第6話 地獄の覇者 vs 亡者の神

 僕は無意識にもう一度死の覚悟をした。

 なぜならその男は指名手配されていた殺人鬼であった。


 男は周りを見渡す。そして、男は僕に手を差し伸べながらおぞましい声で声をかけてきた。


 「貴族は憎いか??」


 僕は想定外の声かけに首を縦に振りつつ、恐る恐る、その男の手を握る。

 

 男は立ち上がった僕をみてから言った。


 「君たち安心してくれ、僕は君たちに危害を加えるつもりはない。君たちは僕が管理する孤児院へ連れて行く。外に僕の従者が馬車を用意しているから"追って"が来る前に早く乗っておくれ。」


 その男に信頼をおくことはできないものの、今はその男についていくしかなかった。


 僕以外の子供達は馬車に向かって走り出す。僕は立ったまま、男の顔をじっと見つめる。


 「どうした??」


 「お、お願いがあります。」

 

 僕はこの力ある男に全てを賭けるしか無かった。

 そして、勇気を振り絞って言った。


 「王族に妹が連れて行かれました。僕と一緒に妹を救出していただけませんか。」


 「なぜ君まで危険に晒す必要がある??そんな危険を冒してまで妹を救うのであれば、妹以上に失うものがあるかもしれないぞ。」


 「もう僕は妹以外に失うものはありません。妹以上に大切な存在はこの世にありません。」

 

 「...困った子だな、、、じゃあもう一度聞くよ、、、      貴族は憎いか? 」


 「はい。王族、貴族、欲にまみれ、自己の欲望のままに弱者を傷つける人間全てが憎い、、、。」

  

 「ああぁ。 最高だ。その願い僕が叶えてあげよう。」


 

 男は何かに異変を感じたのか、急に外の様子を見た。


 「来たか。」


 男は腰に装備していた短剣を抜いた。


 「今日はこれかな。」


 「坊やは隠れておいて。」


 僕は男に言われた通り、館のカーテンの隙間から男の様子を窺った。すると、男が外に出たと同時に、館の上から仮面に青い炎を纏わせた男が降りてきた。そして、辺り一帯が青い炎に照らされる。


 「久しぶりだなディオ=グレイス。」


 「あぁ。 久しぶりだ、、、我が同胞タナトスよ。」


 二人の挨拶と同時に剣と剣とがぶつかり合う。


 キンッ!


 そして、もう一度剣と剣とが交わり合ろうとした時、タナトスという青い炎を仮面に纏わせた男が振った黒刀が何重にもブレて見えた。そして、再び剣と剣とが交じり合う。


 バシシシシシンッ!!


 一回しか聞こえないはずの斬撃音が幾重にも重なって聞こえた。そして、グレイスと言われる男の大剣にヒビが入る。


 「やり過ぎじゃないかぁ、タナトス。」


 「そんなボロい剣を作った貴様が悪い。剣の質も貴様の腕も落ちたのではないのか、、、。」


 「相変わらず口が悪いなぁ タナトス、、 ちょっと力を抜いただけじゃないか、、、」


 グレイスという男は短剣をその場に捨て、背中に手を伸ばし、鎖で繋がれた大剣を強く握った。


 「能力開放、 獄界無双。」


 その瞬間、仮面からおぞましい目の輝きを感じた。大剣からは黒い霧のようなものを放ち、その男の背中に"地獄"が宿っていた。


 

 

 

 

 

 

 

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