クリスマスローズの求愛2

 彼女と初めて会話した時、自分の中の虚無と滞りが解けるように無くなっていくのを感じた。完全になくなったわけではないけれども、彼女の存在を認識するとかなり楽に呼吸が出来るようになり、世界に幾分か色と温度が加わったように感じた。なるほど、思慕を覚えると世界が違って見えるというのは誇張ではなかったらしい。

 会うたびに会話できなくても、彼女が一生懸命に商品を作って店に並べたり、海外からの観光客に片言で話をしたりしている。その一挙一動を眺めているのが好きだった。彼女が傍にいれば乾いた大地が水で満たされるように、癒されていく。今まで言い寄られた事は少なくないが、彼女と出逢ってからは、ますますそういうのは金メッキが剥がれたハリボテのようにしか見えない。

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