第3話:テイマーと調教術とスライム

 魔力がない人間が魔術を使う方法、それはモンスターの魔力を利用することだ。

 長年の研究で弱いモンスターなら飼い慣らす事ができるようになっていた。

 その調教技術と個人的な強さでモンスターを屈服させる事ができたら、そのモンスターを従魔にすることができる。

 問題は五歳でしかない俺には、強さで屈服させられるモンスターがほとんどいない事だった。


「ガイラム様が調教できるのはスライムぐらいです」


 指導役のテイマーが色々と教えてくれた。

 その教えでは、殺さない程度にスライムを叩いて屈服させなければいけない。

 だがそんな事では真の絆を築けない事は、前世の知識と経験で分かっていた。

 だから野生のスライムを餌で釣って集めた。

 スライムが喜ぶ愛撫法を探し、毎日餌を与えて可愛がった。

 スライムは直ぐに分裂するので、短期間に部屋中がスライムで一杯になった。


「ガイラム様、調教できるスライムの数には限界がありますから、それを超えるスライムは戦わせて鍛えてください」


 指導役のテイマーはそう言うが、可愛いスライムを戦わせるのは辛い。

 確かに従魔同士を戦わせれば、効率的に強さを獲得できる。

 他人の従魔や野生の魔獣と戦わせたら、負けた時には何も残らない。

 でも自分の従魔同士なら、負けた従魔の数だけ勝ち残った従魔が強くなる。

 それは頭では分かっているのだが、どうしてもできなかった。


「ごめんなスライム、これ以上は従魔として持っていられないんだ。

 可哀想だけど、弱い子から順番に野生に放さないといけないんだ。

 そうしなければ、スライム同士で戦わせないといけなくなるんだ」


 俺がそう言うと、スライム同士が集まって何か話し始めた。

 スライムが話すと言っても誰も信じてくれないのだが、確かに話すのだ。

 同種のスライム同士だから話す事ができるのか、俺の従魔同士だから話す事ができるのか、それは今後確かめなければいけない課題だった。

 だが間違いなく話し合ってくれて、スライム同士が統合したのだ!

 その時の俺の驚きはとても大きかった。


「凄いなスライムちゃん、一緒になったら強くなるのかな?」


 俺は研究成果を先生に奪われるのが怖くて、大きくなったスライムはスライム同士を戦わせた結果だと先生には伝えた。

 先生はこんなに一気に成長するのは初めてだと驚いていたが、疑っている気配は全くなかった。

 もし先生が同じようにスライム同士を戦わせたとしても、同じ結果にはならないから、研究結果を奪われることはないだろう。

 卑怯なやり方だとは思うが、前世で研究成果を教授に奪われた俺のトラウマだ。

 俺は色々な実験を繰り返してスライムを育てることにした。

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