Zさん、27歳、営業職、興奮が止まらない

 3/13 来院。

     「興奮が止まらない」という。

     道端で女性を見ると、すぐに男性器が屹立する。

     必死に抑えようとするが、抑えることができない。

     異常性欲。

     承諾なしに女性に触れるなどの行動には及んでいない。

     「どれくらい女性が近くにいると、興奮しますか」と聞くと、

     「視界に入ると、それだけで抑えられなくなります」と答える。

     ここ一週間で発生。

     それ以前は、異常性欲はなかったという。

     精神を安定させる薬を処方。

     一週間後にふたたび来院するように告げる。

     経過観察。


 3/20 来院。

     薬の効果なし。

     女性を視界に入れると、男性器が屹立する。

     「いま、わたしが視界にいますが、興奮していますか?」と聞くと、

     「ごめんなさい」と謝罪。

     「必死に抑えようとはしているんですが、できません」

     年齢や見た目などは関係ないという。

     女性一般に対して、症状が発生する。

     そのほかの症状はなし。

     妹と実家暮らしだが、妹に対しては同様の症状はない。

     薬を増量する。

     経過観察。


 3/27 来院。

     薬の効果なし。

     女性が視界に入ると、ぐらりと眩暈がする。

     ぐらぐらと意識が揺らぎ、卒倒しそうになる。

     半径2メートル以内に女性がいると、無意識に手が伸びそうになる。

     現状では、意識によって、コントロールできる。

     承諾なしに女性に触れたことは、いまのところ、ない。

     明らかに症状が悪化している。

     今後、社会的タブーを犯す可能性がある。

     原因は不明。

     当人によれば、長年連れ添っていた妻と離婚したばかりだという。

     現在は、マンションを出て、実家暮らし。

     因果関係は不明。

     異常性欲を専門にする医師への紹介状を書いて渡す。


 3/29 紹介状先の先生から連絡が入る。

     「性犯罪に発展する可能性が高い」という。

     早期治療として、性犯罪予防の講習を勧める。

     が、当人は、それを断った。

     「しかし、珍しい」ともいう。

     当人は、興奮対象が女性一般である。

     「多くの場合は、興奮対象は、だいたい限定されている」という。


 3/31 驚いた。

     通り魔事件のニュースで、当人が犯人として取り上げられていた。

     駅前を歩いていた女性3人を殺傷。うち1人が死亡、2人が重傷。

     警察の調べに対して、「視界に入ってくるのが鬱陶しかった」と語る。

     異常性欲のせいか?

     捜査資料として、以上のカルテを警察に提出する。

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