6-11 武器づくり

6-11 武器づくり



 さて、とりあえず迷宮の探索が予定に入ったが、他にもやることはいくらでもある。


 夫たるもの、妻の相手は義務である。彼女たちをかまわないといけない。


 だがそれはそれとして武器づくりは優先順位が高いだろう。


 俺は左腕の魔導器を起動させる。


 部屋には他の人間はいない。

 なぜってほとんど部屋いっぱいにシステムが展開してしまうからだ。


 俺の体が座ったような姿勢で固定され、周囲に力場で出来たモニターだのコンソールだのが展開する。

 ほかにも砂時計のような機関とか、タンクのようなものとか、うねくる管のような機関とかいろいろなものが展開する。


 これのおかげで結構広い工房が必要になるのだ。


 大昔の人はこういったシステムを使っていろいろなものを作っていた。


 これは古代王国で使われていた練成システムそのものだ。

 俺の魔導器にはこのシステムが消えない焼き付けのように刻印されている。


 ほかにもいろいろな魔法がセットされているがそれはコンピューターデータのようなもので、書き込むこともできるし、場合によっては消すこともできる。


 だがこのユニットだけは構造に組み込まれていて決して消えないものになっている。


 データー的、力場的に展開されるこの練成システムだがものとしてはハード的なものなのだ。

 金属の練成のみならず薬品の生成もできる優れもの。

 まあ、金属の練成にも実にいろいろな薬品が使われるからね。


 このすごいところはまず形から入ることだろう。


 まあ、なんかダメだろ? と思える話だが、決してそうではない。


 武器を作る場合形を決め、デザインを決めてしまえるのだ。

 さらに何もないのに武器のバランスなどを決めてしまう。


 この条件を設定して、そのうえで素材の配置を計算し、分解、構築をすることでアイテムを作り上げるのだ。


 今回の武器づくりは特殊な素材は使わずに手持ちのものでできるので手間はない。

 このシステムを使う際に一番時間がかかるのが素材集めなんだよね。


 このシステムのすごいところはものすごく使いやすく、ものすごく処理の速いコンピューターのようなものだというところだろう。


『頭の中に在るときはどんな作品も名作だ』


 という言葉がある。

 これは本当のことで、イメージというのはものすごくよいものなのだ。


 だがそれはものすごくあやふやで、そのあやふやな部分がイイカンジの想像で補われている。

 これをイメージ通りに出力するには訓練と才能が必要だ。


 だがこのシステムはイメージをあやふやなまま形にしてくれる。


 なのでそのあやふやさを俯瞰しながら、少しずつイメージを固めていくとかなり精巧な、そしてイイカンジのデザインが出来上がる。

 この時の干渉も、ここのところをもうちょっとこんな感じで…というあやふやなものでいいのだ。


 頭の中の実態のないイメージが、イメージ通りに形になっていくと考えればいい。

 この時に恐ろしいことに武器なら武器の計算式のようなものがあって、構造的に無理な構造は実現しないようになっている。

 逆に言うとなんとなくいい加減なイメージが実現可能な形に整えられていくのだ。

 そして計算されつくした『機能』というのはそれ自体が美しい。


 多分完成したデザインは最初の頭の中の物とは違うと思うのだが、それでもなんかイメージ通りにいいものができた。みたいな気になる。


 人と機械のコラボである。

 まあそれを自分のデザインといっていいのかな? みたいな気はするが、このシステムはほとんどのクリエーターにとって夢のシステムだろう。


 というわけでまずデザインを作る。

 デザインは日本刀だ。これは二人の希望のデザインになる。


 流歌の方は長めで反りの大きなデザイン。まるで弧を描くように反っていて切断力がありそうだ。


 翔子君の方は幅広で肉厚で少し短め刃の部分に細かい波刃が付いているデザインだ。

 これは特殊な素材を使わないと手入れがものすごく大変なのだ。研ぎに出したりするとものすごくお金がかかる。


 まあ、うちの連中の刃物に採用された攻撃力の大きいデザインだが魔鋼で作るとメンテが大変だったりする。

 だがそれは計画のうちだった。

 メンテナンスをしようとすると俺を頼るのが一番効率がいいからね。


 彼女たちとのかかわりをある程度維持しようという思惑なのだ。


 ん? 流歌? あれはいいんだよ、身内だから。いろいろ無理がきくからね。


 さて、今日の作業はここまでにしておこう。


 ◆・◆・◆


 さて、女というのは集団になると強くなる。


 いやー、うちの新人二人はなんというかすでに奥さんだった。うん、行動がね。主に精神的に俺の嫁なのだ。


 女の子は甘えてくれてかわいいよね、でもね。三人にめっちゃ甘えられるとすっごい微妙。

 なんか悪いことをしているような気になるのだ。

 じゃれてるときについおさわりとかしちゃうとね、なんか…

 こういうのなれるのかな?


 無理じゃね?

 でも触っちゃう男の悲しさだよ。


 ハーレムって聞こえはいいけど、あんまりいいものじゃないと思う。

 いや、昔の王様とかはね? 権力あって女を黙らせられたし、子づくりが仕事みたいなところもあったろう。

 女の立場が弱いと普通の男がイメージするようなハーレムになるのかもしれない。

 だけどここの女性は強い。


 王国において女は男の従属物ではないのだ。


 それに複数の女性を抱えると嫁同士の関係にも気を使わないといけない。

 不公平がないようにしないと不和の種になるから。

 男と女の関係よりもむしろ嫁同士の関係が大事なのだ。

 そして男はその関係を守るために腐心しないといけない。

 いやー、なかなか。


 それに欲求ではなく義務としてのセックスがそこに存在するのだ。

 もちろん愛が一番だ。だが義務というものもそこには存在するのだ。

 普通の夫婦でもそういう部分はあるのだろうと思う。

 男は戦わないといけないのだ。


 だからハーレムというのは結構大変だと思う。

 特にね、幸せにしてやりたい女が複数とか、かなり甲斐性が必要だと思う。


 やっぱ人間というのは相互の関係が良好かどうか、それが一番大事だと思うよ。


「おー、こっちこっち」

「待っていたでござるよ~」


 とその大変なものにあこがれる勇者(いろいろな意味で)が元気に手を振っている。


 どんなことでも夢見ているときが一番楽しいのだと彼らはまだ知らない。


 彼らは活躍して女にもてれば何人もの女とラブラブになって『幸せに暮らしましたとさ』というエンディングが来ると信じているのだろう。


 俺が不幸か? というと決してそうではないが、かなり幸せではあるのだが、あれはかなりバイタリティーが必要なのだよ。

 うん。

 あれ、気が付いたらもう一人いる。


「あっ、こちら今日、回復役をやってくれる『フリートヘルム君』だ」


《勇者たちと一緒に来た帝国の貴族でありますな》


 あー、そういえばそうだった。確か子爵だか何だか?


《プルーク子爵家のフリートヘルム君でありますな》


 そうそうそうだったそうだった。

 しかしそれが何で?


「いやー、このメンバーだと回復魔法がないだろ? こいつはそういうの得意なんだよ」


「それに話のわかるやつでござる。ちょっとお願いしてきてもらったでござるよ」


 ふむ、さて、どういう役どころのヤツか…

 邪魔にならないといいけどね。


「よーし、ハーレム目指して頑張るぞ!」


「「おーーっ」」


 高橋君の号令に残り二人がこぶしを振り上げる。

 あれ? つまりこいつも同類か?

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