第5話 2016年11月18日(金) 第580回放送分オープニングより

 「まあこの番組、ナウなヤングが聴いているわけじゃないですか。しかもモテない連中が。今の発言でほんの少ししかいない女性のリスナーを一斉に敵に回したと思いますけど、炎上とか気にせずに続けます。ごめんほんとは凄い怖いです(笑い)。いやでもね、ほんとにごくごくたまーにですけど、恋愛相談、いや恋愛ですらないか。メールに一生童貞かもしれませんとか、このまま彼女が出来ずに人生が終わりそうですみたいな内容の奴も来るんですよ。なんで、十代若者たちのカリスマである俺が断言しますけど、運です!はっきり言います、自分を好きでいてくれるマニアもしくは重度の縛りプレイ愛好者を探してください(作家笑い)。確かに俺は結婚してますけど、そんなのほんと偶々お嫁さんが度の超えたもの好きだっただけだからね。本人には確認してないですけど、たぶん売れないミュージシャンの奥さんになるプレイじゃないとオーガズムに達せない体なんだと思うんですよ。そうじゃないとたぶん俺と結婚しようなんて思わないからね。しかもこの番組が始まる前にだよ?まあオープニングの曲の後もし俺がしゃべってなかったらお嫁さんへの謝罪電話のせいだと思っててください」


 (2020年11月下旬に行われた斎藤権氏への取材音声より抜粋)

 「…はいフルさん、いえフールス古谷さんとは番組が始まった十五年前からずっと一緒に仕事をしていました。あ、フルさんでいいですかね?すいません、普段古谷さんとかフールスさんとか呼んだことないもんで…。元々フールス古谷って名前もラジオ始める時に付けた名前なんですよ、あ、知ってます?有名ですもんね。帯の番組始めるにあたって、当時のスポンサーがどこかの曜日だけでも自分の所の商品名が入った番組名にして欲しいっていうので…すいません脱線しちゃって。

 出会いですか?これも色んな所で話してますけど、当時作家見習いっていうかバイトだった僕が入社したての松田さん、ディレクターと外に飯食いに行ってた時に、たまたまフルさんの路上ライブ見たんですよ。いや、あれライブって言っていいのかなあ…今もそうですけど、その時フルさんほんとギターも歌も下手くそで(笑)。だから路上ライブも全然ラジオと一緒でしたね。なんか文句言いながら客と言い合いしてるみたいな。それを最初に二人で見て、なんだか変な奴がいるなあって感じだったんですけど。二回目か三回目くらいに見かけた時、松田さんがあいつラジオでしゃべらせたら面白いんじゃないかって言いだしたんですよ。正直え?って思いましたね。

 その頃は松田さんと二人で深夜の枠で三十分の番組を準備してたんですけど、僕は当時コンビの芸人がいいんじゃないかって言ってたんですね。でも松田さんは一人しゃべりの方がいいって意見で。中々いいタレントが見つからなかったんで、まあ当時も今も深夜ラジオのギャラなんて格安ですし。今ならまだしも当時はSNSで拡散とかラジオフリーで全国にアピールって時代でも無かったですから。

 要するにどっちにしろ成り手が見つからない時期でした。とはいえ路上でヘッタクソなギターで歌ってるミュージシャン気取りのド素人をいきなりラジオのパーソナリティに抜擢するのは危険過ぎやしないかなって。確かに昭和の頃はそうやって有名になった人もいたみたいでしたけど。でも松田さん的にはピンときたらしいんですね。そこで路上ライブ終りに声かけてから…まさか十五年以上も付き合うことになると夢にも思いませんでしたね。

 こんなまとまりのない話でいいんですか?大丈夫、ならいいですけど…正直一月以上経ったのに、まだフルさんが死んだって全然ピンと来てないんですよ。これもあの人の悪ふざけなんじゃないかなって、やりかねないからなあ。ラジオが面白くなるためだったら、何でもやってましたからね。僕も自分の携帯電話何度壊されたか(笑)。一度なんか本物の鷹匠呼んでどっちの携帯に食いつくかみたいな企画で壊れましたからね。ホント、バカな事思いつく人ですから…。

 ずっと考えてるんですけど、フルさんが本当は五十過ぎの人で名前も経歴もデタラメっていうのは、全然あり得るなって思っちゃうんですよ。でも、奥さんの事が全部ウソっていうのがさすがに信じられないんですよね。いや、根拠とかないんですけど…いちおう長年一緒にいた人間のカン、かなあ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フールス古谷のフルフルフライデー さかえたかし @sakaetakashi051

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