第8話 謎深き老婆アンシェント=マーザー

 僕の目の前にはたくさんの子供たちがいた。中には顔の知っている子も何人かいて、顔を殴られ、顔が真っ赤に腫れている女の子と、212と呼ばれていた男の子がいた。僕は急いでその二人のところへ行った。


 「さっきはごめん!! もっと早く僕が行っていればこんなことにはならなかった!」


 その女の子は、僕に屈託の笑みを浮かべて、親指を立てた。そして、横にいた212と呼ばれていた男の子が話した。


 「俺の名前はドレイク=マーカス。本当にありがとう。君は命の恩人だ。次は俺が君を守る番だな。」


 「僕はアレク=ルーカス。よろしく」

 

 僕とマーカスはお互いに力のこもった握手をした。すると、グレイスという男は手を三回叩いて、僕たちを注目させた。そのグレイスの横に、かなり年老いた老婆が立っていた。


 「改めて言うけど、僕の名前はディオ=グレイス。できれば僕のことを父という存在で考えてもらいたい。僕の呼び方はなんでもいいよ。そして、今日から暮らす君たちのこの場所は、安全とは言い切れない。だから、僕がいない時はこの"マーザー"が君たちの面倒を見るから安心しておくれ。あと細かいことはマーザーに聞いておくれ。では、僕は次の仕事があるからもう行くよ。」


 グレイスは僕たちに背を向けて地下室を出た。そして、老婆は話し始めた。


 「こんばんは、おちびちゃんたち。私の名前はアンシェント=マーザー。マーザーで構わないよ。今日からここでみんな仲良く暮らしていってもらうけど、私がいない時は自力で生きなくてはならない時がいづれはくる。だから、その自力で生きるための力をここで力をつけてもらう。とりあえず、明日はおちびちゃんたちには、朝5時には起きて再びここに集合してもらう。だから今日は早く寝んなさい。ベッドはここの下にいくらでもあるから、使いなさい。」


 マーザーはそう言って地下室を出た。


 そして、僕たち三人は目を合わせて、僕とマーカスと女の子は共に行動することを決めた。僕は女の子に質問をした。

 

 「名前はなんていうの?」


 「...」


 女の子はしゃがんで、地面に指で自分の名前を書いた。


 A、、m、e、n、e

 

 「アメーネ??」


 女の子は笑みを浮かべて少し頷いた。

 

 周りを見渡すと、既に他の子たちは下に移動をしていた。


 「僕たちも行こっか。」


 二人は頷き、僕たちは下へ移動する、下へ続く階段は薄暗くて少し怖かった。そして、下へ降りると、鎖で通れなかったが、さらに下に階段が続いていた。どれだけこの鍛冶屋は広いのだろうと、気が遠くなった。


 部屋に入ると、部屋一面にベッドが敷き詰められていた。その奥にも扉があり、先にも続いているようであった。


 僕たちは左、手前の隅っこの三つのベッドを選んだ。久しぶりの綺麗ベッドに嬉しかったが、まだ慣れない空間に落ち着くことはできなかった。そして、朝が早いので、すぐに僕たち三人と他の子たちはベッドに横たわった。


 

 

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