二節 「キセキの仕組み」

 僕はあるところに向かっている。

 雪が桜の花びらのように綺麗に舞っている。

 手に取ると、光って瞬時に溶けた。

 きれいと自然と言葉が出る。 

 人は今や何でも人工物とする。

 でも、自然のものなかでも、特に天候は人間の手で変えることはできなかった。

 こんなにも科学が発達しているのに、天候にあくせくし災害に勝てないなんてどうしてだろうといつも思う。

 あまりにも人間は自然にたいして無力というより、無対策過ぎる。

 キセキとか無駄な政策にお金をつぎ込むぐらいなら、自然に備えるべきである。

 その最中に、スマホにいつもと同じことを話しかける。

 「きせき」とスマホに話しかけると、人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされるできごとと返事が返ってきた。

 さらに基本的には宗教および信仰と結びついていることが多いとも情報が追加された。  

 所謂神がかったものや宗教的なものだ。

 まず、情報操作されていることは間違いにない。

 「キセキ」についての説明が出てこないことがおかしいからだ。 

 これだけ情報化が進んでいるのに、そんなことはありえないことだ。

 情報隠し……。

 隠している?隠れている?? 

 大きな時計台…。

 なぜこのタイミングで時計台が頭に浮かんだんだろう。

 そして、次に僕が誰かとかくれんぼをしている姿が頭にぱっと浮かぶ。

 どうしてかそんなことが急に浮かんだ。

 僕は一体どこを彷徨っているのだろう。

 いや、僕はちゃんと今の現実にいる、はず。

 僕はもう二十歳で、かくれんぼなんてする年でもない。

 

 一層のこと、キセキが神のようなものであればいいのにと思う。

 それなら簡単にキセキは貯まらないからだ。

 しかし、現実はポイントとなるキセキはそんな類いのものでなく大それたものでもない。

 友達ができた、人に道を教えたなど、些細なことでキセキ貯まる。

 ポイントが貯まるのは、一般的に小さな奇跡と呼ばれるようなものだ。

 だから、お手軽で、なおさら人はどんどんポイントを貯めていくのだった。 

 しかも、SNSで、今のキセキの累計ポイントをアップするのが流行っている。

 現段階の累計ポイントもマイクロチップに話しかけることですぐに表示できるのだ。

 人間は自己顕示欲の塊だ。 

 そこをうまくついた政策なのだ。

 しかし、なぜこんなにキセキのことが気になるのだろう

 僕の知る限りキセキになんてなんの思い入れもない。

 接道を通っている途中で、泣いている女の子がいたので、僕はどうしたのかと話かけた。

 少し悲しいことがあったとその子は話してきた。僕は話を聞いてあげることにした。

 そうすると、すぐに泣き止んだ。

 すると、僕の手が金色に光りだした。

 きっと人に優しくしたからキセキが貯まったのだろう。 

 僕は右利きだけど、時計は右手にする。

 なんだかそれがしっくりくるというか、こだわりが強いというのかわからない。

 きっと端から見たらこだわりが強いのだろう。

 ただ時計が光っているように見えるのはそんなにいい気分ではない。   

「キセキが貯まりました。獲得しますか?」と話しかけてくる。

 僕は「拒否します」と自然と返事したのだった。   

   

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