雪弘(枝道編)
深雪に似ているということもあってか、雪弘は雪が好きだ。春次に雪がふっていると伝えられると、気分が上がり、すぐに窓の外を
雪がふってる日は、休日であれば、
心優しく素直な雪弘。誰に対しても、何に対しても、優しく接する。家族に対してはもちろん、学校では男の子にも、女の子にも優しく、上級生、下級生、先生にも誰をとわず笑顔で優しい。人間に
そんなこともあって、雪弘は、小学校の低学年の頃から、いろいろとトラブルに見舞われた。雪弘は、小学校に入る前からも心優しい性格だった。幼稚園の
そして、小学校に上がると、まわりの
一年生の頃はまだ何も起きなかった。担任の先生は、大ベテランで、子供に
トラブルが起き始めたのは、二年生以降。優しいクラスは解体され、みんなバラバラになってしまった上、担任の先生は、定年で退職してしまった。二年生の頃担任は、あの先生みたいに子供たちに真摯に向き合うような先生ではなかった。それどころか、あまり子供たちに関心を向けなかった。だから、子供たちはあるていどは好き
大きなトラブルが起きたのは、三年生のとき。転校生がやってきた。中国から来た子で、
その名前を担任の先生から聞いたとき、クラスのみんなは変な名前だと口々に言っていた。雪弘もなじみの無い名前で、不思議な子なんだろうなと思った。
その日夕飯の食卓で、雪弘は家族にこのことを話した。春次は「国によって話す言葉がちがうから、名前も雪弘が知ってるような名前じゃなくて当たり前なんだよ。中国からもっとはなれたアメリカなんかだと、ABCとか使うから、日本とはぜんぜんちがうんだよ」と言った。
両親は、彼女のがいじめられないか心配している様子だった。
「え、いじめ?」
父親は言う。日本と中国は仲が悪く、中国から来た人は、いじめに遭いやすい。さらに春次も言う。
「中国じゃなくても、外国から来た人って、肌や髪の色がちがったりして、注目されやすいんだよ。話す言葉や普段の生活とかもぜんぜんちがって、まわりから変な目で見られちゃうんだよ」
「え、でも、生き物って形も色もみんなちがうよ。人も一人ひとりちがうじゃん。どうしてそれでいじめられるの?」
「
雪弘が、その子はいじめられないのかと聞いたとき、春次は、その時は雪弘が守ってやるんだぞ。と言った。
香花がやってきた。彼女が日本にいるのは一時的で、三週間。海を渡ってやってきた、外国の人。といっても、外見は日本人と大して変わらない。それに彼女は、なかなか可愛らしい子だった。
雪弘は、春次に教えられた簡単なあいさつを彼女に言った。香花は、安心したのか他の言葉も言ったが、もちろん雪弘には理解できなかった。雪弘が話しかけたことによって、他のみんなからの警戒もほぐれたかと思ったが、そうはならなかった。
翌日の朝、雪弘が教室に入ると、香花がいじめられていた。雪弘が止めに入るも、止めることはできず、雪弘は、照行に助けを求めた。照行には、何かあったら助けを求めるように言われていた。照行の助けで、いじめっ子たちは、香花をいじめることはなくなった。
その日の下校中、いつも通りかかる公園には、
その日以降、香花は、学校に来なくなった。助けられたが、やはりいじめがトラウマになったのだろう。かなりの攻撃を受けて、身体的にも精神的にも苦痛を受けたのだ。
そのことを聞いた時、雪弘は、自分がもっと香花の言葉を分かっていたならば、彼女も周りのみんなも、安心することができたのかなと、悔やんでいた。そんな雪弘に、春次は「優しいね」と言った。
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