大好きな栗まんじゅう
私のスマホがなった。ラインが来た。姉からだった。
『今日は、ジャンプ
へぇ、そうか。私は漫画にはまったく興味がないからどうでもいいんだけど。と姉にも言っているのに、私にめちゃくちゃジャンプを
姉から送られたメッセージにあきれつつ、栗まんじゅうを一口。『口の
私は、栗まんじゅうをこよなく愛している。
事故に
そういえば、
ある日、春次さんが大学の友達の
「どれにする?」
「もちろん、栗まんじゅう」
「ホント好きだね、栗まんじゅう」
「うん」
二人は仲が良い。うらやましかった。友達すらいない私にとって、男女の仲とは夢のまた夢だ。そして、春次は栗まんじゅうを愛している。私と同じだ。
「じゃあ、私は栗きんとんにしよう」
「わあ、いいね。栗きんとんも好きだよ」
私も、栗まんじゅうに
「まさか、箱ごと買うなんてね。さすがは大家族の長男」
「いや、これは自分用だよ」
「え!」
え! ちょっとどころか、かなり意外だ。兄妹想いの素敵な春次さんだから、てっきり弟、妹のぶんまで買ったのだと思った。全部一人で食べるつもりだったとは。なるほど、栗まんじゅうだけは、誰にもゆずらないわけか。激しく共感する。
「でもさ、弟にいつも勝手につままれるんだよなぁ」
弟というのは、
「あら、それは大変ね」
「そうだよ」
春次さんの栗まんじゅうエピソードは、ほっこりして、可愛らしいとも思えるものだった。そして、同じ栗まんじゅうを愛する者として、ものすごく共感できる。あと、もう一つの栗まんじゅうエピソードがあった。
「春お兄ちゃん」
末っ子の
「あー、ちょっと、ごめん。今は相手になれない」
「えー、あそぼ」
「ごめん。今は忙しいから、また今度ね」
鈴美ちゃんは、不満を顔にだした。
「正お兄ちゃんと遊んだら?」
と言って、一つ下の次男、正雄さんを呼んだ。
「どうしたの?」
「すずが遊びたがってるから、相手にしてあげて」
そう言う春次さんを見る、正雄さんの目は冷たかった。
「すずは、お兄と遊びたがってるんでしょ?」
正雄さんの言葉に続いて、鈴美ちゃんは、首をたてに二回振った。その目線としぐさで、春次さんに訴えていた。
「これから、栗まんじゅう食べるから」
「あとにしたら?」
「今は、至福のときだから、あんまりさまたげられたくないの」
正雄さんは、ため息をついた。そして、あきらめたようだ。栗まんじゅうを目の前にした春次さんには、何を言ってもきかないからだ。
「すず、あっちで俺と遊ぼうか。今のお兄は絶対にダメたから」
「うん、わかった」
鈴美ちゃんも、しぶしぶあきらめたようだ。
二人が出ていくと、落ちついた春次さんは、六個入りの栗まんじゅうを箱から出した。
春次さんの栗まんじゅう愛が強すぎた。可愛い末っ子ちゃんの頼みでさえも、断ってしまう。とっても優しい春次さん。栗まんじゅうだけは、絶対にゆずらない。
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