三節 「通じ合う、そして」

「ねぇ、花蓮」

「何?」

「キセキってなんだろうね」

 僕は彩がいなくなった空を見つめた。

 僕たちは色々な目的からキセキを求めて、キセキに翻弄されてきた。

 それでも奇跡が起きてほしいと願う。

「本当になんだろうね。私たちがキセキを求めることは間違っているのかな」

「でも、僕は、もう後ろを振り返らないよ」

「うん」

「僕は目的を果たし、花蓮ももう目的を果たしたんだよね」

「そうだね」

 それからしばらく沈黙が訪れた。

「これから、」

 同時にその言葉を言った。

 僕たちは見つめあい、笑いあった。

 キセキよりも大事なものが近くにあるのに、僕たちはそれになかなか気づけない。

「花蓮から言ってくれていいよ」

「えー、恥ずかしいなあ。これからも一緒にいてもいいかな?」

「うん、もちろんだよ」

 それは僕たちにとって告白を意味していた。

 これから先の人生もずっと一緒にいようと意味が含まれている。

 僕も同じことを言おうとしていた。

 僕は今の気持ちを大切にしたいと決めた。

 あの時、できなかったことを今はしたい。

 もう大切なものをなくしたくない。

 花蓮と過ごした時間はすごく楽しかった。

 僕たちはキセキを通して、繋がりあいたかった。

 キセキの先にあるものを二人で見つけたかった。

「でもその前に、花蓮。僕にまだ隠し事してるよね?」

「えっ、なんのこと? してないよ」

 彼女は全く動揺していない。

 きっと僕が聞かなければこのまま黙っているつもりだったのだろう。

「このままだともうすぐ死んじゃうんだよね?」

「なんで……」

「僕が神様だということを忘れたらいけないよ。そばにいるだけで、自然と心も読めてしまうんだよ」

「大丈夫だよ。神様も、読み間違えたんじゃない? 私、元気にしてるでしょ」

「もう強がらなくていいから。僕が何とかするから大丈夫」

 そう言って彼女を抱き締めた。

 彼女はゆっくりと抱き締め返してきた。

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