四節 「私の気持ち」

 まず私はキセキについて、あらゆる手段を用いて調べた。それと共に彼がどこかにいないか探していた。

 キセキポイントで普通の情報だけでなく、機密情報の閲覧もできる。

 もはや、キセキは人の格差も生み出している。

 作り出した当初の目的からそれてしまうことは残念ながらよくあることだ。

 彼のことを思うと心が苦しくなるけど、それは誰にもとめられない気がする。

 しかし、当たり前だがポイント交換リストには死者を甦られるという項目はなかった。

 ただ、「神のキセキ」というものがあることを見つけた。

 それは、キセキを作った神様が認めた場合に、キセキポイントと引き換えに一つだけ願いを叶えてもらえると言うものだ。

 しかし、億越えのキセキを保有していないと引き換えはできない上に、神様は自分で見つけ出さなければいけない。

 神様は、人の姿をしているかそうでないのかすらわからない。

 ただ、キセキがたくさん起きている現場にふと現れることがあるということも記されていた。

 だから、私はキセキをいろいろな街で起こした。

 それでも、神様はなかなか現れてくれなかった。

 今思えば早い段階で私のそばに現れていたんだけど、神様自体も記憶をなくしているからわからないのも当たり前だ。  

 そうして二人で行動するようになっても、私は時間がある限りキセキについて調べたり、キセキを起こしていた。

 私には時間がないのだから。

 こんなにも時間にこだわるのには理由がある。

 実は、私の命はもう長くない。

 余命一年と宣告されている。

 もちろんそのことは、誠にも言っていない。 

 誰にも気づかれないために旅に出たのもある。

 病気が見つかった頃にはもう手遅れで、手の施しようがなかった。

 というより、現代の医学ではどうすることもできなかった。

 しかも、急死するようでそれまでは何ら変わらない普通の生活ができるようだ。

 強いて言えば体が万年だるくて重い。

 そこだけはある意味よかった。

 痩せ細っていったら、他の人に病気だとばれてしまうからだ。

 しかし、病気が判明した時は、余命を受け入れることはできなかった。

 なにもかにもが嫌で自暴自棄になっていた。

 そんなときに、彩さんの声を聞いたのだ。

 それが、私の生きる希望のようになった。

 何か目的があると人間は頑張ることができる。 

 なぜそれだったのか私にはわからない。そういう巡り合わせだろう。

 偶然か奇跡か彼女のお陰で、私は生きる活力を再び見いだした。

 私の生きる糧が、彼女の願いを叶えることだった。 

 自分の病気を神様に頼んで治してもらうことができたはずだ。

 でも、そこまでして私は生きたいと思わなかった。人生に満足していた。

 そう、彼に出会うまでは……。

 私は余命のままに、一人で最期を迎えたいと思っていた。

 そんなとき、彼に出会ってしまった。

 私が好きになってはいけないのはわかっている。

 そんな資格なんてない。

 でも、そんな私の思いとは裏腹に、どんどん気持ちは膨れ上がっていった。

 彼の優しさが私の心を癒してくれた。私が支えるべきなのに、いつの間に私が支えられていた。

 彼とこれからもずっと一緒にいたいと思った。

 今さらやっと自分の気持ちに気づいた

 私は、彼に恋をしている。

 

 

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