレ、ナンカヘン、ア、アアー」


 あ、ぐったりしちゃった。

 待て、俺もフィニッシュ!


 いいオモチャを拾ったなぁ。

 いや、ペットか?

 表現には注意しないと。

 そうだ、名前を付けたらいいな。


 ピーピーうるさいから、ピピでいいか。


「おい、お前の名前はピピだぞ、ピピ」


 横たわるピクシーにフワッとシーツを被せ、その上から撫でる。


「ピピ?

 ピピ、テツオ、スキスキ」


 あ、なんか嬉しいな。

 嫌われるかとおもったが、懐いてくれて良かった。


 とりあえず風呂に行くか。

 運動の後はすぐ風呂に入りたい。


【転移】


 大浴場を独り占め。

 湯に浸かり、溜息をつく。


 ふぅ〜〜〜。


 落ち着いたとこで、頭を整理していこう。

 異世界に来て二日目だ。


 まず、魔石について。

 魔石の可能性は大きい。

 魔石って何だろう?

 誰が生活用品として実用化したのだろうか。


 幸か不幸か、魔物は人間の生活を脅かすが、魔物から採れる魔石は人間の生活を豊かにしている。


 持ちつ持たれつ、というか。

 不思議な相互共生。

 魔物や悪魔がいる世界にまだ慣れてないから、今はまだ自然の摂理として受け止めるしかないのかな?

 難しいところだ。


 次に、ガルヴォルン。

 この素材に出会えたのはラッキーだった。


 とりあえず【土魔法】でガルヴォルンの剣と盾を多数具現化させ【収納】しておいた。

 しばらくしてから、原石を鍛冶屋に持って行って、強い武具を作って貰おう。



 最後に考える事。

 時間を戻したら前世の記憶が消える件について。


 …………



 カポーン。



 …………


 うむ。


 初日に結構時間戻しまくった後だから、今更な感じもするし、既にどれだけの記憶が消えたのか判断もつかないが、一つの結論は出た、と思う。


 そもそも、前世での俺の最後。家族や友達。幼少期、学生時代の思い出。

 ここら辺の記憶は最初から欠落していた。

 断片的に覚えてるのは辛かったサラリーマンの仕事。


 思い出さない方がいいと、時のお姉さんに言われたが、俺もそう思い始めている。


 少しずつだが色んな人と交流して、今、俺はこの世界で生きている。


 異世界でこんな貴重な体験が出来るなら、今を楽しみ、生きていこう。


 大体、輪廻転生があるとして前世の事を覚えている人はいないだろう。


 とりあえず今後、自分への縛りとして【時間遡行】は使わず、使っても【時間遅行】までにしようと思う。


 これからはレベルを上げて敵を倒していく。

 魔法が効かない敵に対抗するには自分自身を強くしないとな。


 こんなもんか。


 ふぅ、頭も身体もサッパリしたから上がろうか。

 今から日課をしなくちゃならん。


 お楽しみだ。


【転移】


「アーニャ、まだ起きてたんだね」


 アーニャ。

 スーレ村の道具屋の娘。

 俺のスーレ村ランキング二位。

 純朴で無邪気さのある小柄な子。


「あ、テツオ様ぁ」


 俺は魔法使いだと、手を出した女には伝えてあるので、直に部屋に【転移】可能だ。


 さて、【魅了】で落とした女は一日経ってどうなったんだろう?


「寂しかった?」


「一日中、テツオ様の事を……考えてましたぁ」


 茶色の癖毛を指でくるくる弄りながら、恥じらう様子のアーニャ。


 よし!

【魅了】の効果が切れても、好感度は下がっていない。


 堪らなくなり、キスをする。

 ピクシーではこんなキスは出来ないからな。


 抱きしめたまま、【転移】する。


 スーレの村、遥か上空。

 いきなり場所が変わり驚いたアーニャは、軽く悲鳴を上げ俺にしがみつく。


「大丈夫。魔法で絶対落ちないから。

 それより、下を見てみな」


「あれって、スーレの村、ですか?

 あんなに小さいんですね」


 まだ恐怖からか四つん這いで下を眺める。


「でも、いい村だ」


 後ろから覆い被さり、そのままマッサージを開始する。


「あぁん、テツオさまぁ」


 空の上で暖かい風の膜に包まれながら、重力から解放され、浮遊状態でふわふわ回転しながら、アーニャを思う存分マッサージしまくった。

 初めての無重力マッサージ、病みつきになりそうだ。


 空中に浮かぶシャボン玉の様な膜の中、半分くらい溜まった温水の風呂に浸かり二人は寄り添い、恋人気分を満喫する。


「私みたいな田舎娘が、このままテツオ様を好きになってもよろしいんですか?」


 俺の首元に頭を寄せるアーニャは不安そうに訪ねる。


「え?もう好きなんだろ?」


「テツオ様、いじわるです」


「俺もアーニャが好きだ。

 冒険者としての役目があるが、暇があればいつでも会いに来る」


「約束ですよ?」


「ああ、約束だ」


「私、幸せです」


 コミュ障の俺が、いつのまにこんなプレイボーイな台詞言える様になったんだ?

 魔力って凄い。


 部屋に戻り、アーニャをベッドに寝かせつけ、【転移】する。


 いやしかし、素朴な村娘は癒されるなぁ。


 さて、次はいよいよ村ランキング一位の番だ。

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