四節 「過去の話」

 キセキを作ったのは僕……。

 それが彩に関する、キセキに関するすべてのことだったのだ。

 つまり、彩を殺したのは僕だったということだ。

 花蓮でもなければ、神でもない。   

 すべて僕のせいだ。

 確かに、あのあと話を聞いて事故を起こしたのは花蓮だったとわかった。

 それは確かなる事実ではある。

 神も僕の記憶を改ざんしていた。もしかしたら神の策略にはめられたのかもしれない。

 複雑に入り交じっていたけど、大元は僕がキセキを作ったことから始まる。

 そもそも僕がキセキなんてシステムを作ったのが悪かったんだ。


 それはちょうど僕が一人前の神として認められた頃だった。

 すべての人が今より幸せな生活を送れるよう願いを込めて、僕はキセキのシステムを作った。

 そこにはもちろん、彩も含まれていた。

 何の悪意も思惑もなく、純粋な気持ちだった。

 僕は神として正しいことをしたと思っていた。

 何一つ抜かりなくうまくできていたはずだった。

 そして、このキセキがうまく作用すれば、父も人間である彩との結婚を認めてくれると言っていた。

 だから、僕は一生懸命取り組んだ。

 キセキ累計ポイントの平均値も年々上がり、うまくいっていた。

 けれどそんなときに、その時にあの事故が起きた。

 僕はその瞬間に、自分の過ちに気づいた。

 彩のことを思いやることができなかった。

 一緒にいるための努力の方向性が間違っていた。

 後悔はいくらしても、足りない。

 もしも、人生やり直せるなら、僕は違う選択を選んでいた。

 でもやり直せるほど人生はそんなに甘くはない。

 

 

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