第6話:王都生活の始まり
俺は王都の王立総合学園に入学することになった。
王家は俺のために、特別に学園内にある独立した屋敷を貸与してくれた。
本来なら学生寮という名目の人質幽閉館に隔離されるのだが、王家が手先に使っていたローガンの謀略を見抜いて追放したにもかかわらず、率先して長男を人質に出してきたライオス辺境伯に、うしろめたさと恐怖を感じたのだろう。
ここまで忠誠心を示すライオス辺境伯の長男を邪険に扱ったら、王家から離反するいい口実になるからね。
「パトリック卿、魔境に行ってくるから待っていてください」
俺は王家が護衛という名目でつけた監視、ロッシュ準男爵パトリック卿に待機を言いつけ、自由時間を満喫しようとした。
だがそう簡単に一人にしてくれるわけがない。
王家も進んで人質となった俺が逃げるとは考えていないだろうが、貴族同士で連絡を取り、王家に対抗するための同盟を作り出すかもしれないと恐れている可能性があるのだ。
「いけません、ガイラム様、一人で魔境に行くなど危険すぎます。
何かあっては取り返しがつきません」
俺はわざと半目になって疑っているように問い返した。
今から口にする事を本気で思っているわけではない。
一人きりの自由時間を作るために、難癖をつけようとしているだけだ。
パトリック卿には悪い事をすると思っているし、可哀想だとも思う。
だが可愛いスライム達との戯れの時間を作るためなら、王家の手先に気を使う気は全くない。
「それは、魔境で私を殺すためについてきたいという事かな?
王家がライオス辺境伯家を潰すために内通させた、ローガンを潰した私がそんなに憎いのか、パトリック卿?」
「何を申されますか、ガイラム様!
それはあまりに酷い難癖でございますぞ。
ひとつ間違えば王家に対する不忠不敬の罪となりますぞ」
「そうかな、私はそうは思わないぞ、パトリック卿。
王家はライオス辺境伯家が追放したローガンを密かに匿っているではないか。
私を王家の人質に差し出せと言った不忠者を。
いや、王家にとっては命令通りに動いた忠臣なのかな?
だが金や地位のために代々仕えている主家に不利な事をするようなモノ、隣国に有利な条件で誘われたら、平気で王家を裏切ると思うぞ」
王家がローガンを匿っているというのは俺の推測でしかなく、全く証拠のない事だったが、パトリックが真っ青な顔色になったのを見れば予測通りだったな。
王家はまだライオス辺境伯家に介入する心算のようだ。
場合によったら、俺を恨むパトリックを使って暗殺させる心算なのだろう。
「俺は王家もパトリック卿も信じていない。
王家がローガンを使って俺を殺す時に備えているという事も、全貴族に伝える。
自分達のやった事は自分達で責任をとれ」
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