Wさん、35歳、自営業、手が勝手に動く

 3/23 来院。

     右手に痙攣の症状。 

     ぴくぴくと痙攣。

     昨日の夜から、断続的に続く。

     診察上、確認。

     痛み、なし。

     そのほかの異状、なし。

     本人に聞く限り、毒物を摂取した可能性は低い。

     原因不明だが、悪性のものとは思われない。

     ひとまず、安静にする。


 3/25 来院。 

     症状が悪化。

     右手がぴくぴくと痙攣。

     以前より、震えが大きい。

     「断続的ではない」と主張。

     常時、震えている状態。

     痙攣を抑える薬を処方。

     

 3/26 他病院で、脳の検査。

     検査結果に異状なし。


 3/28 来院。

     症状がさらに悪化。

     薬を服用してからも、痙攣は継続している。

     「まともに文字を書くことができない」と主張。

     仕事もままならず、休んだという。

     常時、右手が大きく震えている状態。

     「それだけでなく、勝手に動く」と主張。

     痙攣とは違い、意識に反して手が動く。

     診察上、確認できない。

     脳に異状が確認できない以上、原因不明。

     ひとまず、安静にして、痙攣が収まるのを持つ。

     べつの薬を処方することに。


 4/4 来院。

    薬の影響か、痙攣が収まった。

    診察上、それを確認。

    そのほかの異状も確認できない。

    しかし、本人は、「勝手に手が動く」と主張。

    以下、本人による説明を要約。


    4/2の朝、駅のプラットホームで待っているとき、手が動く。

    目の前にいた女性の背中を押してしまった。

    危うく、線路に落ちるところだったが、女性は、運よく踏ん張る。

    本人は、走って逃げきった。

    

    そのときの行為について、「勝手に手が動いた」と主張。

    本人を信用するならば、無意識に手が動いたということである。

    薬の副作用の可能性は低い。

    一連の症状のひとつかもしれない。

    継続的に、痙攣を抑える薬を処方することにする。


 4/6 当院に、本人から電話が入る。

    「料理をしているとき、右手が勝手に動いた」と主張。  

    包丁を握っていた右手が勝手に、自分の胸に向いた。

    左手で押さえたので事なきを得る。

    原因不明。


 4/8 本人、死亡。

    包丁を胸に刺した状態で見つかる。

    警察による調査では、自殺と判定された。

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