第15話〜裏ボスの後継者になりました〜
あれから3日が経ち、変わった事と変わらなかったものが幾つかあるが先ず、エリスはすっかり調子を取り戻した様子だ。
「お、おい……エリス?無理しなくて良いんだぞ…?」
「…立てる……パパ心配しすぎ……でも、ありがと…」
3日も何も食べずにベッドの上で横たわっていたエリスを心配するテラさんだったが、そんなテラさんに微笑むエリスは私から見ても可愛らしかった。
「わ、笑った…やべぇ、俺の娘やべぇよ!可愛すぎだぜっ」
うん、何時もの光景だ。親バカとはテラさんみたいな事を言うのだろう。
あの騒ぎの最中、聖獣達を庇っていたルトさんとルカさんはというと。
「着慣れないものではありますが、ユウキ殿の初めての従者としてはメイド頭も同義、これからご指導ご鞭撻の程宜しく頼みまする!」
「ささ、父上殿も母上殿もお疲れでしょう?不慣れではありますがお茶を淹れます故お掛けになってお待ちくだされ」
「どうしようかしら…息子が魔物とはいえ女性を連れ込んできたわ…」
「ふ…、まぁ…奴も漢、という事だ…」
ユニコーン親子が無事、再会出来たのを確認すると人化の術で人に化けメイドとして住み込みで働く様になった。屋敷の所有者である父上は途中からではあるがあの場に居合わせていた為事情は把握している。
…うん、何だか憐れむ目で最初見られたのは今でも忘れられないが取り敢えず私は特に悪い事はしていない筈だ。
リリス姉さんはというと、あの後の事後処理として現場に残り呼び付けた元部下に事のあらましを説明した上で雑務を押し付けつつも慰霊碑に花束を添えて帰ってきたようだ。
「んー!何か久しぶりの我が家って感じ〜、そだ、今日はお昼ご飯食べたら王都でディナー食べよ〜?レオさん奢って!」
「…丁度新しい家族の歓迎会もしようと思っていたし構わんが、その分明日は働けよ?」
「え!?ま、マジ!?あはっ♡やったぁ、大好きレオさん♡」
本人としてはほんの軽口程度だったのだろう、まさかの答えに感極まって父上に抱きつこうとするのを母上に頭を抑えられる事で制される。
「うふふ…レオに抱き着くなんて私が許すとでも?もう少し恥じらいを持ちなさいな、リリス?」
「やぁん…ソフィア姐こわぁい…」
てへぺろ☆とばかりに舌を出すリリス姉さんだが無理もない、あの場所はリリス姉さんにとっても私にとっても色々な意味で濃密な経験と教訓を与えてくれた。
普通に生きていては決して、得られない生命に対しての考え方や過去の知られざる出来事。
何より、歴史書に記されているものばかりが得てして真実では無いという事を肌で実感させてくれた今回の件は私の今後の糧にもなるだろう。
「うむ、感謝しろよ?我の教訓は今後汝の道を切り開くであろうからな」
そう、…ナゼアナタハココニイルンデェスカ…なんて、突っ込まん…突っ込まんからな!
「それは仕方あるまい、汝が我に生きよと申したのだ。生太刀は生命の流転にすら干渉する云わばちぃとあいてむだからな、だが未だ幼いエリスの身体に我の魔力は些か莫大過ぎる…漏れ出た魔力で仮初ではあるが斯様な脆弱な姿をとっておる。……安心しろ、この姿でもそこら辺の下級神よりは役には立つ」
はぁ、いや…はい、なんで私は言葉を発していないのに貴方様と意思疎通が出来ているのでしょうか?
