二節 「散策と関心」
僕たちは、この街を散策してみることにした。
もしかしたらまた新しいことを思い出すかもしれないからだ。
僕はもう一度星降る丘に行こうと言ってみたけど、彼女はそれを拒んだ。
フラッシュバックが大きなものだったから、またいくのは刺激が強すぎるからだそうだ。
まあよく考えてみると、一度何かを思い出した場所で、もう一度何かを思い出すと言うのは統計的にも珍しいことだろう。
そこでふと思った。
もしかして、彼女は僕のことを気遣ってくれているのだろうか?
いやでも、それはないかとすぐに思った。
だって僕たちはまだ会ったばかりなのだから計算上そんなことはありえない。
この街について、少しだけ彼女が教えてくれた。
彼女は親切だなと好感を持った。
彼女もここに来るのは初めてだけど、日本の中心都市なので少しは知っているらしい。
この街は大きく、三つのエリアに分かれるらしい。
自然あふれる自然地、ビルが立ち並ぶオフィス地、海がきれいな海地。
僕が前に行ったところは自然地だ。
まずはそこから近いオフィス地に行ってみることにした。
そこに向かっている途中に、彼女が話しかけてきた。
「誠は、私の累計ポイント見て驚かないんだね」
彼女は、いきなり名前呼び捨てで呼んできた。
少しびっくりしたけど、それは表情に出さないようにした。
異性と話すことに慣れているのだろうか。
「あぁ、うん。そんなに興味ないからね」
さすがの僕も彼女をみたときに、累計ポイントの数値は見た。
確かに異常に高い。
僕が出会った人の中で誰よりも段違いに高いだろう。
しかし、それが理由で彼女を非難する理由にはならないと思った。
僕はキセキで人を判断しない。
「興味ないなんて人、誠が初めてだよ。ちょっと嬉しいな」
彼女は彼女なりに、累計ポイントが高いことで大変な目にも遭ってきたのだろうなと感じた。
キセキはここでも弊害を生んでいる。
でも、少しほっとした顔もしていた。
それと同時に僕は胸がなぜか少し痛くなった。
「そういえば、キセキについても、なんかもややすることがあるんだ。うまくはいけないんだけど」
「そっか。じゃあ、キセキのこともなにか関係しているかもね」
彼女は考え方が柔軟だなと思った。
そして、いい人だと思った。
こんな訳のわからない僕の話を、真剣に聞いてくれるのだから。
普通は気味悪がるだろう。
そんな話をしているうちに、オフィス地に着いた。
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