第8話:モーリス第4王子

「さて、生徒会のメンバーに集まってもらったのは他でもない、学園内の糞尿処理をどうするかだ。

 現在生徒達は校舎裏の森で自由に排泄する状態だが、雨の日には困っている。

 従者にオマルを用意させている者もいるが、生徒の中には従者を雇う余裕のない士族も結構多い。

 以前に校舎外に便所棟を建設する案も出たが、悪臭の問題もあって却下された。

 誰かよい意見を持っている者はいないか」


 王立総合学園は、王家が優秀な配下を育てるために設立した。

 その設立理由から、入学するの王家直属の貴族や士族がほとんどだ。

 時には王家派貴族の優秀な陪臣騎士子弟が生徒になる場合もある。

 だから王家の支配が強まるのを嫌う貴族派子弟が入園する事は滅多にない。

 今回は隣国との関係で貴族派も入園していた。


 入園前後の経緯もあって、新たに貴族派から俺が学園運営に係わる生徒会役員に選ばれてしまった。

 しかし、ほとんどの生徒会役員が18歳なのに、7歳の俺が加わっている絵面はおかしいを超えて異常だろう。


「ガイラム卿、貴族派を代表して何か意見はあるかね」


 俺は思わず内心で大きなため息をついてしまった。

 言葉の調子から、明らかに俺に恥をかかせるための質問だ。

 国内の融和が大切なこの時に、国王の四男であるモーリス王子が、国内貴族が割れて争っている事を認めてどうするのだ。

 それ以前に、昔の日本なら元服した一人前の武士と扱われる18歳の男が、わずか7歳の子供に意地悪な質問をする、これではこの国の未来は滅びしかない。


「はっあぁあぁぁぁ、わずか7歳の私に、18歳の殿下がその質問をするのですか。

 諫言する側近すら一人もいない、情けない事ですね。

 私が少しでも早く王家に謀殺された方が、心ある貴族と領民のためですかねぇ」


 心底蔑んでいるような表情を作って、モーリス王子とその取り巻きに最初に視線を向けて、次に少しはまともそうな生徒会役員に視線を送ってやった。

 本当なら人と争うのは大の苦手で、避けて通れるのなら避けたいのです。

 でも、また良心の呵責で苦しみ精神を病むのだけは嫌なのです。

 ここは勇気を振り絞って喧嘩を売らなければいけません。

 まあ、何かあったらスライムが護ってくれるという安心感があるから、こんな無茶な事を口にできるのですが。


「なんだと、この無礼者が、望み通り殺してやるぞ!」


「自分から臣下に恥をかかすような事を口にしておいて、それを理由に殺すのですか、それがマライオ王家のやりかたなら、忠誠を得る資格などないですね。

 領民を護るためならこの命など安いモノ、王家に身勝手理不尽を世間に広めるいいきかいです、今直ぐ斬り殺してもらいましょう」


「おのれ、言わせておけば小童の分際で悪口雑言の数々、本当に許さん。

 私自ら斬って捨ててくれるわ!」


 さて、斬りかかってきたら直ぐに縮小させているヒュージポイズンスライムに返り討ちにさせましょうか?

 それとも少し身体を斬らせてから返り討ちにした方がいいでしょうか?

 でも正直な話、痛いのは嫌なのですよね……

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