第2話 見えない希望

 朝日が僕達を優しく包み込むように出迎えてくれた。

 昨日は受け止めきれない現実を前に、絶望しきっていた。当たり前だが今も悲しみ、喪失感、様々な負の感情があるが、自制心が働きすぎて、今は何も考えることもできなかった。


 「エマ、起きてるかい?今日は朝早くから僕達はここを出て、教会に行かないといけない。だから、必要な物だけ持ってここを出るよ。」


 「うん。」


 エマは昨日のこともあり、精神的に疲労しているように見えた。




 必要な物だけとは言ったものの、どれも思い出の品ばかりで、エマにとっての選出はとても難しいように思えた。

 時間もかなり経ったので、エマに声をかけた。


 「エマ!もう準備はできたかい??そろそろここを出るよ!!」


 「ちょっと待って!」


 案の定、エマは自分の身体より大きい荷物を持ってきた。僕は無言でエマのリュックに入っている荷物を自分のリュックへと移し替えた。


 「じゃあ、行こうか。」

 

 「行ってきます。」

 

 返事がないのは分かっていたものの、何故か父さんと母さんが僕達を見守ってくれている気がした。


 


 街の通りを抜け、山道を歩いていると、黒い馬車の前に、この街では見かない黒い正装で身を包んだ男が立っていた。ずっとこっちを凝視している。

 馬車の後ろの荷台は頑丈そうで、外から中の様子が見えないようになっていた。

 

 怪しいと疑いから先入観を抱いてしまうのは当たり前だった。


 「おはよう僕ちゃん達。今日は朝早くからどうしたのかな??今日はね、おじさんは家でパーティーをしようと思っているんだけど、誰か来ないかとずっと待っているんだ。君たちは一緒にどうかな??」


 「ごめんなさい。僕達今から教会へ行かないといけないので遠慮します。」


 ギョロっと男の目が変わったことを感じた。

 ここは早く立ち去らなければならない。


 「教会ね、じゃあ、せめてそこまで送ってあげるよ、ここからまだ遠いから。」


 どうすればいい、今は荷物が重くて走れやしない。エマもそこまで足が速い訳でもない。また、交渉できる相手でもない。

 

 ここは一か八かにかけるしか無かった。


 バサッ 


 砂を勢いよく、男の目にめがけて放った。それと同時にエマの手を掴みその場から立ち去ろうとした、、、


 「このクソガキっ!! 」


 声を荒げた男は銃口を僕たちに向けた。


 「もう逃げても無駄だ。早くその荷台に乗れ。」


 男の顔が最初会った時と比べて随分と変貌していた。それは欲望に満ちた顔であった。

 僕たちは手を後ろで組み、男が距離を詰めてくるのを感じた。

 荷台の後ろにきた時、男が荷台の鍵を開けて、僕たちを中に放り込んだ。


 ドサッ


 そして馬車が教会と反対の方向に動き出すのを感じた。

 

 中には、僕たちと同じくらいの歳の子たちが沢山乗っていた。


 


 


 

 


 


 

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