三節 「思い出す前に」

 空を見上げて、大きく息を吐いた。

 星は、空一面にキラキラと光り輝いている。

 私は決心した。

 彼が何かを思い出す前に、私がこの街にきた理由を話そうと決心した。

 それと同時に彼のことを考えると胸が熱くなった。

「ねぇ、誠。この街は、きれいなものが多いよね」

 私はできるだけ自然と彼に話しかけた。

 前にいる彼の手を握りたいなと思った。

 正直彼は私の話を聞いて、どんな目で私を見るのだろうかと少し怖かった。

 もちろん、彼が悪い人でないことはわかっている。

 基本大雑把な私と違ってしっかりもしている。 

 私たちはタイプは違うけど、波長があっているような気がする。

 でも、私の話は特殊だからどうなるかわからなかった。

「そうだね。花蓮は、花好き?」

「うん、好きだよ。この街の青色の花もきれいだよね」

「青色……。そうだね、僕も花が好きなんだ」

 彼は少し考え込んでいた。

「そうなんだ、一緒だね。なんか嬉しいよ」

 私はこんなときでさえ、彼との共通点を見つけて嬉しくなっている。

 そして意を決して話し始める。

「あのさ、もしもの話だよ。もしも、私がこの街に来た理由がある人を探すためだとしたらどう思う?」

 私は続けて話した。

 心臓はドキドキと音をたてている。

 彼はそして、空を見上げた。

「星空、ブルー、女の人……。あぁ、頭が割れる」

 そう言いながら、彼は倒れていったのだった。

 やはり人生は思い通りにいかないことばかりだと私は思った。

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