二節 「踏み出す」

 僕は再び歩き始めた。

 もう立ち止まるのはよそうと思ったから。

 花蓮のもとに戻ろうと決心した。

 ちゃんと話を聞いて、前に進もうと思った。

 例えそれがよくないことでも、知ることが彩を大事にすることにつながるから。

 少し歩くと、花蓮はすぐに見つかった。

 彼女は少し息を切らしていた。

 白い息がこぼれている。

 彼女も僕のことを追っかけてきていたのだろうか。

 「花蓮」

 呼び掛けてみたけど、どうにも気まずくて、そのあとの言葉が出てこなかった。

 僕は彼女になんて言ってほしいのだろう。

 なんと言われたら、納得するのだろう。 

 もしも僕が思っている通りなら、僕は彼女を許すことができるだろうか。

「あっ、誠。えーっと、戻ってきてくれたんだね」

 彼女も同じように気まずいらしく言葉が少ない。

 僕から勇気を出して聞いた。

「あの、彩のことで。本当のことを教えてほしいんだ」

「うん、そうだよね。あれは、」

「その話、私も混ぜてもらえないかな」

 彼女が話そうとしたとき、急に男の人が声をかけてきた。 

 どこかで見たことある人だ。

 そして、なんとか思い出した。この人はこの街で一番最初に出会った人であり、キセキを受け取っていた人だった。

 もしかして、それだけじゃなくて何度も出会っていたのだろうか。

「なんでですか?」

 僕はいきなりの乱入者に戸惑う。

 この人は、僕にとって通りすがりの人でしかないはずだ。

 僕の思い出したことの中にこの人の情報は一切なかった。

 もしかして、僕が思い出せていない何かがまだあるのだろうか。

 そう思うと急に怖くなった。

 まだ僕には謎が残っているのだろうか。

 花蓮の方を見ると、彼女もなにか思い当たる節があるのか戸惑っていた。

「それは私が、キセキに関する神だからだ」  

 その人はそう言って、一瞬でこの場の空気を変えたのだった。 

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