第7話 悪人として生きる善人
グレイスという男は理性を失った獣のように相手襲い掛かった。
バシシシシンッ バシシシシンッ
辺り一帯に、斬撃音が響き渡る。
獣と化した男は大剣を大きく振り上げ、相手目掛けて大剣を振り落とした。
キンッッ!
タナトスという男は右手で握っていた黒剣を両手で持ち変え、受け身の体制をとった。しかし、その獣と化した男のあまりにも強力な一撃に、黒剣が木の枝の如く折れた。
パキンッ!
そのまま男の大剣がタナトスという男の顔から腹にかけて振り下ろされ、大量の血が宙を舞う。
タナトスという男は怯むことなく、一瞬にして、その場から姿を消す。
獣と化した男は何かに抵抗しつつ、大剣を自分の心臓目掛け突き刺した。そして、男はそのまま地面に倒れた。
大量の出血をしている男を、行き場を失った僕はただ見守ることしかできなかった。そして、倒れ伏している男のもとへ、リアという女が肉切り包丁を強く握って向かった。
「フフフッ これで懸賞金は私のものよ、、、、フフフッ」
強欲という悪魔に取り憑かれた女は、手にしている肉切り包丁を男の首に当て切り始めた、、、。
僕は再び落とした、麺棒を持ち、女を一心不乱に急いで止めにいった。
「やめろ!!」
女はこちらに見向きもせずにどんどん切り進める。
グシャッ!
倒れ伏した男は、短剣を女の胸に突き刺した。そして、女は糸の切れた操り人形の如く、その場に倒れた。
「眠れ。欲深く穢れた者よ。」
男は何事も無かったように立ち上がった、、、。
「すまないね、 坊や。 さあ僕の家に行こうか。」
男はそういうと、いつの間にか来ていた黒い馬車へ向かって歩き始めた。僕もそのあとについていく。
馬車のそばに、綿手袋が紅く血に染まっている、白髪の執事らしき者が立っていた。
「グレイス様、お怪我はございませんか、、、 グレイス様。その子は、、、」
「新しい僕の友達さ。」
男はそういうと、馬車に乗った。僕は執事に一礼をしてから、馬車に乗った。
男は深く俯き、フーッと息を吐き、深く長イス座り込んだ。
恐らく疲れきっているのだろうと思った。あの少しの時間で男は人を三人を殺したのだ。
男は顔を上げて言った。
「坊やの妹はどんな子かな。」
「素直で元気な明るい子です。」
男はなぜか、何度も頷きながら共感してくれた。
屋台が多く並び、にぎやかな夜の街を馬車が駆ける。
そして、街を抜けてすぐの物静かな森の中へと入っていった。
一軒の鍛冶屋に到着した。
馬車は止まると、執事は馬車のキャリッジの扉を開けて僕たちを出迎えてくれた。
僕と男は馬車から降りたあと、僕は執事にもう一度一礼をしようと、後ろを振り返ると、もう既に、黒い馬車の姿はなかった。
僕と男は鍛冶屋の中へと入り、奥の地下へと進んでいった。
そして、男は地下の扉を開けた。
そこには想像と正反対の光景が広がっていた、、、。
「ようこそ、 僕の家へ。」
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