第17話 透けた服と、壊れそうな理性と、気絶した天使
「礼人さん……コート濡れちゃうから大丈夫ですよ……」
歩きながらも、俺の事を気にかけてくれる声があった。
間違いなく寒そうに体を震わせているのに、俺に気遣う余裕は必ず残してくる。
今は自分の為に泣いたって誰も文句言わない状況だろうに……。
それに俺も正直、結夢を直視できない問題があった。
特にずぶ濡れになった服が、とんでもなく不味い事になっていたからだ。
「それよりも結夢は自分の事を気にした方がいい」
「でも……」
「自分の服、見下げてごらん」
結夢が自分の服を見る。
計算式が出来上がっていくように、頬に上気が溜まっていく。
そして完全に理解した時。
“特に白いブラウスが濡れまくった結果、中の水色のキャミソールが透けてしまっていると分かった時、水着みたいに双乳の膨らみが明らかになったと分かった時の叫び様ときたら”。
「ひ、ひゃああああああああああああああああああ!!?」
しゃがみ込みんで胸を抑えながら、甲高い叫び声を上げてしまったので視線が殺到中。
まずい。この結夢を見られるのは非常に不味い。
この子、立ち直れなくなりそう。
しかし結夢は涙目で透けてしまった下着、胸を隠すのに必死で絶賛混乱中だ。
あと秘密基地は目と鼻の先なのに。
……仕方ない!
えーい! ままよっ!
「ちょっと我慢しろよ」
「……ひ、あっ!?」
結夢の太ももと背中を持ちながら、ダッシュ。
声にならない声をされているが、今は緊急事態だ。
一瞬の恥で全部解決するならこっちを選ぶしかない。
「……」
って、持ち上げた時のスカートの位置が悪かったのか、ふとももに直接俺の手は当たっていた。
細いのに、指先に伝わった感触が柔らかすぎる。
えっ、一応子供の頃に結夢の体に触れたことはあるし、あの頃から外見的には変わっていない筈なのに、触覚がエラーを起こしている様なこの感覚は何だろう。幸せになりそうな雰囲気は何だろう。
触っていたい。何なら付け根まで撫でまわしたい。
しかも結夢の顔が俺の首元に密着してる。
吐息を感じる。
だからどうしたって俺が言いたい。
小学校くらいの頃は、このくらいの距離にいた事も珍しくはなかっただろう?
しかも結夢は高校生になっても、殆ど小学生から成長していない。年相応に胸が大きくなって、それくらいだ。
でもこの距離に近づいて分かる。
天使のようなあどけなさの中に、女神のような官能的な何かを感じるというか……。
唇、柔らかそうというか……。
結夢の背中に触れている右手が、結夢の縮こまった肩を抑えている胸元が暖かくて仕方ないというか……。
……ごめんなさい俺の理性。
お願い、どこにもいかないで。
俺一人だと、懲役刑にまで行っちゃうかもしれないんだけど。
「よし、着いたぞ……」
秘密基地……とは言っても、別に廃屋とかそういう何かではない。
単純に林の中にある開けた場所で、ミモザではない木々の中にあるせいであまり見向きもされないのだが、この部分だけ金色の木は今年も花を咲かせている。
ここなら周りからそう簡単に見えない。
俺達だけの空間だ。
「結夢、ちょっと服を……あれ?」
返事がない。
ただの屍とまではいかないが、ただ気絶しているだけのようだ。
「にへ……れ、
「結夢!? 結夢ーー!?」
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