雪弘と友達
「母さん、どうしたの?」
母親がなにか不安を
「春次。今、学校から電話が来たの」
母親は、言葉をつまらす。言いにくいような悲しいことが起こったのだろう。
「ゆきが、クラスの子たちから
えっ。春次さんは、
そういえば、前に相談してたな。あの続きだろうか。雪弘くんが、いじめを受けている。あんな
「だから、ちょっと学校に行ってくるね」
「
春次さんは、
母親は、
雪弘くんが通う学校の保健室。そこでは、雪弘くんがベッドの上で横になっていた。そのかたわらには雪弘くんの友達であろう男の子が座っていた。ゆき。雪弘。春次さんは、雪弘くんの名前を呼んだ。保健室には春次さんだけで来た。母親は、校長室の方に呼ばれた。横になっている雪弘くんは、ぐったりとしていた。
「お兄ちゃん」
重々しい体から、よわった小鳥のような声をだして、兄に
「
雪弘くんは、
かたわらに座っていた男の子──胸元に
「……雪弘くんは、僕をかばってくれたんです」
倉野くんの顔は
「君は大丈夫なの?」
「……はい。雪弘くんがやられてすぐに助けがきたので、ぼくはやられていません。雪弘くんは、みぞおちに、強く一発をくらって、倒れました」
これをきいた春次さんは、きっとショックを受けて、青ざめていることだろう。
「……ごめんなさい。僕のせいで、僕をかばったせいで、雪弘くんがこうなってしまった」
倉野くんは、ほおに涙を伝らせながら、春次さんに
「あぁ、僕はなんていやな人間なんだろう。自分を大切にしてくれる存在にまで、不幸な思いをさせるんだ。人をイラつかせて、うらまれて。こんな
倉野君は、自分だけに言い聞かせるように、小さな声で、自分を
「そんなこと、言わないで」
雪弘くんは、横になりながら言った。
「
「そうだよ。たった一つしかない命なんだから、自分で自分を傷つけてはいけないよ」
春次さんも、雪弘くんに続けて言った。
倉野くんは、ぼそっと何かを言おうとしたが、
「照行」
「え、春兄。来てたんだ」
「うん、母さんと一緒に」
「……お兄ちゃん」
「ああっ、ゆき!」
照行さんは、雪弘くんのよわった小鳥よのうな声を聞くと、
「ゆき、大丈夫か?」
どう見ても大丈夫な状態ではない。
「……照お兄ちゃん」
「照行」
雪弘くんと春次さんは、照行さんを心配していた。少しおどろいているようにも見えた。
「何で来なかったの? 俺のところにきたら、助けてやるって言ったじゃん」
照行さんは、泣いていた。
「……ごめん。そんな余裕なかった」
雪弘くんは謝った。その眼は落ち込んで、下を向いていた。
「雪弘くんは、危機を感じて教室を出ようとしてたんですが、それを読まれたみたいで、はばまれてしまいました」
「ああああっ、くそっ! くそっ!」
照行さんは、
春次さんは、泣き崩れるてるゆきさんの
「照行、雪弘はこの子を庇って守ったんだって。雪弘はヒーローだね。もちろん、照行も立派なヒーローだよ」
春次さんは、照行さんに、雪弘くんに、優しい言葉をかけた。この言葉が
『雪弘くん、学校でいじめられて、倒れる。──みぞおちに当たって、ぐったりしていた。
友達、倉野くん──みずぼらしい格好で、あまり家が裕福ではなさそう。いじめの対象になった。
雪弘くんが友達をかばい、
てるゆきさんが来た。悲しんで、泣いていた。ゆきひろくんを助けたいと思っていた。
春次さんの優しい言葉で、二人とも泣いた。素敵な兄弟愛。』
外は真っ暗になっていた。最近、日の入り時刻が、前よりもずっと早くなった。私は、夜の音楽番組を見ていた。手元には、
ついに! そのアーティストの番が来た。うわあああ‼︎ 私は、心の中で
何だよ。こっちはラインを見ている
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