1-17 依頼を受けてみるみたいだ。
1-17 依頼を受けてみるみたいだ。
「ふーむ」
シャイガさんが難しい顔でうなる。
「父さん…だめ?」
ルトナが不安そうな顔でそれをのぞき込む。
「いや、そんなことない、よく
この場合の『うち』はスキルを継承するシャイガさんの血統のことだろう。
帰って来るなり僕たちはシャイガさんに話をし、その結果シャイガさんがルトナから情報を受け取り数値をデータ化するという作業を始めることになった。
ルトナは【
うーん、考えようによってはかなりエッチな能力だ。
ちょっとうらやましいかも。
ただここで問題が出る。
今回詳細データ―を取ったのはルトナで、立体的なイメージはルトナの頭の中にあるわけだが、これをシャイガさんの頭に移すようなことはできない。
つまりシャイガさんが各部の長さを聞き取りして、平面上に落していくしかないのだが、この方法だとやはり限界はある。
長さや丸みはイメージとしてあるし、それを数値データ―として出力はしているのだがやはりそれは空間における座標データーではないのだ。
「あなた?」
「うん、これで大体のところは分かるのだが、やはりどうしても胸の…乳房の質感がね…これをどう持ち上げるべきか…」
つまりこの少し垂れたおっぱいを持ち上げたときに、どうのような形に収まるのか、どのような形が理想なのか、それを立体的にイメージできないということらしい。
これが長い間これを作ってきたデーターの蓄積があるのなら話は別だろう。だがこれで二人目だ。
それでおっぱいの理想的な変形をイメージ出来たらそれは天下無敵のおっぱい星人である。
ちなみに俺はおっぱい星人ではない。前世の凰華も日本人的にほどほどだった。(つまり小さ目)あれに馴染んでしまったからおっぱいは形であると俺は主張する。
そんなくだらないことを考えている俺の前でシャイガさんは悪戦苦闘している。
ルトナもシャイガさんの質問に一生懸命答えている。
良い親子だ。ここは一発協力するべきだろう。
【術式起動・パーティクル】
俺はおもむろに魔法を唱えた。いや、失礼、あっさりと軽く唱えたよほんとは。
出てきたのは大きめの水の塊。
目を丸くする二人の前でおれはその水の塊を掴んで変形させる。そしてその形のままで固定する。
つまり自由に変形するマネキンだ。
「あー、これならできるかも」
俺とルトナは互いの顔を見合わせて頷き合った。
その後の作業は順調だった。
ルトナが俺の維持している水粘土をイメージ通りに変形し、それを俺が固定する。
「あらそっくり」
エルメアさんが声を上げた。あの貴婦人の胸部のそのまんまマネキンが出来上がった。
「いやー、大したものだ。魔法にはこういう使い方もあるのだな…二人ともよくやった。これで仕事ができるよ」
「えへへー」
ルトナは褒められてうれしそうに微笑んだ。なかなかほのぼのした光景だ。俺の頬も思わずほころぶ。
「さて、では今度は私の番だね」
そう言うとシャイガさんは胸像の胸に、いや、はっきり言おう、オッパイに手をあてて持ち上げ形を整えていく。
理想的なおっぱいの形に。
これはエルメアさんのブラジャーを作るときにもいろいろやっているだろうし、そもそも子供もいる夫婦なのだ。多少の質感の違いはあれど乳房の動きは理解できるだろう。
「よし、こんなものだろう」
「うん、きれいなおっぱいだね」
それは大人の女性の理想的な位置に来る大きなおっぱいだった。
これをベースにカップを作る。おっぱいを上手に支えられるカップだ。そして肩紐と横紐を合わせ、後ろで一回りして前で可愛らしく結ぶ構造。
「よし、これでいい、これで基本の形は決まった、後は…」
あとはデザインの問題だ。これはもうシャイガさんのセンスの問題なので俺たちが口を出すような部分はない。
ただエルメアさんの身につけているものを見る限り彼のセンスは『さすがスキルを持つ者』であるとだけ言っておこう。
「どうだいルティー、興味があるならやってみるかい?」
「ん? いらなーい。遊んでくる。行こうディアちゃん」
自分の好きな分野で娘に構ってほしかった父親が玉砕したという所か…エルメアさんがポンと肩を叩いている。
俺はシャイガさんの冥福を祈りながらルトナに手を引かれて部屋を出て行った。
◆・◆・◆
「これから冒険者として依頼を受けます」
「はい」
ルトナが冒険者ギルドまでやってきて、元気に宣言する。
俺はあまりにルトナが可愛いから合わせて元気に返事をする。
周りの冒険者たちもこの微笑ましい光景をみて妙になごんでいる。子供の遊び場じゃないぞーとか言って絡んでくるやつもいない。まあいたとしても本当に子供の遊びにしか見えないんだがね。
