きいろの島

中山友尋

10月22日

 夜はきいろい。故里しまに戻ったもう一年間が、毎回夜中の街を巡ったときはそう思う。

 少なくとも、もうすっかり大自然に慣れた私にとってはとても譎怪けっかいなことであり。都会ってそういうものなのか。だが、このしまのきいろいはまるで私を呑み込まれるように、今まで出逢った都会とはまったく別物であり。

 夜になると、目に納める物はすべてきいろいに染まり、私はなにかを逃げるような、石畳道いしだたみみちを走る。

 鮮やかだった街景色を走り抜け、古びたビルにたどり着いた。

 右のポケットに置いたカギで扉を開けると、凄まじい匂いが私の帰りを迎えた。狭く短い廊下を通りぬくと、階段がくねくねと上まで続く。手すりが汚いから、私はケイタイを手すりとして使う。床をちらっと見たら、ゴキブリの死体があった。

 建設当時は、エレベーターはまだ高価なインフラだ。こんな狭くて、誰も維持をしていないこのビルには設置するわけがない。でも、老後の生活を考えれば、どうやら設置することがよいだろう。でも、この狭い島はそんな余裕がない。ビルのみんなは共有スペースまで手を出してるし、と思いながら、自宅にたどり着いた。

 誰もいないのに、居間のがついたのは、多分ネズミ退治の対策ということだ。

 彼らとのコミュニケーションを避けるため、部屋に逃げた。

 寝ようか。


 午前三時、わたしはケイタイに夢中して、寝られなかった。このままだとだめに気づいたが、なかなかコントロールできない。

 しまの大学に入ったもう二ヶ月、小さいすぎて、高校との区別はまったく掴めない。最初はちょっと頑張ったが、でもこれからは無理だと想う。

 教えてる物に興味ないし、先生はつまらなくて、ちゃんと喋られない者いる。二ヶ月でも、同級生との付き合いはないと言えないが、学校に出たら他人同士になるぐらいだ。よく考えたら、ちゃんと友達と言える者は手で数え切れる。この人はコミュ障かな?と思われるかな。でも、主動的に友達を作るのはやはり怖い、怖いもんだから。話しかけるのは恐怖すぎる。そのおかげで、いままで作った友達はすべて勝手に始まるということも言える。


 でも、よく考えたら、たゞ自分の事に対する責任を持たせない人である。

 自分を騙しつつ、ここまで生き残っただけだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る