10月23日

夜はきいろい。だけど、今日はちょっと違い気がする。晩秋にも近づいた。でも、小春日和とは関係ないだろう。風の強さは昔の記憶を蘇る、希望を擁したわたしを起こすように勢強く襲っている。

 遠くに出たい。このしまに離れたい。酒を飲んで出た狂言ではなく、真面目で話してゐる。

 私を裏切ったこのしまの原風景、もう一度見たいんだ。

 そう思うと、涙が湧き、止めようとしても、阻まない。

 かれはこのしまのすべてを奪った。


 酒飲めども、解けぬ悲しことであり。予想に反して、自分を醒ました。

 自分を欺きたくないであろう、とにかく、きいろいで染まるしまを逃げたい。準備する余裕はなさそうだが、唯一残ったもとの様子を、もう一度目で確かめたい。


 午前一時、普通の私にとってはまだ眠気すらない時間帯だ。だが、私はとても気絶そうで、階段を下った。

 夜はきいろい。このしまは汚された。

 きいろいは私を晒して、排除している。


 鉄片の音は耳を刺す。私は夜行乗合のりあいに乗った。一人しかいない車内でも、騒ぎは止まらぬ。昔からこうだったのか?


 「次は終点、久良浦くらうら、久良浦…」


 ここの夜もきいろい。

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