第2話:転生
目が覚めると、いえ、意識が覚醒したら目が見えず耳しか聞こえなかった。
まるで水中を漂っているような感覚があった。
身体は自由に動かせなかったが、徐々に指をしゃぶる事はできるようになった。
他の音は何も聞こえなかったが、母親らしい女性の声だけが聞こえた。
どう考えても生まれ変わり、転生だと思う。
今は胎内にいて誕生の時を待っているのだと思いたい。
狂気と正気のはざまで見る幻覚だったら、あまりにも寂し過ぎる。
「おっぎゃあ、おっぎゃア、おっぎゃあ、おっぎゃアアアア」
「おお、男の子だ、跡継ぎの男の子が誕生したぞ!」
どうやら前世と同じ男に生まれることができたようだ。
しかも後継ぎを欲する程度にはいい家柄に生まれることができた。
前世のコインロッカーベイビーよりははるかにましな誕生だ。
神様が哀れに思ってくれたのだろうか。
できれば、夢でなければいいのだが……
★★★★★★
俺は、前世に比べれば信じられないくらい恵まれた環境に生まれることができた。
なんと、辺境伯という階級の貴族の長男に生まれる事ができた。
文命は中世に前半程度だから、前世の方がいろいろと便利だった。
だが多くの民に比べれば、とびぬけて豊かで恵まれている。
だからこそ、今生は前世の失敗をいかして正しく生きたい。
今生でも良心の呵責に苦しんで狂うなんて絶対嫌だった。
「ガイラム様、歴史のお勉強の時間でございます」
「分かりました、直ぐに行きます」
俺は、この恵まれた環境を精一杯利用することにした。
惜しみなく与えられる勉学の機会を最大限に利用して、長男である俺に期待する両親や祖父母を満足させ、自由にやらせてもらえる信用を勝ち取る。
今のところ両親も祖父母も手放しで喜んでくれている。
ライオス辺境伯家は天才の後継者を得たと狂喜乱舞している。
だがそれも、前世の知識と経験がある分有利なだけで、本当の天才ではない。
「ガイラム様、今日は魔術の基礎知識を講義させていただきます」
そして、何よりも問題なのが、この世界には魔力があり、魔術とモンスターが存在するという事だ。
前世の知識と経験が全く役に立たない新しい分野の勉強は、一から覚えなければいけないから、一番時間をつぎ込まなければいけない。
「魔術の根本は魔力にあり、魔力のないモノ、魔力を利用する才能のないモノには絶対に扱うことができません。
ガイラム様には魔力がないので、この点が圧倒的に不利でございます。
その不利を解消する方法もないではありませんが、非常に困難な道になります」
ライオス辺境伯家期待の天才長男だが魔力がない。
この欠点をどう補うかが俺の課題だ。
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