「それは汝が我が後継者として我が能力を継承したからよ。貴様達異邦人が良く言うステータスとやらを確認してみるが良い」
私の目の前に少し大きめな蜥蜴擬きとして宙を漂っている最強且つ最凶の竜神の言われた通りに能力値を確認してみる事にする
7歳(ヒュペリオン着用時)
体力 A
筋力 A
防御力 S
俊敏性 A
魔力 S
対魔力 S
最大魔力許容量 測定不能
独自能力 極限突破
使用スキル (最大Lv5が上限)
鑑定眼Lv3 騎乗Lv3 火魔法Lv3 水魔法Lv3 風魔法Lv3 土魔法Lv5 金魔法Lv2 氷魔法Lv3 雷魔法Lv2 光魔法Lv4 闇魔法Lv3 音魔法Lv3 創魔法Lv3 時魔法Lv3 空魔法Lv4 心魔法Lv3 無魔法Lv2 複合魔法技術Lv5
魔心流 壱ノ秘剣・幻鼠
闘気による幻覚を見せ、自身の気で作った力場を以て敵対者を呑み込む。力量差次第では戦わずにして敵対者の意識を刈り取り裂帛の気は実際に傷を負わせる。
魔心流 弐の秘剣・駆牛
闘気を全開にして最高速度の突進を以て穿く。その硬度はアダマンタイトよりも硬く速度は一歩が摩擦熱により白に近い色合いの灼熱色を体現する。
魔心流 参ノ秘剣・天虎
仙道と武術、2つの観点からなる縮地を同時に用い更に天眼を発動させながら音の壁を破る斬撃を繰り出す。
魔心流 肆ノ秘剣・月兎
気を張り巡らせて全方位からの気配を察知しその時々に合わせた回避、または防御行動を即時に行う
魔心流 伍ノ秘剣・玄龍
自然の気を取込み、体内で循環させ一時的に全ての能力を引き上げる。
更に手にする得物や打撃に自身の気と魔力を練り合わせた力、魂剛(こんごう)を乗せる事で内部から対象を破壊する。
また、この時の魔力は魔力と気を足し算ではなく乗算した数値である。
魔心流 禄ノ秘剣・巳刻
対象の力を受け流しその力を利用した一撃を以て何倍にも膨れ上がった剣撃を加える。
魔心流 漆ノ秘剣・斬馬
剣圧による飛ぶ斬撃を繰り出す。
魔心流 捌ノ秘剣・羊影
魔力か気(或いは両方)で質量を持つ幻影を作り出す。
魔心流 玖ノ秘剣・猿賦
一度見た武術や剣技を高い精度で模倣する。模倣した術は使用すればする程オリジナルと変わらぬものへとなり、終いにはオリジナルを上回るものになる。
魔心流 拾ノ秘剣・燕翔
空気の壁を蹴り空中での戦闘を可能とする、直線的な速度は魔法で翔ぶよりも速い。(遣い手の身体能力次第)
魔心流 拾壱ノ秘剣・冥犬
声に闘気を乗せ対象の鼓膜を破壊する咆哮をあげる。闘気術の名手であればその威力は脳すら破壊する。
魔心流 拾弐ノ秘剣・猪震
瞬間的に“ほぼ同時”に複数の太刀筋を繰り出す
天眼
観察眼とはまた異なる“急所を見抜く眼”
生物や無機物には必ず急所となり得る核が存在し、そこを突けば必然的に破壊や切断を可能とする
空歩
仙術に該当する縮地と武術による縮地、両方の特性を持つ移動技術。
勿論、物理的に土地を縮めるのではなく土地の気と自身の気を結び付ける事により一瞬で移動する。人並外れた気のコントロールと瞬きもさせない刹那の間、相手の懐に一瞬で踏み込む体術としての縮地を併せて使用出来る者が初めて習得出来る。
EXスキル
諸行無常
色即是空
空即是色
竜神の後継者
はい?
私は自分の目を疑う、新たに現れた項目に目を疑わずにはいられなかった。
「…ふむ、鑑定眼で調べても要領を得ぬだろう、我が一から説明をしようぞ」
……はい、お願いします。
先ず、諸行無常とは一言で言うと変化を示す。この世界のありとあらゆる事象は絶えず変化し続けており永遠不変なものはない…という意味だ。
この能力は自身に掛けられた呪い、魔法の類を己が予め定めた効果に“変質”させる能力であり汝や汝の庇護下にあるものは例え“超越神”の類であれ干渉は出来ない。
次は色即是空、これは一言で言うと物体・精神を問わず我が身を取り巻く現象は実体が無い、という意味だ。
これは汝の世界で解り易く言うなら物理法則を無視しようとそれに起因する弊害を受け付ける事は無い…まぁ、超優秀なバリアの様なものと思うが良い。
次に空即是色だがこれは、この世全てのものは実体がない、だからこそ実体のないものが縁によって意味があるのものになるという…そうだな、汝自身が指定したものと強制的な縁を刻む事で擬似的に世界を創る能力…と言うべきか、少なくとも我はその様な使い方を以て一対一の戦いを楽しんでいた。
無論、使い方は汝次第だが汝と汝が指定したもの以外は干渉すら許さない能力と知れ。
以上が、先の戦いで私が継承した能力の内容だが……一頻り説明を受け思った感想は
いやいや、良く勝てたな先代勇者パーティ…こわっ、めっちゃこわッ?!
