三節 「キセキシステムの真実」
「神様?」
僕は戸惑っていた。
どうして、今神が出てくるのだろう。
僕はただ花蓮と彩について話をする予定だったのだ。
神様なんてこの話に関係ないはずだ。
「そうだ。私が、神だ」
直立不動で、相手を見下した傲慢な態度だ。
「でも、キセキを作ったのは政府の政策ですよね?」
僕は確認するかのように聞く。
「お前は本当に愚かだな」
そう言って、神は嘲笑った。
「えっ?」
「本当に一個人が、一国家がそんな大それたシステムを作れると思っているのか?」
「でも、僕の記憶はそうなってますよ」
政府が作ったことに疑問を抱いたことはなかった。
それが普通だと思っていた。
そこで花蓮をみたけど、花蓮は同意はしてくれずうつむいていた。
何か違和感を感じた。
「記憶がそうなっているか。果たして、その記憶は本当に正しいものかな」
ぞわぞわとしたものがおしよせてくる。
何だろう、この感覚は……。
「何を言ってるんですか。僕の記憶は、僕が誰よりも知ってます」
「ふふ、それはどうかな。今まで記憶をなくしていたお前が何を偉そうに言うんだ」
そして、神は当たり前のようにこう言った。
「お前の記憶は、私が改ざんしたのだ」
僕はまた頭が痛くなる。
僕の今までのキセキに関する記憶は偽物だったということだろうか。
では誰がキセキを作ったのだろうか。
「改ざん? そんなことできるはずがない」
「全知全能な神に、できないことがあると思うか」
「でも、何でそんな必要があるんですか」
「それは、お前がキセキのシステムを作ったからだ」
「僕がキセキを作った……」
そういえば、花蓮の口から「政府の政策でキセキのシステムができた」という言葉は、一言も出てきていなかった。
今さら気づいた。
花蓮はキセキは神様が作ったと知っていたのだろうか。
「そうだ。でも、神族でありながら、我が子でありながら、人間の女に恋をしたバカなお前など必要ない。だからお前の記憶を改ざんした」
僕の頭の中で言葉がぐるぐる回る。
じゃあ一体誰が彩を死に追いやったというのだろうか。
もしかして、花蓮は本当はわるくない?
そもそも本当にこの神という人の言っていることは正しいのだろうか。
でも、体は神の言葉の一つ一つに確かに反応していた。
「ちょっと待って」
そこで、花蓮は大きな声をあげた。
「じゃあ、彩さんが亡くなったのは、どうしてよ? あなたが邪魔だから殺したの?」
「残念ながら、それは違う。確かにあんな女は葬り去った方がいいと思っていたが、それをする前にあの事故が起きたのだ。こいつのシステムの作り方が、甘かっただけだ」
神であったころの記憶が僕の頭の中ではじけていく。
神はそれだけを伝えて、消えていった。
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