第3話 まだ見ぬ世界。
薄暗い荷台の中、小さな長方形の格子の隙間から僅かに光が差しんでくれるおかげで、かろうじて赤く滲んだ床が見えるぐらいだった。
馬車は止まることなく進み続ける。
僕はとりあえず今の状況を確認すべく、同じ荷台に乗っていた少年に話かけた。
「ねぇ、 今からこの馬車はどこに行くのか分かるかい?」
話かけた少年は何かに怯えて、僕に何か訴えるかのように、目を大きく開け、首を横に振った。
状況を察した僕は、最小限の大きさの声でもう一度少年に話かけた。
「ねぇ、 今からこの馬車はどこに行くのか分かるかい?」
「ごめん。分からない。 だけど、数字の書かれた名簿をあのおじさんが持っているのを、あの格子の隙間から見た。」
正直な話、僕は自分の街から出たことはない、だからどこへ行くのかも想像がつかないのだ。しかし、周りの子たちの何人かが、大切そうにロケットペンダントや、ドッグタグ、手紙を持っていたので、どのような境遇で来たのかは大体把握することが出来た。
外の景色が確認したいので、格子から覗いてみた。すると、目の前には、海が広がっており、屋台も沢山並んでいた。
そして、馬車が止まった。僕たちが男に捕まってから、かなり時間が経っていた。
男が荷台の鍵を開けた。その男の顔を見ると最初出会った時と、随分と表情が変わっていた。
「降りろクソガキ共! これからお前らは静かにしておけ、絶対に泣いたりするんじゃねぇぞ。泣いたらどうなるかぐらいは分かるよな??」
男はそう言うと、僕たち一人一人に、手錠と足枷を付けた。
その作業が全て終わったのを確認した男はどこかへ向かい歩き始めた。
「ついて来い。」
そうして、男について行くと、小さな檻が沢山ある屋台に着いた。
「よし、お前ら一人ずつ入れ、俺が檻を開けるまで、絶対に動くんじゃねぇぞ。」
僕たちは言われるがままに、男の指示に従い檻に入った。
その男の後ろ姿しか見えなかったが、また表情が変わったのが分かった。最初出会った時の表情だ。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、元気な子供たちが揃っているよ!!」
その男の声かけで屋台の前を歩いている人々が足を止める。
「こんな可愛い子供たちが揃うことなんてもう無いよ!! 一家に一人いるだけで、もっと生活が楽になるよ!! 洗濯、掃除、皿洗いから何でも出来ちゃうこの子たち、ささ、どうぞ見に来ておいで!!」
男がそう言って足を止めた人々の中から、明らかに服装が違う女性が横に4人の兵士をつけて、歩いて来た。
男は驚いてとても興奮しているように感じた。
「これはこれは、ロレミヤ王女!! 今日も大変美しいお姿で。こんな汚い屋台に足を運んで頂けますとは、本当に光栄であります。」
「フフッ お世辞は要りませんわ。 その女の子一人いただけないかしら。 いくら必要かしら。」
女の子とはエマのことだった。僕は止めるために、必死に抵抗しようと、檻のから出ようとした。
すると、男が持っていた鞭で僕を叩いた。
「すみません王女。 この女の子ですと、ざっと五十万フランでございます。」
「フフッ 全然構いませんわ。 ところで、その暴れていた男の子はこの女の子のお兄ちゃんかしら、、、 可哀想ね妹さえ守ってあげれる力が無くて。ホッ ホッホ。」
僕は王族に対する憎しみを強く抱いた。そして、何もできない僕はただただ王女を睨みつけ、ただただ泣くだけであった。
「ま、まあなんて子かしら、私を睨みつけるなんて、、、早くその子をなんとかしてちょうだい。」
王女はそういうと、男は今まで以上に強く鞭で僕の頭を叩き、その反動で檻に僕は頭をぶつけて、気を失った。
、、、 「エマっ!!」
もう遅かった。エマと他の子たちはもう檻から居なくなっていた。目を開けた先に、見知らぬ女が男と話していた。
「この子が最後の売れ残りかしら、この子をください。」
「ええ、構いませんが、、、死んで、、、無いですね。いいですよ。この子は、、傷もあるので二千フランで取引しましょう。」
「ええ問題ありません。」
そう言うと女はお金を出して、男は檻から僕を出し、手錠と足枷を外した。
「まいどありがとうございました。」
女の後ろをただ僕は下を向いて夜道を歩いて行くのだった。
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