二節 「街行く人のキセキポイント」

 あの人は320万ポイント。

 こっちの人は650万ポイント。

 私は街行く人を見ながら、その人たちのキセキの累計ポイントを確認していた。 

 他人の累計ポイントがその人を見るだけでわかるようになっている。

 手についているマイクロチップと連動しているのだ。

 その人の頭の上に黒く数字が浮かび上がっているのだ。

 自分で自分のは見えたり触ったりできず、自分の累計ポイントマイクロチップに話しかけ確認しなければいけない。

 他人の数値が見えるのは人より優位に立ちたい気持ちを逆手にとっている戦略だ。

 誰しもが誰かより優位に立って、優越感を味わいたいと思うだろう。

 気持ちはわからなくないけど、私はそんなことに「時間」を使いたくないと思う。

 だから、私はただ見て楽しんでいる。

 この人は今までどんなキセキを起こしてきたのだろうと考えるとワクワクしてくる。 

 その中で、一人だけこちらをじっと見つめてくる人がいた。男性だ。

 私のポイントの高さゆえに急に騒ぐ人はよくいる。

 でも、そんな感じではなく異質だ。じっと視線が痛い。

 なんでそんなに見てくるのだろう。

 これといって特長のない人。ポイント累計は、遠くてちゃんと見えない。

 知り合いかなと思ったけど、思い当たらなかった。    


 花の爽やかな香りが心を癒す。

 この世のものとは思えない華やかさ。

 美しいという言葉では言い表せないほどの青色。

 さすが、日本一の花の都。   

 私は期待が膨らむ。

 今までたくさんの街を旅してきた。

 景色のきれいなところ、人情深いところ、最先端のものがあふれているところ。

 本当に色々なところにいった。

 でも、いつも空振りに終わっていた。

 私が求めているものはそこにはなかった。

 考えてみると、ここにたどり着くために必要な時間だったのかもしれない。 

 時間は無限にある訳じゃないのに、少しもどかしさを感じる。 

 「道のりもその人の人生を彩る素敵なものだ」と誰かが言っていた人がいた。誰かは思い出せないけど。

 私もいつか今までの時間をそんな風に思うことができるだろうか。

 ただ、私は目的のために旅を続けている。

 

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