「というわけでお姉さん、何か依頼はありませんか?」
「えっとね…さすがにお嬢ちゃんたちにできるような依頼は…」
まあ、無いよな…
「薬草採取とか、駆け出し冒険者ならやるでしょ?」
「このあたりは農地がほとんどだからかなり遠くに行かないと薬草もないのよ…駆け出し用と言ってもあとはドブさらいとか…下水掃除とか…便所掃除とかも危なくてさせられないし…」
「えーーーーっ」
不満たらたら。
「ねえ、ルー姉ちゃん。今までやったことあるの?」
多分ないだろう。
「ないよ」
やっぱり、どうやら弟にいいところを見せたかったみたいだな。ルー姉ちゃんというのは俺が彼女を呼ぶ時の呼び方だ。
彼女は『おねえちゃん』と呼ばれたかったみたいだがさすがにお姉ちゃんは厳しい。ルー姉ちゃんだとなんかあだ名っぽくてまだしも抵抗が少ない。
そして姉ちゃんと呼ぶと彼女は嬉しそうにパタパタ尻尾を振る。
つまり『よーしついてこーい』というのをやりたがったのだろう。
だがいくら冒険者ギルドと言ったって、仕事を求める者に仕事を斡旋する組合だとて十二才の子供じゃ無理がある。
「なん歳からお仕事って受けられるんですか?」
ちょっと聞いてみた。
「正式には十四才からね。それ以下はギルドや他の冒険者の手伝いみたいな感じになるのよ」
つまり冒険者のグループが広範囲の草むしりとか、清掃とかの仕事を受けた場合、御駄賃のようなものを払って小さい子、十歳から十四才未満の子供を動員する事かある。
これもそれなりの稼ぎにはなるので町の子供たちはよく受けているらしい。
他にも農家の忙しい時期などは泊まり込みで人手を欲しがったりすることもあるんだとか。
さすがに危険なものはないようだが…
「もっと早い時間だと何かしらあるんだけど…今日はもうね…」
あるんだ…そんなに…
しかし十歳ぐらいの子供が普通に働くっていうのは…日本人の感覚でいえばちょっと想像しづらいものがあるな…だが昔の日本でも前述の農家などは子供も働けるようになれば普通に働いていたんだからありと言えばありなのかもしれない。
多分ここでも子供たちは普通に、自分にできる仕事をしているんだろう。
「ねえ、あそこがあったんじゃない? トゥーメさんの裏庭の草むしり」
「ああっ、あったね」
「どんな仕事なんですか?」
「トゥーメさんていう一人暮らしのお年寄りの御宅なんだけどね、家の裏に少し大きめの庭があって、そこがの草むしりを依頼されていたのよ」
「おおーっ」
「草むしりも立派な仕事なのでは?」
「まあそうなんだけどね、さすがに庭の草っていうのはね、大きいっていってもやっぱりたかが知れているし、しかも面積も狭いから手間賃も安いし…御駄賃程度では引き受ける冒険者もいないのよ」
草むしりも立派な仕事だから一日分の手間賃が出れば受けてくれるものもいるだろう。だが小さいから半分でと言われるとどうだろう?
仕事が半日で終わったとしても実質一日は拘束されることになるだろう。同様に半日で終わる仕事がもう一つあれば…まあそれでも面倒臭いか…
だが子供がやるにはいいかもしれない。
「あっ、それやります」
うん、やっぱりルトナがその気になった。
「まあいいかな、所詮草むしりだし、庭だし」
「でもどうやって現地まで行くの? 誰か送っていく?」
「うーん、それもそうか…もうすぐ休憩だからそれまで待ってくれれば連れて行ってあげられるんだけど…」
どうも受付のおねえさんズはいい人ぞろいみたいだね。
「大丈夫、トゥーメおばあちゃんの家ならあたし知ってるわ、お母さんと行ったことあるから」
「あら、知り合い?」
「うんお母さんの友達」
そこで受付嬢しばし黙考。
「分かったわ。いちおう正式に依頼票を出しておくね。それとお手紙を添えておくからちゃんとトゥーメさんに渡してね。それと、今回は二人の簡単なテストみたいなものだから、やれるだけやって、無理だったら戻ってきてね、少ししたら様子を見に行くから」
「「はーい」」
俺達は元気に返事をしてギルドを出発した。
簡単な草むしりぐらいならできないということはないだろう、そう考えていたのだ。
それに今も身体を動かすのが気持ち良い。子供の身体というのは本当に軽くて自由に動く。
きっと良い思い出に…そんなことを考えていた時期が俺にもありました。
だが行った先で待っていたのは草むしりと呼べるようなものではなかったのだ。
「すごいね、うまってる」
「ジャングルだな」
いったいいつから放置されてるんだこれ?
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