六節

一節 「償い」

 神が去ったあと、私たち二人はその場のしばら動くことができなかった。

 一気にいろいろなことがありすぎた。 

 まるで嵐が一気に雨をもたらしたようだ。 

 そんな中、私は神様に会えたと嬉しくも思っていた。

 私には私のこの街に来た目的がある。

 そして、私も誠がキセキを作った神様だということには驚いた。

 そこまでは私には考えることができていなかった。

 いや、むしろ身近な人が、実は神様かもと疑う人の方が少ないだろう。

 そして、今はまず絶望している彼を助けてあげたいと思った。

「誠。私の方を向いて」

 私は優しく声をかける。

「うん」

 彼は泣いていた。

 彼はすぐに泣くし、どこか頼りない。

 それでもそれがいとおしく感じる。

「彩さんのこと本当にごめんなさい。私はしっかり覚えていたのに、言い出せなくて…」

 私は頭を下げた。 

 本来なら会ってしばらくしてから伝えるべきことだった。

 私が自分の感情を優先にして、後回しにしてしまった。

 少しでも気持ちが伝わるように強く思った。

「それはもういいよ。僕がキセキなんて作ったのが悪かったんだし」 

 彼は明らかに自暴自棄になっていた。

 このままではいけない。

「いや、よくない。私にも原因があるから。今後償い続けるから」

 私が取り返しのつかないことをしたことは確かだから。

 キセキがどうであれ、私が彼から最愛の人を奪ったのだから。

 彼に一生許してもらえないかもしれない。

 それでも、彼のそばにいようと思った。

 それが私にできる最善のことだから。

「そして、そんなに自分を責めなくていいよ」

「でも、僕はとんでもないことをしてしまった」

 私は彼を抱き締める。 

「私でよければ、そばにいるよ。誠はどんなことをしても、誠だよ。私にいつも優しい言葉かけてくれる誠は変わらないよ」

 彼はうなづいて、そのあとひとしきり泣いた。

 私もなぜか涙が出てきた。

 彼の気持ちを考えると、心が締め付けられた。

 人を思うってこんなに辛いものだろうか。

 こんなことで許されるとは思っていない。

 でもせめて彼に優しい言葉をかけたいと、心が思っているのだ。

 私がそばにいて罪の意識を持ちながら共に暮らすことも償いになるだろう。

 もちろんそれすらも彼が拒むならやり方は変わってくるけど、それぐらいは彼が認めてくれたようだ。

 私は、彼の辛いときにそばのいてあげたい。

 ただその気持ちだけが溢れていた。

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