第17話エルフの国③
アムロドからとてつもない闘気を感じる。
対戦相手は、このクールなハイエルフの男だった。
エルメス様じゃないのか。
戦いの舞台は、巨大な滝に囲まれた浮いた岩島。
滝の上からはギャラリーのエルフ達が、大勢見下ろしている。
その中にはリリィの姿も見える。
戦いが始まる前、アムロドにエルメス様が何やら耳打ちすると、無表情な筈のアムロドの顔がほんの一瞬歪み、みるみる闘気が溢れ出したのだ。
一体何を言ったのやら。
エルメス様が言うには、アムロドは三百年前エルフの中で一番悪魔を倒した戦士らしい。
そんな奴と戦えだなんて意地悪だなぁ。
【解析】
アムロド
年齢:520
LV:103
HP:2900
MP:1300
レベル100オーバー!
怖いな……、見なきゃよかった。
「そろそろいいか?
信じられぬが、エルメス様を襲おうとした不埒者を、断罪せねば、ならぬ」
「は?」
ガゴッ!
一瞬で間合いを詰められ、アムロドの拳が俺の左頬を捉える。
首から上が吹き飛びそうになったが、【
危なかった。
まさかこれ程のスピードとは。
流石はレベル100オーバー。
だがもう詰みだ。
まず【
【土魔法:
時が停止しているのではと錯覚するほどゆっくりした時流の中で、拳を突き出したままのアムロドの周囲を、百本近い光輝く剣を放ち取り囲む。
実は暇な時に、【土魔法】で剣や盾等使えそうな武具をしこたま具現化しておき、【収納】しておいたのだ。
さて、この剣でどれだけのダメージを与えれるか分からないので、更に魔法陣を周囲に展開し、先程エルメス様から強化してもらった魔法を発動する。
【炎魔法:
そこで【
繰り出した拳の先に俺がいないとアムロドが認識した瞬間、剣が次々と突き刺さる。
上から見ているギャラリーから悲鳴が上がった。
流石はエルフ一の戦士。
人気があるようだが役者が違ったか?
体が見えないくらい剣で埋まり、ハリネズミと化すアムロドに、【炎球】が無慈悲に直撃し、次いで爆発する。
魔法の威力が桁違いに上がっている。
爆発で足場が崩れ落ち、アムロドは岩ごと滝壺へ落ちていった。
レベル100超えもこんなもんか。
これなら悪魔も楽勝かも!
「まだ終わってないぞ」
危険を感じ上空へ【転移】する。
距離を取って正解だった。
【転移】前の空間は火の海となっていた。
中心の火柱から声がする。
「ゴーレムを倒したのは、まぐれではなかったと、いう事か」
なんだコイツ?
アムロドの全身が炎に包まれている。
俺の【炎魔法】の効果が持続している訳ではなさそうだが。
「私は火の
お前の火魔法を、吸収し、回復した」
アムロドが右手を伸ばすと、炎が槍を象る。
武器を得た火達磨が、またも俺に向かい突撃してくる。
あまりのスピードに【転移】せざるを得ない。
が、【転移】を先読みしたのか、すでに投げ終えた炎槍が迫っている。
【土魔法:
【転移】後にほんの一瞬無防備になる隙を、盾にてカバーする。
盾は破壊されたが、炎槍も消滅する。
相打ちという事は、アムロドの炎槍と俺の【水晶盾】は互角くらいなのか。
これが今の俺の、最大硬度を誇る盾なんだけどなぁ。
アムロドが突撃と投槍を絶え間なく繰り返すので、【転移】と防御を繰り返しつつ、隙を見て何本か【
本体を取り巻く炎は、もっと熱いって事なのか。
これがエルメス様の言う精霊の加護。
こんな奴どうやって倒せと?
考えろ、考えるんだ。
単純に火の弱点は、水、氷。
試してみるか。
【氷魔法:
確かにアムロドのスピードは早いが、【転移】により一瞬で安全圏に距離を取れる。
そこから一方的に攻撃できる利点が、俺にはある。
氷の槍を10本連続で放つと、数本は炎の槍に相殺され、残った数本は避けられてしまう。
避けた?
何故避ける?
やっぱり弱点だから?
俺の魔力であれば、【
アムロド、お前はどうかな?
【
アムロドに、大量の氷の槍が降り注ぐ。
その様はまさに暴風雨。
【
アムロドの前方向に、広範囲の炎の放射が発せられ、氷の槍を次々と溶かしていく。
その火炎はそのまま滝に直撃し、怒濤の瀑布が搔き消え、岩肌が剥き出しになる。
当たれば即死級の大技だ。
俺が【転移】で避け続ける間にも、俺の槍は魔法陣から次々と創り出され、アムロドに向かい飛んでいく。
全方位から襲い掛かる槍の衝撃で、次第に炎の衣が剥がれていき、アムロドの身体が見えてきた。
やはり弱点なんだな。
チャンスとばかりに【
これは【時の
効果時間はずっと長い。
ボロボロになった炎の衣から覗くアムロドの胴体に、氷が付与された【水晶剣】を深々と突き刺す。
肉体を貫いたが、それをダメージとして認知するまでには時間がかかるだろう。
この男が死なない様に、これ以上追い打ちはしない。
勝負は既に決した。
だがしかし、時間をいくら操ろうが、ダメージを与えれない敵がいる可能性を考えさせられる戦闘だった。
そういう時にどうするか課題が出来た。
俺の時空魔法にも実は効果時間というものが存在する。
通常での【
その一分が経過するまでの俺の体感時間はおよそ三十分程。
魔力をフルに込めれば一秒。
一秒間に三十分の活動ができる。
暇すぎてすぐ解除する羽目になるが、もしとんでもないスピードで動く敵がいたとしたら多いに役に立つ魔法だ。
【
空気や気流、魔力の流れ一切が停止するので不便な点もあり、魔力を使う割に停止時間が短く調整が難しい。
やり過ぎると【時間遡行】して数秒前に戻ってしまうから使い勝手は良くない。
【時間停止】のコントロールは今後の課題だが、【時間遅行】の方が周りの動きが読みやすく俺自身も動きやすい。
【時空魔法:
解除して通常時間に戻しておかないと、どの時流にいるのか分からなくなるので気をつけないといけない。
「ぐはぁっ!」
アムロドが血を吐きゆっくりと崩れ落ちた。
俺の【土魔法】で粉微塵になった岩島はすっかり復元されているので落下はしない。
アムロドが首を捻り悔しそうに俺を一瞥する。
「勝負あり!」
エルメスが声高らかに宣言した。
ギャラリーのエルフ達は、何が起こったのか事実を飲み込めず絶句している。
止むを得まい。
勝負が始まった途端、アムロドに大量の剣が突き刺さり、爆発して落下する。
精霊の力で復活したと思ったら、大量の氷槍が襲いかかり、剣で刺され、勝負あり。
ギャラリーの目には一瞬で勝負がついたように映ったろう。
【光魔法:
突き刺さった剣は掻き消え、みるみる傷が塞がる。
高い生命力を誇るアムロドの体力でもフルに回復した。
エルメス様の強化で回復力もかなりアップしているようだ。
「なんて、……強さだ」
お前も十分強かったぞ。
言ってやらないけど。
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