写真の中の目が動く
わたし、幽霊とか信じてなかった。べつに幽霊がいたっていいとは思ってた。
でも、いまのところ、幽霊が実在することの証拠はないし、幽霊が実在することを証明する確かな理論もないでしょ? それにもかかわらず、幽霊を信じるのって、どうなの。怪奇現象だって、同じでしょ。
まあ、ぐちゃぐちゃ言って、敵をつくるのも嫌だし、静かにしとこ。
みたいな感じだったわたしは、いままで、「霊感がある」とか言う人のことを、表向き、信じているふりをしてきた。心の中だけで、怪しんでいた。そのことについて、お詫びしなければ。マジで、ごめんなさい。幽霊って、本当にいるのかもしれない。奇妙……というか、面白い出来事が昨日あったの。
あのね、昨日の朝のことなの。わたしの自室にはひとつ、写真が飾ってあるの。中学のときの部活で撮った写真。わたしを含めて、仲良しだった友達3人で肩を組んでいる写真。めっちゃ思い出のやつ。毎朝、その写真を見ていたんだけどね、その日も、その写真を見たら、その写真の中のわたしと目が合ったの。
驚かないわけにはいかないでしょ?
南極かと思うくらい寒くなった。だって、写真の中のわたしは斜め上のほうを見つめているはずだったから。真正面から写真と向き合っていたそのとき、写真の中のわたしと目が合うはずなんてなかったのに。
決死の思いでわたしが身体を動かすと、さらに、驚くことが起こった。写真の中のわたしの目が、わたしの動きに合わせてついてきたの! なに、これ、ってなったよ。ガチめにヤバいでしょ。幽霊とか怪奇現象とか、もう信じるから、やめてくれよな。そういう状態やん?
わたし、恐ろしくなって、部屋中を歩き回った。怖いやん! どうしよう、どうしよう、ってなって、ぐるぐる歩きつづけた。パニックになってたせいで、部屋を出ていくって選択肢はなかったみたい。その間も、ずっと、写真の中のわたしの目が追ってきた。
気づいたときには、わたし、ベッドに寝ころがってた。恐ろしすぎて気絶してたみたいだった。仰向けの状態だった。そのとき、わたしは、恐るおそる頭を上げて、写真のほうを見たの。そしたら、びっくり。
写真の中のわたしも、後ろ向きに倒れてた。わたしが歩きつづけたせいで、目を回したみたい。
けっこう、うっかりしてるんやな? 笑っちゃった。その一件があってから、写真の中のわたしが睨んでくるようになったんだけど、デリケートな部分を傷つけちゃったのかもしれない。なんか、カワイイ。
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