6-09 ルトナの罠

6-09 ルトナの罠


「ディアちゃん。起きて」


 寝室で一人寝ていた俺は柔らかい声に揺り動かさせて目を覚ました。


 寝室は六畳間ぐらいの部屋に柔らかい敷物を敷き詰めて、掛け布団を人数分配置した部屋自体がベッドのような作りになっている。

 これは獣人族の生活様式で、家族はみんな一緒に眠るという形式のものだ。


 家族というのはつまるところ群れのことで、一頭のオスとその配偶者たるメスとその子供達のことをいう。

 子供のころは俺たちもシャイガさんエルメアさんと団子になって寝ていたのだけど、俺とルトナが性的な関係を持ってからは独立していた。


 つまり今度は俺とルトナが中心となって別の群れをつくらないといけないというわけだ。


 実をいうとルトナがやたら俺のハーレムを作りたがるのはこの影響がある。


 エルメア母さんもシャイガ父さんに何とかハーレムを作らせたい。他にも何人か女の人と子供が欲しいといっていたのだが、その理由は寂しいからだろう。と今は思う。


 俺たちが独立するとエルメア母さんはシャイガ父さんと二人きりで、それは仲睦まじくやってはいるのだが、やはり群れをつくる性質のある彼女にしてみると寂しくて仕方ないらしい。ついでにプライドも満たされないようだ。

