第10話騎士姫②
死ぬ。
死を覚悟した時、俺の
時間が止まったかの様にゆっくりと流れる。
スカーレット自身も剣から放たれた閃光すらも止まったかの様だ。
おそらく更に魔力を込めれば時間が戻るだろう。
しかし、戦闘中においてはこの状態で事足りる。
スカーレットの背後に転移する。
ほぼ動かない彼女に【
両手両足に風の縛鎖が巻き付き動きを封じる。
【闇魔法:
あんまり抵抗されても困るから、体力も少し奪っておこう。
いやしかし、近くで見るとやっぱり綺麗な顔をしているなぁ。
姫とか言ってたから王族だろうが、なんで騎士なんかやってるんだろう?
おっと、そろそろ時の流れを元に戻そうか。
「なっ!?」
「私の勝ちかな?」
身動きの取れないスカーレットは、自分の身に起こった事を飲み込めないでいる。
「早い。
全然動きが見えなかった。
つ、強過ぎる」
「貴方の方が強いですよ。
特に最期に放った剣は非常に怖い技でした。
死にそうでしたよ」
笑って応えると彼女は悔しい表情で呟いた。
「降参するわ。
これ外してもらえるかしら?」
「ああ、すいません」
急ぎ【拘束】を解き【回復】を掛ける。
元気を取り戻した彼女は剣を鞘に納め、俺の目をジッと見て覚悟を決めたように口を開く。
「私は西国アディレイの第一王女にして聖騎士スカーレット・リリィ・アディレイ。
勇者である貴方をお迎えにあがりました!」
何を言い出すんだ、こいつは……?
「いやいやいや、私は勇者じゃありません」
そこはしっかり否定する。
「え?違うの?
あ!勇者って自覚がまだ無いだけではなくて?」
「うーん、俺を勇者って思った根拠は何でしょう?」
「そうね、説明するわ。
根拠は二つ。
まず一つ目、我が国の占い師が予言したの。
北の国の外れ、とある村に勇者が現れるだろう。
いずれ巫女となる娘がその勇者と深い繋がりがある。
まずはその巫女を探せ、と。
貴方は巫女となる娘エナを知っていたわ。
二つ目は、貴方のその実力。
勇者は全ての属性の魔法に長けており、全ての装具を使い熟す、と聞いてるわ。
まさに貴方ね」
「そのエナさんとは今日の朝に初めてお会いしました。
深い繋がりは無いので私では無さそうですね。
エナさんとは話をしたんですか?」
「そうなの?私も今日初めてこの村に来たの。
話はしたんだけど彼女何か隠しているような気がするのよねぇ。
勘だけど」
「例えばエナさんが巫女にならないと勇者の存在に気付かないとか、啓示が降りないとか、そういう類いでは?」
「うーん。どうかしらね。
それよりも貴方、もしかしたら勇者以上に強いかも知れないから、貴方を国にお迎えしたいわ!」
「無理です」
「も、もちろん貴族の贅沢な暮らしを約束するわ!」
「興味無いです」
ちょっと興味はあるが、なんか堅苦しいのは嫌だ。
「じゃあ私貴方に着いていくわ!
……あ、貴方の事もっと知りたいし!」
突然何を言い出すんだ。
【魅了】もしてないのに顔を真っ赤にしやがって。
「いやいや、お姫様がこんな下賤な野郎と一緒にいてはいけませんよ」
俺のフリーライフを邪魔はさせない。
「じゃあ、予定があるんでこれで」
「あ、ちょっと待ってよ!」
お姫様を丘に置き去りにしたまま、村へ【転移】した。
彼女に手を出そうもんなら、そのまま王族との婚姻ルートのフラグが立つまである。
おそロシア。
井戸に到着。
アーニャとようやく会えるぞ。
ん?アーニャがいない。
遅いから怒って帰った?
いやいや、【魅了】が効いた状態でそれはないだろう。
いつまでも俺が来るまで待つ筈だ。
道具屋のアーニャの部屋へ【転移】する。
すでに真っ暗だが窓から月明かりが差し込みベッドにいる人影を視認した。
アーニャだ。
もう寝てるやないかい!
