第2話 弐

「私のお名前を教えれば、満足するのですか?」


「満足するなっ」


溜息をつきながら、美雪はこう言うのです。


「胡蝶美雪です」


「何て言うんだよ?」


「みゆきです」


「ほぅ、みゆきって言うのか、良い名前じゃないか」


「大悪党に褒められても嬉しくありません」


「そ、そうなのか……悲しいな……」


ジェラドルマって人の事が美雪には全くわからないのでした。


「美雪は日本という国ではどんな事をしていたんだ?」


「えっとですね、日本では女子高校生をしていたのかな」


「女子高校生というのは美味しいのか?」


「美味しくありません」


「そうなのか、残念だな」


「女子高校生というのは学校という所へ通い、

そして、お勉強をする所でもあるのです」


「まじかよっ、俺は勉強苦手だから、しなくていいよ」


「大悪党の癖にお勉強が苦手というのは可笑しいよね」


「どうして可笑しいんだよっ!?」


「大悪党だってお勉強しないと大悪党になれないじゃない」


「あっははははっ、俺はな、運で大悪党になったんだよな」


「そうなんだ、運があれば、大悪党になれるの?」


「運があれば、大悪党になれるぞ」


「じゃあ、私も大悪党になろうかな?」


「いやっ、いやっ、美雪やめた方がいいな」


「どうしてやめた方がいいの?」


「見ている限りな、美雪は純粋そうで悪い人には見えないからだ」


「そうなんだ……」


『私も大悪党になりたいな』



「それよりも呼び捨てにしてごめんなさいけど、

ジェラドルマはゼッジュの森から抜ける方法を知っているの?」


「いいやっ、全然知らないなっ、あっははははっ」


「えっ? えぇぇぇええええっ!?」


『嘘でしょ、知らないなんて、マズイじゃないの』


「ジェラドルマが知らないなら、どうやってこの森から抜けるのよ、

どうするのよっ!?」


「あっははははっ、わからないな、あっははははっ」


ジェラドルマは高笑いをしているのです。


「いい加減にしてっ!! 私はドラグルスという異世界の事は

全然知らないし、どうしていいのかもわからないし、

ジェラドルマだけが頼りなのっ!?」


「そんな事を言われても知らないし、無理はものは無理だな」


「どうしたらいいのよっ!?」


「本当に知らないから力になれないなっ!?」


『ジェラドルマの事はもうあてに出来ないし、

私一人でこの森から抜けるしかないじゃないの』


「私はこの森から抜けたいから、

先に行くねっ!!」


「じゃあな」


美雪はジェラドルマと別れるとゆっくりと歩き出して、

ゼッジュという森から抜けようとしているのです。


しかし、この森から抜けようと意気込んだのはいいけど、

森の中の景色は相変わらず、変わっているような感じもしなくて

どうしようという感じになると不安になる美雪です。


果たして、美雪は無事にゼッジュの森から抜け出せる事が出来るのでしょうか。

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