黒魔女と饒舌な本

@syunko7743

第1話「悪夢」

「✕✕✕、私が囮になってむこうに行く。だから、私に構わず逃げて。」


そういうと物陰に隠れていた青髪の少女は立ち上がった。



「やだよ……アリア……一緒に行こうよ。」


(アリアまでいなくなっちゃう)


物陰に隠れていたもう一人の黒髪の少女は今にも泣き出しそうな声で言った。



「大丈夫。今は離ればなれになっちゃったけど、リーンお姉ちゃんもアンお姉ちゃんも後でここをでたとき、またみんなで再会するって約束したでしょ。私も約束する。」



「……っでも……。」



「さがせ!!脱獄したものを一人として逃がすな!!」


黒髪の少女が言い欠けたその時、既に近くまで脱獄した子供を捕まえるよう兵が迫っていた。



「……わかった……じゃあ✕✕✕がこれもってて。」


そういうと青髪の少女は自分の手に持っていた本を黒髪の少女に渡した。



「……っこの本……。」



「みんなで一緒にいたとき、よく読んだ『勇者アノと賢者ルーの英雄譚』。私の一番の宝物。」



「✕✕✕がこの本持ってて……それで再会したときに返す……私とサーシャの約束……。」



「……っヴん……わがっだ……。」


黒髪少女は頷く。



「じゃあ、……行くね……。」



その言葉を最後に青髪の少女は飛び出し、階段のあるほうへ駆けだした。



「見つけたぞ。逃がすな、追え!!」



少女を発見した兵は青髪の少女の後を追いかけていった。



ーーウウッ・・・ヒクッ・・・ーー

兵がいった後、少女はひたすら反対方向へと泣きながら走った。



(アリアは大丈夫。リーン姉ちゃんだってアン姉ちゃんだって約束したから、絶対一緒にでるって……。)


少女は走りながら自分自身に言った。



(そう、きっとみんな無事にここから脱獄して再会することができるんだ。)


少女はそう自分に言い聞かせるしかなかった。でなければ自分自身気づいてしまうから。自分がもっと足が速ければ、もっと勇敢な性格ならば、今と結果は変わっていたのではないのかと。そんな自分の無力さを実感しながら少女は目を覚ました。

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