何故だ?
「ハッ!」
思わず声が漏れて自分の口を手で塞ぐ。
アーニャは起きなかった。
……セーフ。
思うに【魅了】の持続効果が切れたのだろう。
盲点だった……
「アーニャ、アーニャ」
小声で静かに呼ぶ。
果たして【魅了】が掛かった後の好感度はどうなっているんだろう。
気になる。
うぅん……と唸ってから、パチリと目が開いた。
「え?冒険者様?どうしてここに?」
びっくりしているが叫んだりはしないようだ。
「待ち合わせしてたの覚えてないの?」
「え?……覚えてません。ごめんなさい」
「じゃあ俺の事は覚えてる?」
「はい、もちろんです」
アーニャは恥ずかしがって布団で顔を隠した。
ん?つまり好感度はある程度維持されているが、【魅了】中の約束が記憶から消えたということか。
難しい。
「キスしていい?」
「え、困ります」
とは言うものの拒否する気はなさそうだ。
キスをして、そのままベッドの中にお邪魔した。
服を脱がそうとすると恥ずかしがるので、少々強引に引っ剥がす。
月夜にアーニャの白い肌が艶かしく照らされる。
楽しい夜になりそうだ。
ミッションコンプリート。
——————
事後、商店通り中央に備え付けられたベンチで、夜風に当たりながら物思いに耽る。
……シャワー浴びてぇ。
村には入浴施設なんて無かった。
みんなお湯で身体を拭いてるのか?
あーダメだ。
気持ち悪い。
【転移】して村の外にでる。
【土魔法:
自分の周りを石の壁で囲む。
これで誰にも見られない。
装備を【収納】し、素っ裸になる。
【火魔法:
【火水融合魔法:
怒涛の水圧で全身に滝湯を浴びる。
お湯が溜まってきたので風呂として浸かる。
【炎熱】で温度を微調整しつつ風呂を満喫した。
なんか身体がスッキリしたらまたムラムラしてきたなぁ。
【火風融合魔法:
ドライヤー代わりにレベルを抑えた温風で身体を乾かす。
魔法って便利だ。
さぁて、次は誰にしようかな?
決めた!
【転移】
エナを【感知】して彼女の寝室に【転移】する。
村長の家だ。
村長の娘だったのか。
だからなんだってんだ。
どうしても彼女をマッサージしたい。
スカーレットによりまさかの重要人物に浮上してきたが俺には関係ない話だ。
巫女とかよく分からんし。
【
「エナさん、エナ、エナ起きて」
「え?旅人さん?ど、どうして?人を呼びますよ?」
え?【
なんか犯罪感アップするからやめてほしい!
【
「ああ!」
エナが身体を捩らせて何かに耐えている。
うーむ、巫女候補ともなると魔法抵抗力が高いのか。
それとも想い人がいるから耐えれるのか。
検証が必要だ。
「はぁはぁ……」
落ちたな。
「エナ、この村に来て初めて見たときから気に入ってたんだよ」
エナの頬を撫でる。
「でも私……心に決めた人がいるんです」
え?やはり勇者か?
「そいつは誰だい?」
「言え……ません」
「じゃあ、どこにいるんだい?」
「…………遠いところに」
「こんな可愛い子を置いて遠くに行くなんて」
頬に添えたおれの手に涙が落ちる。
「私おかしいんです。
心に決めた筈なのに、貴方様にどんどん惹かれております。
貴方様の一言一言が何故か私の心を満たすのです。
私どうしてしまったんでしょうか!?」
ふむ、心地よい。
どうやら
だが、エリンが言うには【
対象者であるエナは、少なからず俺に魅力を感じている証拠なのだ。
なら魔法は時短に過ぎない。
「もう我慢する必要はないんだよ?エナ」
そう言って唇を重ねる。
勇者なんかに美味しい思いをさせるかっての!
エナは俺のモンだ!
俺の勝ちぃぃ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます