第5話 反逆開始
幸運にも手当てをした子の一命を取り留めることができた。まだ気を失っていて、腕の骨や脚の骨、肋骨、あらゆる箇所が自在に動かせる状況になっていた。
このまま順調にこの子の治療ができればいいのだが、一つ問題が生じる。それは、もしこの子がこの家の家主に見つかったらどうなるか分からないことだ。
あの家主の非人道的行為を目にしたら、そう考えるのは当たり前だろう。だから僕は、この子が家主とリアと呼ばれていた、家主の妻らしき人に見つからないように、可哀想だがこの子をベッド下のスペースに移動させた。
一安心して、僕は自分の担当の仕事に取り掛かった。
特に何事もなく、5ヶ月が過ぎた頃だった。自分は餓死するのではないのかという極限な状態まできていた。手当てした子は自分がゴミ箱から持ってきた残飯を二人で分け合い、ギリギリ持ち堪え身体の傷もかなり癒えてきた。
その間、周りで餓死していく子供を沢山みた。罰を受ける子も沢山見た。精神的にももう限界だった。
そんな中、リアという女が僕の部屋に急に入ってきた。
もしかしてバレてしまったのか?僕はそう思い恐る恐る、顔を上げその女の顔を見上げる。
「266。 仕事よ、買い物に行ってきてちょうだい。」
安心して、頷くと、リアという女が顔をしかめて、ベッドの下に目線をやった。そして、いきなりその女は不気味な笑みを浮かべた。
「ねぇ。 266 その下何入れてるの? ベッドの下から血痕のようなものが見えるけど、、、ちょっと見るわよ。 」
もう止めることができなかった。血痕も消したハズなのに、その女はベッド下の違和感に気付いた。
「あれー。 おかしいわね。 特に何も無かったわ、、、 じゃあとりあえず、欲しい物を書いた紙とお金渡しておくからお使い頼んだわよ。」
僕は女から紙とお金を貰い、女は不気味な笑みを浮かべたまま、部屋を去った。
まずい。バレた。ベッド下を見てバレてない訳がない。
僕は部屋の扉を開け、誰もいないか確認した上でベッド下の子を担ぎ、その子の部屋へ急いで向かった。
212.... 212...あった。
部屋を開けると、その部屋には既に知らない女の子がいた。
「ごめん。この子を見つからないように守ってくれないか。」
その子は状況を把握してくれたのか、頷いてすぐに担いでいた子を保護してくれた。
「ありがとう。」
僕は急いで買い物へ行く。この土地から出たのは久しぶりだった。
目的の場所に着くと、中年の太った男が大きな声を出していた。
「号外! 号外! あの例の殺人鬼"貴族殺し"がまた現れたよ!!」
僕は聞いている余裕が無かったので、一心不乱に頼まれたお使いをこなしていく、すると偶然に買い物をしていた屋台にその殺人鬼についての貼り紙がされてあった。
殺人鬼 "貴族殺し"
473名殺害
罪 殺人 誘拐 内乱 死体遺棄
住居侵入 大逆
推定クラス roi
懸賞金 15.000.000franc(フラン)
他にも沢山貼り紙が貼ってあったが、そんな見る余裕もなく、急いで元来た道を行く、日もかなり暮れていた。
邸宅に着くと、大きな男の声がしていた。そして邸宅の中に入ると驚くべき光景だった。
僕が手当てしていた子の保護をしてくれていた女の子の顔を男が殴っていた。
「他に誰だ?? 212を隠すことに関与した奴は?? 」
僕はその男を止めるため叫んだ。
「止めろ!! 僕が全部やった。だからその子の罪は全部僕の罪だ!!」
「ほう。 お前か266。 じゃあ、、、 罰は、、、死刑だな。」
男は持っていたバットをこちらに向けた。そして僕はそれに、抵抗すべく、買った物の中にあった麺棒を取り出した。
男はこちらに向かって走ってきた。そして、バットを振り上げた瞬間、僕は男の懐に入り込み、麺棒で男の肋骨を殴った。男はびくともせず、そのまま振り上げたバットを僕の背中に当てた。
僕は倒れこみ、目の前にある光景を見るとただ僕を見守ることしかできない子供達と、男の振り上げたバットだけだった。
自分は死を悟り目を閉じた。
「死ねクソガキ。」
シャッ
バットで人を殴ったような音でない鋭利な刃物で切った音がしたので、目を開けると、そこには真っ二つになった男が倒れこんでいた。そして、仮面を被っておぞましいオーラを放つ、悪の元凶的男が立っていた。
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