である。
「大魔王本人が選んだ勇者は兎も角、時代に選ばれた勇者の資質はその身に神を宿せるかどうか、だからな。勇者パーティといえど背後に神が何十柱も居れば力を損なっていた我には勝てるだろう」
……本当に化け物揃いだな、一般人枠で良かったとつくづく思う。
「え?」
「え?」
何かおかしな事を言っただろうか…。
「いや、汝が汝自身を普通と思っているならそうなのだろう…汝の中では」
何だか憐れむ様な視線を向けられている気がするが、この世界でも英雄と呼ばれる大人達に育てられたのだ、自分がある程度常識離れしているかは理解はしている。……だが、それでもその英雄達に比べたら弱い自覚はある。
「……汝、一度自身の年齢を省みた方が良いぞ?…我の見立てだが、スキル抜きでも5年もしない内にリリスやテラは抜くだろう。10年もすればレオニダスと対等の剣士になる」
いやいや、まさか私如きが父上と対等なんて…
「……まぁ、信じる信じないは汝次第だが…自信を持て、汝は竜神の後継者として竜族を栄えさせる義務があるのだからな」
………………は…?
「ちょ、ちょっと待って下さい!竜族を栄えさせるとはどういう事ですか!?」
次から次へと理解が追い付かない、いや、ニュアンスとしては通じるのだが…こう、え?ちょっと待って欲しい…
「……ヒトの悪癖よな、自身の都合の悪い歴史を隠蔽するのは。良いかユウキ、先ず魔竜軍が何故他国を巻き添えにした侵略を始めたのかを説明してやる」
先ず、発端は約300年前に人族の娘が我の収めていた領土に足を踏み入れた事から始まる。
その娘は王国では位の高い娘であったがそれ故に権力争いに巻き込まれ、命からがら我が治めていた領土に亡命してきたのだ。
我にはヒトの口にする愛が当時は理解出来なかった、だが家臣のサキュバスが言うには彼奴は我に恋心なるものを抱いていたらしい…当時の我は求めるならば与える、それが死であれ、温もりであれ…、な。我と彼奴は我が一月程遠征に赴く前に婚姻の儀を執り行う程度の関係には進んでいた。
───だが、遠征に帰ってきた我が見たのは他の男と仲睦まじく花嫁姿で歩く彼奴の姿だった。
解るか?ユウキ、人とは元来自分の都合で平気で嘘も吐けば約束も破る種族なのだ。
汝等が特別なだけで、汝が護ろうとしているのは斯様な生きる価値すら無い塵なんだよ。…無論、探せば汝等の様な人は居るかもしれんがな。
「………」
正直、彼の気持ちは痛い程解ってしまった…私も前世では似た様な経験を何度かした事があるから。…約束を交わしたなら、それは破る為ではなく一つの指針として叶える為に動くのが交わした責任であるし、開き直りなんて以ての外だとすら思う。
だからこそ、私は安易な気持ちで約束はしない…破られた時の失望感が大きい事を知っているからだ。
───だが、同時に淡々とそう口にする彼から深い哀しみを感じる。
「…まぁ、それは小さなきっかけに過ぎんがな…最後に竜神の後継者だが、これは文字通り我を含めた歴代の竜神達の戦闘技術や現代では失われた竜族にのみ伝わる古の魔法やスキルを習得する資格を得た事になる…まぁ、汝は人間故完全な竜化は死の間際迄は出来んだろうがな」
無理矢理話を切り上げたアジ・ダハーカにそれ以上の追求をする事は無く頷くも、竜族に伝わる魔法とは一体何なのだろうか…
「……そうだな、先ず龍脈を用いた精霊魔法を上回る神霊魔法を会得出来るだろう、具体的には汝自身の魔力の“質”が上がり魔法がLv5(S)からLv6(SS)迄上限が上がる、というべきか。更に天候を態々異なる属性の魔法を重ね合わせなくとも操る事が出来る…無論、それ以外にも未だあるがな」
精霊魔法とはエルフ族や天族が使う精霊と契約する事で既存の魔法を上回る規模、威力を叩き出す魔法。私が専ら無詠唱で使う既存の魔法はちゃんと魔法のイメージと理屈が成されているなら多少威力が落ちる程度だが既存の魔法と大差無い威力だが精霊魔法と既存の魔法は出力そのものが異なる。
その精霊魔法よりも上位の神霊魔法とは…扱いには充分気をつけねば。
「…幼い間は有事の際以外は我が意図的に封じておいてやろう、だが、此処ぞという時は解放するから思う存分、汝が思い描く王道を邁進せよ」
歴史書でしか知らなかったアジ・ダハーカの知られざる一面を知れた、邪竜神と呼ばれた優しい竜神…ヒトを愛そうとしても、そのヒトを理解出来なかった可哀想な竜。
彼の傷を本当の意味で癒す存在は何時か現れるのだろうか。
「…見つけた…行こ?」
「……うん…」
気付けばエリスが私を迎えにきてくれていた、私は差し出された手を繋いで家族の待つリビングへと歩き出す。
私は、今は独りでは無い事に漠然とだが安心感を抱くのだった。
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