三話 再生
リアンが口にしたその言葉で、倫は背後の異常事態に気づくことができた。
少年は倫の体を挟んだその向こうで、散らばった黒いものが地面から宙へ浮き、塊になっていくのを見た。
黒い手の塊。
倫が双剣で切り落としたはずのその手は、すっかり元の通りになってしまっていた。切り裂かれていたはずの胴体も全部。
少年は当然のこと、とどめを刺したと確信していた倫は目を見開いて、それでも手だけは再び双剣の柄を握っていた。
黒い手が少年を叩き潰そうと迫るのを、倫は引き抜いた双剣で弾き飛ばした。
それと同時に「あたしが引きつける」とリアンが駆け、とても大剣を持ったままとは思えないスピードで黒い手の怪物へ飛びかかった。
倫が「わかった」と返事をして、少年を抱え上げ肩に担ぐ。空いた方の手で、通信機で報告をする。
「こちら特討一番隊、対象が再生能力を有していた。至急応援求む!」
了解の返事がひどいノイズの音でよく聞こえない。こんな時に不具合か?と焦燥感が煽られる。
念のためもう一度同じことを述べてから、聞こえていることを願ってもう一つ報告を残す。
「それと、生存者を一名保護した。ただちにそちらへ向かう」
この通信が相手に届いていない可能性もある。倫は太腿に下げられたホルダーから銃器を取り出し、モードを「信号」に切り替えて空に向かって発砲した。
上空で光が弾ける。これで通信が届いていなくても、こちらの要求は伝わるだろう。
リアンは怪物の攻撃に大剣で応戦しながら、こちらを見ずに言う。
「そこの森を抜ければ救護班の待機場所、その子と早く行って」
「了解、死ぬんじゃないぞ!」
そう言って倫は少年を抱え、森の中へと走り出した。
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