Hさん、42歳、主婦、腹痛が辛い

 12/5 来院。

     腹痛がする。

     二日ほど前から断続的。

     当人は、原因に思いあたりがない。

     熱はない。

     そのほかの症状もない。

     いままでに腹痛が続いた経験なし。

     今朝、8時ごろに少しだけ強い腹痛に襲われる。

     排便後も、腹痛が改善しなかった。

     現在は、落ち着いている。

     お腹を検診したところ、ガス溜まりの可能性。

     お腹の働きの改善を図る薬を処方。


 12/7 子供の風邪の件で来院された。

     当人は、「調子がよくなりました」と答える。

     薬の効果アリ。


 12/28 来院。

      お腹が動いた、という。 

      12/27の夜に強い腹痛に襲われる。

      その際、お腹に右手で触れていた。

      その右手に、ぐいとお腹がぶつかってきた、という。

      まるで、お腹が自ら動いたようだった、という。

      便が腸内を動いた可能性を指摘するも、

      「そんな感じではなかった」と答える。

      念のため、前回に処方したのと同じ薬を処方。


 12/30 長引いている子供の風邪の件で来院された。

      当人は、「調子がよくなりました」と答える。

      薬の効果アリ。


 1/12  午後11時ごろ、救急外来に運び込まれる。

      寝室で悶えているところを、夫が発見し、救急に通報。

      当人は、意識が混濁していた。

      コミュニケーションが取れる状況ではなかった。

      ただ、「お腹が痛い」と繰り返していた。

      鎮痛剤を投与し、ひとまず、落ち着かせた。

      詳しく検査したところ、腸捻転の可能性が浮上。

      それも、数えきれないほどの腸捻転であった。

      落ち着いた当人に事情を聞いたところ、

      ここ一週間は排便していない、という。


      その場で手術が実施された。

      麻酔をかけて開腹したところ、

      腸が複雑に捻じれていた。

      まるで、バルーンアートのようだった。

      捻じれている腸は文字を浮かび上がらせていた。

      『痛』と。

      複雑な手術は長時間に及び、無事に成功した。


 1/22  来院。

      術後、経過は順調。

      複雑に腸捻転が発生していた原因は不明。

      「うちの子がバルーンアートにはまっている」と当人はいった。

      わたしの腸で誰かが遊んだんだ、と。

      その可能性は低いはずだが、いずれにせよ、原因は不明。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る