 なのでものすごくルトナをあおってくれたのだ。


 だが地球育ちの俺としては奥さんがたくさんいるのはなかなか居心地が悪い。


 いや、変な言い方だが、悪い言い方だが、愛と性欲は別だと思う。

 例えば俺はルトナという嫁がいて、毎日不足なく欲求を発散しているけど、それでもいい女を見ると『おおっ、やりたい』とか思わないわけではない。


 ルトナと離れているときにプロの人にお相手してもらったこともあったりするのだ。すっごくかわいい子だったから。


 ルトナがいてもほかの女の人と性行為はできるのだ。だが変なもので奥さんが複数いるというのはなんかすわりが悪い。非常に良くない気がするのだ。

 背徳的な何かが罪悪感的な何かをチクチクと…


 というわけでルトナの頑張りを無視してこの部屋で寝ているのはおれとルトナのふたりだけだったりする。

 まあたまに教会のチビたちが遊びに来たりするが、これは本当にチビなので“可”なのである。


 だからまあ、普段はルトナはすっぽんぽんだったりするのだが今はちゃんと服着ている。なんでか? なんて思う。


「ほら、勇者二人にいたずらするんでしょ?」


「ああ、そうだった…って、いやいやいたずらじゃないよ。ちゃんとした仕事だよ」


 つまり勇者とこの世界をつなぐコネクターとなる魔法陣を刻印するということだ。

 決していたずらじゃない。


「でもお酒で眠らせた女の子の体に落書きするんだから…」


「そういう言い方をされるとまるで性犯罪者だ!」


 これは神聖な仕事なんだよ。

 というわけで忍んできました我が家の客間。


 二人は服を着たまま眠っている。

 二人を起こさないように静かに…静かに…


「二人ともよく寝てるね」


 きゃーっ。静かにと思っていたらルトナさん普通にしゃべってます。


「大丈夫よ、二人とも完全に酔いつぶれていたからちょっとやそっとじゃ起きないわ」


 ルトナはそういうと二人に近づき無造作に二人を脱がせにかかる。

 というか普通の服だしかなり寝乱れているから露出は多いんだけどね。


「どこにするの?」


「うーん、できれば目立たないところがいいんだよな…」


 刻印自体は魔法陣のようなものを魔力で構築して打ち込むというもので、陣自体は世界とのコネクターなので魔力を消費したりとか本人の魔力を阻害したりとかはしないらしい。

 それどころか世界の力の受容体となるので健康にいいとかの効果が見込めるらしい。まあほんの少しだけどね。


 ただあざのような目立たないものではなく、はっきりした紋章エンブレムのようなものなので、小さくても下手に打ち込むと簡単に見つかる。


「こことか?」


「やめなさいはしたない」


 ルトナさんが眠っている翔子君の片足を持ち上げてみせたりしている。パンツ丸見えだ。


「確かに足の付け根、内側というのは見つかりにくいよな…」


 小さい紋章だから誰かに股を広げて観察でもさせない限り見つからないと思う。


「ううん、女の子だから直接胎内に」


 ぺちん。

 とりあえず軽くひっぱたきました。下品すぎる。


「じゃあ、前は? 毛の中」


「・・・! おお、その手があった」


「あっ、名案? じゃあ」


 といってパンツを脱がせにかかるルトナさん。ぱないっす。てかそうじゃねえよ。

 もう、本当に発想が下ネタなんだから…


「そうじゃなくて髪の毛の中でいいでしょ」


 魔力で皮膚に直接書き込むから頭でも問題ないし、しかも女の子だ。丸坊主なんてまずなんないだろう。

 であればまず見つからない。


 俺はちゃっちゃと後頭部にハンコを押すように指先ぐらいの刻印をして、作業を済ませた。

 これでこの二人がこの世界の穢れとなることはないだろう。

 一先ずめでたしめでたしだ。


 ◆・◆・◆ side ルトナ


「どうでした?」


「うん、うまくいったよ。中途半端な時間だからね、眠るのにいっぱいどうぞって言ってディアちゃんの好きなお酒を飲ませてきた」


 私は作業を終えて部屋に戻るディアちゃんにお酒を進めてみた。

 酔っぱらうような飲み方はしない人だけど、ディアちゃんは父さんの晩酌の付き合いなんかでそれなりにお酒は好きだったりする。


 できればえっちになるような薬を飲ませたかったんだけど、ディアちゃんてばほとんどありとあらゆる状態異常が効かないんだよね。

 でもお酒は別。

 多分意識的なものだと思うんだけど、お酒で楽しくなるために酔わないという能力は使っていないんだと思う。


 特にほろ酔いでじゃれ合うのは悪くない行為だとおもう。ディアちゃんも大好きだよ。


 口移しでお酒の飲ませ合いをしながら軽くエッチなことをして、ほどほどの所で抱き合って眠る…というところで部屋を出てきた私なのだ。

 だから私の格好はいろいろな意味でものすごくエッチだと思う。


 その証拠に別の部屋で待っていたサリアとクレオは私の姿に顔を赤くしている。

 ついでにもじもじもしているよね。


 ディアちゃんもここら辺がわかってないんだよ。女の子だって生身の人間なんだから性欲もあるしも身体がうずくときもあるのよ。

 男の人と違うのは誰彼構わず。というのがないところね。

 でも逆に発情の相手が近くにいると余計に燃えるのよ。


 さあ、二人とも、そのままだとにおいでばれるかもしれないから一口お酒をひっかけていきなさい。


 私は二人を連れて寝室に忍び込む。


 私はどうしてもディアちゃんのハーレムが欲しいのだ。

 家族はたくさん。これ大事。

 奥さんが三人で一人が二人ずつ子供を産めば一〇人家族。素敵。


「でぃ~あ・ちゃん。しよ」


 むっふっふっ、ディアちゃんは優しいから半分寝ていたもちゃんと触ってくれるんだ。

 わたしがちゃんと誘導してあげないとね~。


 ちゅっ♡


 夜は長いのよ~。


 ◆・◆・◆ side ディア


 目が覚めると人肌のぬくもりがあるというのはいいと思う。


 丸くて柔らかくてとても安らぐ…

 俺は前にある丸いものをなでさする。


「るとな~」


 あれ、でもちょっといつもと感触が…


 そしたら後ろの方からなにかがばさって…あっ、これはルトナのしっぽだ。

 すっごいもふもふでいいんだよね。


 て、ちょっとまて。

 なんで前に女体があって、後ろにしっぽがあるんだ?


 一気に覚醒する頭。


 体を起こしたらそこには…


「やられた!」


 そもそも正妻ルトナがほかの女を手引きするんだからいつまでも躱せるはずもなかった。

 でもここまで強硬な手を使うとは…


 俺は周囲に転がる裸の美女三人をみてため息をついた。

 丸出しだし丸見えだよ。

 ほろ酔いでいい気分で…うん、覚えてるわ。


 サリアを将来的には嫁。として認識していたのもまずかった。


「はあ…仕方ない…」

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