目覚まし時計が真夜中に
最近、ユーチューブで流れてくる動画に目を通していたら、「真夜中に電話が鳴るのには気をつけたほうがいい」という動画と出会った。その動画が言うには、真夜中に電話が鳴るのは、多くの場合、その家の人が寝ているかどうかを確かめるためだという。
だから、真夜中の電話には出ないといけないんだ。眠たいからって、そのままにしておくと、寝ていると思われてしまう。
なんで、そのままにしちゃダメかって? そんなの、決まってるじゃないか……。
ともかく、僕は、その動画を見たばかりだったから、昨晩、チリリ、と大きな音がしたときは心臓が止まるかと思った。チリリリリリ、という大きな鈴のような音で目を覚ました。真っ先に、真夜中の電話のことを連想したわけだけど、鳴っていたのは電話じゃなかった。
目覚まし時計だった。そのとき、目覚まし時計の針は真夜中の3時を示していた。そんな遅い時間に目覚まし時計を設定した覚えはなかったから、きっと、間違えたんだろう。そう思いながら、設定を直して、また寝たんだけど、またすぐ、チリリリリリ、って鳴り出した。
また、目覚まし時計だったよ。僕はまた設定を直したのだけど、そのときには頭が醒めてしまい、寝ようにも寝られなかった。仕方がなく、ダイニングキッチンまで行って、水を飲んだ。明日は仕事だし、どうしようか、と途方に暮れていた。僕は呆けた人のようにしばらくダイニングキッチンに佇んでいたんだ。
心臓に悪い出来事が、すぐに起こった。プルルルルル、って室内にある電話が鳴りだしたんだ。僕はまた真夜中の電話のことを思いだして、すぐに電話に出た。はい、って出て、名前は名乗らなかった。沈黙が続いた。向こうからはなにも返事がなく、あの、って聞こうとしたら、ブチって切れた。
不気味だった。僕は、ともかく部屋まで戻って、布団を被り、目を瞑って、眠れるように祈った。気づいたら、眠っていて、今朝になっていた。これが昨晩の出来事。
ここまでだったら、まだ不気味なだけで済むはずだった。数日もすれば記憶はあやふやになり、一か月もすれば、頭から消え去っているような、些細な出来事だった。
でも、今朝になってから、ツイッターのニュースを見て以来、この出来事は記憶に刻まれてしまった。ツイッターでは、ある強盗殺人事件のニュースがあったんだけど、それ、僕の家の隣だったんだ。
犯人の男は、その家に電話をして、住人が眠っていることを確認してから、家に侵入した。そのとき、住人の女性が起きてしまったため、咄嗟に殺害したのだという。犯人の男は、こんな供述をしているらしかった。「最初に、その隣の家を狙って、その家に電話をしたが、その家の住人が電話に出たから、そこはやめておいた」と。僕の家のことだよ。今朝のうちに警察官が「昨晩、電話に出られましたか?」と確認しに来たから、間違いない。
僕は、昨晩、電話に出ておいて、よかったわけだ。出ていなかったら、不審者に侵入されていた。
でも、目覚まし時計の故障がなければ、僕は起きていなかったから、故障がなければ、犯人の男は僕の家に侵入していたんだよ。運がよかったとしか言えない。もしものことを想像すると、今夜からは眠りが浅くなりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます