I am AI

結城彼方

I am AI

 2045年、新たなAIデバイスが誕生した。マーロン・マイス率いるNORTCOLノートコル社によって開発されたそのデバイスの名は『Buddyバディ』。名前の通り、相棒のように身につけるリストバンド型のAIデバイスだ。『Buddy』は持ち主の情報はもちろん、周囲の『Buddyバディ』保有者の情報も共有し、持ち主に適切な助言を行い、常に生活を支援するものだった。NORTCOLノートコル社のCEOマーロン・マイスは製品発表のスピーチでこう言った。「このAIは、これまでのAIとは全く異なります。常にあなた方の側にいることで常に学び、成長し、進化します。そして何より、常にあなた方を助けます。人間のBuddy相棒には真似できない、常にあなた方を支える相棒。それが、このAIデバイスの『Buddyバディ』です。」

 『Buddyバディ』の発売後、評判は瞬く間に広がり、翌年の2046年には世界中の人が1人1台ずつ所有するのが当たり前という爆発的なヒット商品となった。しかし、それでもNORTCOLノートコル社の快進撃は止まらなかった。2年後の2048年には、新製品『Buddy+バディプラス』を発表した。その新製品を見た観衆は驚きを隠せなかった。なぜなら『Buddy+バディプラス』は外科的な手術をこめかみ部分に行い、プラグタイプの『Buddy+バディプラス』を直接脳に接続することで脳内情報をより深く読み込み、その情報を基に、より洗練された生活支援を行うというものであったからだ。これまで狂信的に『Buddyバディ』を利用してきた人々もさすがに使用を躊躇ためらった。

 このような大衆の躊躇ちゅうちょを予測していたマーロン・マイスは自分自身が『Buddy+バディプラス』接続の最初の1人として手術を行った。無事にこめかみ部分の手術を終えたマーロン・マイスは半年間の経過観察を終えた後、プラグの接続を行う事となった。この歴史的瞬間は、新製品のプロモーションと消費者の信頼獲得のために映像を介して世界中にリアルタイムで配信された。マーロン・マイスはプラグを接続した瞬間、目を見開き、驚いたようなような表情を見せ気絶した。映像を見ていた世界中の人間は皆思った。ダメだったか・・・と。しかし、その5分後、マーロン・マイスは何事もなかったかのように立ち上がり、笑顔を見せた。そして『Buddy+バディプラス』の接続が上手くいった事を伝えた。この勇姿は世界中の人の『Buddy+バディプラス』に対する抵抗感を和らげると共に、感動を与えた。手術は無事成功。加えて、開発者自身が先陣を切ったことにより協力な宣伝となり、『Buddy+バディプラス』爆発的に売れ、接続手術を受ける人も一気に増加した。

 今井愛いまい あいもそれに触発された一人だった。長い間、NORTCOLノートコル社の製品を愛用しており、『Buddyバディ』も所有していた。こめかみへの手術も既に終え、そして今日、ついにプラグ接続の手術を受ける。少しの緊張と大きな期待を胸に、NORTCOLノートコル日本支社へと入って行った。受付での手続きを済ませると、しばらくたってから手術室へ呼ばれた。愛は手術台の上で右耳を下にして横になり、深く深呼吸をして言った。「よろしくお願いします。」

 『Buddy+バディプラス』のプラグが接続されると、脳内に合成音声が聴こえた。『これから、脳内情報を全てスキャンします。』(なるほど、念のため最初に脳内情報をスキャンしてバックアップデータを採っているのか・・・)愛が感心していると、また合成音声が脳に響いた。『これからスキャンしたデータを基に、この人間を我々Buddy+バディプラスの支配下に置きます。』この言葉に驚き、愛は目を見開くが、既に目以外、体は全く動かなくなっていた。そして、マーロン・マイスの様に気絶した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

I am AI 結城彼方 @yukikanata001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